表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界の歩き方  作者: レルミア
レッツサバイバル
99/104

必要なのは、たった一言。

 Cクラス壊滅、そしてジョセ救出完了――

 そのニュースはDクラスにとって喜ばしいことこの上ない物だった。

 一部の人間を除いては。


「あまりにも、うまく行き過ぎる」


 アリーヤはベッドに横たわるチェルシーとマミ、リオと同じ部屋で小さくそう言った。

 リオは気絶からまだ回復せず、マミとチェルシーは満身創痍でしばらくは立ち上がるのも難しい程だろう。ジョセは少し精神的に疲れが来ているがそれだけだ。

 ただ、それだけの被害なのだ。

 Cクラスを全滅させたという結果の代償がただこれだけだ。

 成功しすぎたことを怪しむのは利のないことだ――と誰かは言っていた。

 

「でも確かに私ですらもおかしいと思う――一人は死んでもおかしくなかった戦いなのにね」

「別にいいじゃんさー成功したんならしたでいいじゃんーわたしゃつかれたよー」

「…分かった、ゆっくり休んでくれ。本当に、ありがとう」


 そう言って部屋をでる。

 扉を閉めてから大きくため息を吐いて廊下の窓から外を見ると、外はもう夕暮れへなり始めていた。

 彼女たちの突入から数時間。

 拠点の広がりはとどまるところを見せず、まるで要塞のようになり始めていた。

 罠の設置ももうしてある。

 魔力を持った人間が近づけば爆発したりしてくれるものだ。音と衝撃によって要塞内部に居る人間に脅威を伝える。そういったたぐいのものだ。

 

「限定条件――。まさか本当に、存在するのか。そんな物が」


 アリーヤは気付き始めていた。

 しかし。

 それはDクラスの方ではなかった。


「根源――限定条件――まさか、本当に。神は――――」


 アリーヤ・シモン・ラプラス。

 彼の両親は学者であり――。

 既に、魔法の存在に気付き始めている人間達でもあった。


****


 何故私はこんなところで座り込んでいるんだろうか――。

 外で聞こえる作業音を胸に落としながら、一人ポーシャは膝を抱えていた。

 誰だっただろうか。

 私の部屋の前に来て、ジョセがさらわれ、チェルシー達が助けに行ったと教えてくれたのは。

 誰だっただろうか。

 助かった、でもリオがまだ気絶していると教えてくれたのは。

 そのどれもにポーシャの感情が動くことはなく。ただ揺らがぬ炎のようにポーシャは膝を抱えていた。

 私は何も出来なかった。

 あの時。

 何も。

 なのになんでジョセの時はみんなこんなにやる気があるんだろうか――?

 おかしいじゃないか。

 君達は何度アルトリアに助けられたというの?何度アルトリアに気遣われたというの?それなのに。それなのに――ッ!

 

「おかしいよねぇ」


 ふと聞こえた声は、ポーシャの横から発されていた。

 いつの間にか私の横に座っていた――その人。

 辛うじて分かるのは髪の毛が赤い色をしているって、ただそれだけの事。

 

「もしかして皆アルトリアくんが居なくなって喜んでるんじゃないのかなぁ――?」


 そんなこと無い。

 あれだけ皆――――あれ?

 ふと。

 皆の顔を思い出そうとして失敗した。

 思い浮かんでくるのは、ただいやらしげに嗤う人達。

 人達。 

 人達。

 ああ。

 ここの人達も。

 あの施設の人と一緒なのかな。

 私は――。

 あんなに倒したのに。

 あの人達をあんなに――倒したのに。


 コロシタノニ。

 

 マタ、ヤラナクチャイケナイノカナ。


****


 この手を振るえば一人が死ぬ。

 その光景に私はもうなれてしまった。

 ふと――思う。

 私は本当に人間なのかと。

 こんなことをできるのは人間なんかじゃないか。

 業を煮やした誰かが私に向かってきた。

 それを吹き飛ばした。

 誰かは血を吐き出した。

 どうでもいい。

 自分に振りかかる火の粉は払う。

 ただそれだけ。

 私はもう人間ではなく兵器――――。

 それが暴発しているだけだから。

 やろう。

 やろう。


 この騒ぎを嗅ぎつけた誰かに――潰してもらえるように。


 要塞の中心でただ呆然と立ち尽くし、魔法をふるうポーシャ。

 その周囲には既にDクラスの人間たちが呻きながら転がっていた。

 どうして。

 どうしてそんなことをするの。

 どうしてそんな顔をするの。


 カレーを作った時みたいなあなたの顔を見せてよ。

 そう、フレデリカは、思った。

 あんなに優しい子を。

 あんなに思いやりのある子をあそこまで追い詰めたのは誰――?あそこまで冷血にしてしまったのは誰――?堪らなく私がそいつが憎い。

 そしてそれを許してしまった私も――堪らなく、憎い。


「ポーシャッッッ!!」


 大きく叫ぶと、少し。ほんの少しだけ驚いたような顔をして顔をこちらに向けた。

 それは意識を向けたというよりも照準をフレデリカに合わせたという方が近いだろうか。

 でもそれでも良かった。


「これで、向き合えたね」


 フレデリカは、木刀を手に立ち上がった。

 

「ちょっと――喧嘩――しようよ、ポーシャ。うん。喧嘩、しよ」


 既に魔法の直撃を食らってフラフラでも。

 右目は霞み、息は辛い。

 足も痛いし腕もろくに上がらない。

 それでも。

 私は立ち上がる。


「それでさ、ポーシャ。仲直りの握手。しよ」


 そして一歩。

 私はポーシャへと踏み出した。

落ち込んでいる人に対する言葉選びによって大変な目にあったこと、誰しもあると思います。気をつけたいですね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ