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異世界の歩き方  作者: レルミア
旅編
78/104

状況整理

 生徒たちが初めての本当の戦いを終えてから、一週間後。


「準備はできたか?」

「ああ」


 まだ夜が明けていない中、篠芽とフェンリルは荷造りを終えていた。

 一応孤児院の主だった人には伝えているが、子供に見られると少し面倒なことになりそうな事になりそうだったから一応黙って置いた。

 無人島での心得もある程度教えておいたし、明日からのあいつらに関してはあまり心配はしていない。

 

「じゃ、行こうか」

「うむ」


 そう言ってリュックを持ち上げて馬にまたがり、まだ眠ったままの街から出た。

 今からグーデルバイト帝国までは約二十日の行程になる。ほぼ対角線上の位置に存在する国だから、なかなかに遠い。行って帰ってくるので一ヶ月と少し。彼らの無人島生活が終わるのには間に合わないかもしれない。

 

「別にそこまで子供じゃないじゃろ」


 少し呆れたような笑顔でそう言ったフェンリルの言葉は、たしかにその通りだと思う。

 

「まぁ、そうだな」


 そんなことを喋りながら歩いていると、やがて日が昇ってきた。

 冬の少し冷たい空気が肺を満たし、少しだけの暖かさを与えてくれる太陽が登ってくる。

 もう、冬も本番だな。


「雪とかは降らないのか?」

「降るぞ。途中で渡る山脈の一つはこの季節かなりの豪雪地帯じゃ」

「うへ、山脈の豪雪地帯とか死にそうな気がするんだけど」

「まぁ少し遠回りすれば特に問題も無いじゃろう。いかに儂とてあの雪は好まんさ」


 炎を司り、毛皮を持つ彼女でも嫌だと言う。

 そんなに厳しいなら俺なんか言ったら秒で死ぬだろ…まじかよ…。

 これからやってくるであろう難所に思いを馳せながら、思わずため息を吐く。

 まぁ、頑張っていこう。


****


 青の魔法使い。

 別名、巡廻の魔法使い。

 この世に存在するとされる青、赤、緑、黒、白の五色の魔法使いのうちの1人であり、現在確認されている唯一の魔法使いだ。

 それは自分たち魔術師とは一線を違える存在であり、その実力差は人と蟻との差ほどにもあるとされている。

 確認されている青の魔法使いの性別は女。

 というよりも、魔法使い…ひいては魔術師には女が多い。

 理由は明白だ、単純な力勝負で男に勝てるはずもないからというのがやはり一番大きい。

 まぁ稀に女でも男顔負けの戦いをする馬鹿ゴリ…おっと、そういう兵士がいるが、かなり珍しい方に分類される。


 閑話休題。


 当の青の魔法使いは果たしてどこにいるのか、という疑問だがそれは代々マギアの頭首にのみ伝えられている。

 リュドミーラのある村の中にある小さな家の一軒だ。一見して他の建物と区別がつかないほどに平凡なこの家の中に、青の魔法使いは存在する。

 こんこん、と扉を叩くとしばらくの沈黙の後に扉が開かれる。

 

「よく来たわね」


 そう言って現れたのは、青い髪を腰まで流した綺麗な女性だった。

 相変わらず――目を奪われてしまう。

 同性にも関わらずそんなことを思ってしまう程に綺麗な彼女に一瞬だけ見とれるが、すぐに我に返って言葉を返す。


「お久しぶり…です」

「そんなかしこまらなくても良いじゃない。私とあなたの仲よ?」

「師匠と弟子…ですので」

「あら、私はあなたを弟子として見た覚えはないのだけれど。悲しいわ、友人だと思っていたのに。知ってるでしょうけど私、友人以外は家に上げない主義なの」


 そう言っていたずらに笑う青の魔法使い―――

 いや、


「ごめん、マナ」

「それでいいのよ、久しぶりジブリール」

「うん、久しぶり」


 マナは、そう言って私を招き入れた。

 促されるままにいつものポジションだった椅子に座ると、マナが紅茶を置いてくれた。

 ここで何時も飲んでいたローズマリーの紅茶が、最近の出来事で凝り固まったジブリールの心を幾分かほぐしてくれる。


「で、今日は何の用なの?結構深刻そうな顔をしてるじゃない」

「うん、結構しんどい事なんだ」

「魔法使いは現れてないんでしょ?」

「それっぽいんじゃないか…って人は居るけど、それはまだ。それとは違って私が聞きたいのは…ホルンの事」

「あの子?」

「そう。ホルンプロジェクト…って聞き覚えある?」

「あるわよ、あなたの先代のマギアが…というよりも私がやっていた”純血種”ホルンと同じ物を作るための計画ね」

「それにあの子が…ファームが関わっていたの」

「…そう」


 マナがつぶやいたその言葉は、色々な感情を含んだ一言だった。

 青の魔法使い…マナは昔から争いというものが嫌いだった。

 魔法はすべて人の役に立つためだけに使うもの、というのがマナの下で学ぶに当たって先ず最初に教えられる事だった。

 そんな私の弟が兵器の研究に使われていた…と言うのはあまりいい気分ではないのだろう。


「そしてファームは成功した。純血種の模造品…ジョーカーとして生物魔導兵器としての力を手にしたの」

「あの子が…兵器…。とてもそんなことが出来る子じゃなかったと思うけれど」

「うん。あの子は争いが嫌いだったよ。マナと同じでね。でも同じ部隊に居た人を…テンを守って、その力に覚醒した」

「テンを守ったの…ホルンは今どこに居るの?」

「あいつは今カーライアムの下に居るよ」

「それなら安心ね」

「うん」

「それにしてもホルン…ね。私の記憶にはついぞあんな存在は確認出来ないのよね…」

「”純血種”…か。五賢人とその祖を同じくする人間…かと言って五賢人の子孫でもない。マナにも分からない…か」

「ごめんなさいね…」

「マナのせいじゃない。それにファームの暴走を止めたのもホルンだったようだし…もうごちゃごちゃしてきて何が何だかわからないよ…」

「そういう時はその紅茶を飲んで少しゆっくりするといいわ」

「…うん」


 マナに勧められた通りに紅茶を一口飲む。

 ゆっくりと熱い液体が喉を下っていくのを感じながら、最初から頭を整理していく。

 

 まず登場人物…勢力から整理していこう。

 リュドミーラを始めとした連合国と、それと相対するのは灰鴉。

 現在この二つの勢力が戦っていて、灰鴉は生体魔具の情報を漁るために研究施設を襲撃…そしてそれはファームの活躍によって阻止することが出来たが、他の三部隊が向かったところは部隊が全滅、そしてあったであろう書類その他も根こそぎ持ってかれていたという。

 こちらの主だった戦力は先代アマテラス、”純血種”ホルン、”神着”シムカ、”憤怒”篠芽…か。そして敵の戦力は不明。

 マナは青の魔法使いであり先代マギア隊長であったが非戦闘という信条が故に基本的にマギアに指示を出すことはなかった。形だけの隊長と言う奴だったのだから、あまり情報を持っていないのもうなずける。

 それにしても…とジブリールは一つため息を吐く。

 何かおかしい気がする。

 なにか大事な物を見落としているような、そんな錯覚。

 気のせいで済ましてしまうのは簡単だがそんな簡単にやり過ごしてしまってはいけないような…大事なことな気がする。

 ううん。

 なんだろう。

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