最初の授業
「お前たちは死を目前にしたことがあるか?一瞬反応が遅れれば首が飛んでいた。一瞬攻撃を回避するのが遅ければ四肢が吹き飛んでいた…そんな場面に出会ったことがあるか?」
彼が僕達を鎮めた後にそんな質問をする。
その答えはこの教室にいるほとんどの人間はNOだろうし、恐らく彼はそれを承知でその質問をしていた。
「まぁ中にはYESと答えることができるやつもいるだろうが、ほとんどがこの質問にはNOと答えると思う。そんなお前たちに戦争の怖さを、命のやりとりの怖さを教える事は実際に死地に行ってもらうのが一番手っ取り早い…が、俺としてはお前たちを痛めつけて教えるっていうのはあまりやりたくない…だからまずは組手をやってお前たちの現在地点を知るべきだと俺は判断する。お前たちはもちろん魔法を使ってもいいし武器を使ってもいいが俺は何もしない、ただ攻撃を躱すだけだ。三十分やるから俺に一撃でも与えられたら次のステップに進めるようにしよう」
そう言って、篠芽は中庭にDクラスの面々を中庭に釣れ出すと、両手をだらりと体の両脇にぶらさげて棒立ちの状態になる。
「さぁ来い――自信があるんだろ?お前たち」
嘲笑と共に発せられたその言葉は、明確な挑発だった。
「ぶち殺してやる――!」
ヴァーチルが歯を食いしばりながら突撃していったが、彼の乱れ打ちはその全てをギリギリでかわされていた。
しかし後もう少しで当たるという期待が出来るようなものではなく、彼がわざとギリギリで避けているのが分かってしまう。それほどまでに彼の視線には余裕があった。
後ろから更にカガミという男子生徒が挟撃するために迫るが、前後からの攻撃に完璧に彼は対応していた。
攻撃を当てるどころか防御すらさせられない。このクラスで一番体術が強いヴァーチルと、二番目に強いカガミが前後から挟撃してもかする気配すら見せない。
こんなやつ相手に攻撃を当てられるわけがない――と呆然としていると、ふとアリーヤが声をはりあげた。
「攻撃魔法を全員準備しろ!ヴァーチルとカガミは合図で後退しろ!」
アリーヤがそう言った瞬間に全員の顔が我に返ったように戻り、それぞれの属性の魔法弾を詠唱し始める。発射準備が整うまでは約二十秒。その間彼らが篠芽のことを足止めしなければそもそもこの作戦は完成しないのだが。
全員が詠唱を始めて約五秒後。
全員の目の前を篠芽が巡回してみせた。
突然の出来事に全員対処ができずに、ようやく剣を抜いたのは篠芽が眼の前から居なくなってからの事だった。
要するに。今篠芽が巡回した人間は…このDクラスの全員は、死んだ後ということだ。
開始から二分弱。Dクラスは事実上の全滅を迎えることになった。
「…まぁ、こんなもんだな。これは俺が戦った人間の中で一番強い奴程度の実力しか反映させていないが、お前たちを全滅させるのには二分必要ない。三十分やるといったが実力の差を知るのには二分で足りたな」
篠芽がそう言ってDクラスの面々を見渡すと、彼らの誰一人として反抗的な目を持っている人間は居なかった。それは勝ち目のなさを悟ったと言う意味でもあり、そして同時に自分の無力さに気付いた証明でもあった。
「今日はここまでだ。後はお前たちでどうするべきか話し合え。これからは授業の最初にこれをやる。俺に一撃当てられたら次の段階に進めてやるよ」
篠芽はそれだけ言うとレイラを連れて何処かへと消え去ってしまった。
何のアドバイスもないのか。理不尽さを覚えて怒りがふつふつと沸き上がってくるが、しかしここまで実力の差があるとは思っていなかった。恐らくこの怒りは理不尽さに対するものではなく鼻っ面を叩き折られた屈辱に因るものだろう。
ここまでばかにされてそのままで済ましてたまるか。
いかにキワモノ揃いと言われるDクラスでも、いやだからこそそれぞれの負けん気は強かった。
「…あの野郎、ぶっ飛ばしてやる」
拳を固く握ったヴァーチルがそう呟くと、大きく息を吸ってからアリーヤに声をかける。
「でも今は俺一人じゃあいつを倒せない。みんなで戦略を立てる必要がある…アリーヤ、お前がリーダーになってくれないか」
頼むとしたらアリーヤだし、それをアリーヤにいうこと自体は意外じゃあ無かったが、ヴァーチルが自らのプライドを曲げてアリーヤに頼んだことが意外だった。ヴァーチルの最初の言葉がDクラスの全員は意外に思えた。
『俺一人じゃあいつを倒せない』
こうもあっさりと素直に認めるとは思っていなかったのか、アリーヤも少し驚いたように目を丸くして指でメガネを押し上げる。
「…正直言って、この流れにするためにどう君を説得しようかと迷っていたところだが…思ったより君は賢いね」
…ああもう、せっかくの流れを壊すようなことを…とアリーヤの言葉に呆れて心のなかでため息を吐くと、ヴァーチルが予想通りに少しこめかみを動かして言う。
「…馬鹿にしてんの?」
「いや、驚くを通り越して少し感動しているくらいさ。こんな話はここまでにしてとりあえず次の話をしよう。一対一は愚かこのクラスで体術に秀でていた二人が前後から襲いかかっても彼は余裕でその攻撃を躱していた。実際に戦った意見を聞きたいんだが、当たりそうな気配はあったか?」
「…あったぜ。ただそれはそう思わされていたように感じる。当たりそうだから全力で攻撃をする…でも当たらない」
「ああ。その通りだ。いきなりで連携が取れていないってのもあるかもしれないがあいつは後ろから襲いかかった俺の攻撃にも完璧に対処していた。とてもじゃないがヴァーチルと二人だからどうにかなるってレベルの敵じゃあない。それもただ躱すだけじゃなかった」
「…わざと当たりそうだと思わせて全力の攻撃をさせて体力の減少を加速させる…どこまであいつは上手なんだ」
呆れたようにアリーヤがため息を吐く。
「…どういうこと?」
アリーヤの言葉に理解が追いつかないのか、僕の隣に居たポーシャが不思議そうに尋ねてくる。
「…あー…そうだな。ポーシャは野球やったことあるでしょ?」
確か彼女は体育で野球をやったことがあったはずだと思ってそう言うと、彼女は頷いてみせる。
「あれでさ、バットがボールに当たると思って本気で振るのと当たらないと思って振るのとじゃ全然疲れ方が変わってくるでしょ?」
僕がそう言うとポーシャは納得したように頷いてみせた。
金色のロングストレートの奥で感心したような表情の青い瞳がこちらを見てくる。
ぶっちゃけかなり美人なために見つめられると結構恥ずかしい。
僕は女子に慣れてないんです。童貞なんです。
そんなことは置いといて、アリーヤ達の話を聞かなければ。
「まず二人が篠芽先生を足止めできなければ後の魔法を叩き込むこともできない…だが現時点でそれは無理…だとするならどうするべきだ…?」
「あ、じゃああれなんかどうだ、物理障壁で囲むんだよ。確か三人ぐらい物理障壁作れる奴いたろ?それで三角を作って囲うとかどうなんだ」
ヴァーチルがそう言うが、アリーヤは目をつむって首をふる。
「そもそもそれを唱える時間が欲しいんだ。物理障壁なんて言う炎弾よりも複雑な魔法を詠唱すればバレるし、バレてしまえば潰されるのが落ちだ。いくらあいつが手を出してこないからといってそれに甘えていいわけじゃない。あくまで僕たちは実戦を想定してやっているんだ。こちらの損失をいかに減らしてあいつを潰すか。それが大事になってくるんだ」
「…まぁそうだな」
意識たけぇなおい。
アリーヤのセリフに思わずそう突っ込んでしまいたくなるがそれは必要なことだと思う。
これはあくまで実戦の演習。手を抜いていい理由なんてどこにもない。
…ふむ。
まずこのクラスの編成を改めておさらいしてみよう。
物理攻撃が得意なのはヴァーチルとカガミ。
この二人は学園の近接限定大会ではかなり良い所まで行く様な連中だ。
他にもマミとヤンという女子が近接で目立った成績を収めている。ふたりとも女子にして男子に引けをとらない実力を持っている。ヴァーチルとカガミが赤い髪でマミとヤンが金色の髪をしている。
魔法攻撃が得意なのはアリーヤとジョセ、そしてポーシャと僕だ。
アリーヤに関しては水魔法。ジョセは火。僕は風。ポーシャは雷だ。つまり青と赤と青緑と黄色だ。ポーシャの瞳が青いから水属性も使えるのかと思ったがまだ魔法に出来るほどのものではないらしい。…確か先生の中にポーシャみたいな人がいたな。
まぁ置いといて。
序列で言うのならアリーヤ>ジョセ>ポーシャ>僕かな。
僕魔法雑魚だし。
次に防御魔法だ。
ヴァームとカーム、チェルシーの三人が防御魔法に秀でている。
ヴァームが土、カームが水、チェルシーは風だ。
序列は知らね。防御魔法に優劣が付く様な戦闘はまだ経験したことがないし。
次に支援魔法。
加速や剛力付与等を得意とする魔法を使えるのは三人。
メルティ、デイジー、リオの三人だ。
メルティが加速魔法を三段階まで使うことができて、デイジ―とリオが剛力を三段階まで使うことが出来る。
まぁ出来るだけで使った後の維持時間は数秒だが、それでも一瞬の瞬発力としてはかなり期待できる。
そして最後の一人。
このクラスで一番の実力者だと僕が勝手に思っている人間がいる。
フレデリカ。
物静かな金髪の少女だが彼女が本気を出したら多分ヴァーチルよりも強い。と、思う。
実際に本気を出したところをしっかりと見たことがあるわけではないが、恐らく篠芽の言うこのクラスで数少ない死を隣に感じた人間の一人だと思う。
だからこそめったに彼女は実力を発揮しない。と、思う。
現に彼女は僕と二人で行動している時に襲ってきた野生動物の群れ一瞬で両断して助けてくれた事があった。
そんなことが出来る人間は彼女以外に知らない。
と、おさらいが済んだところでアリーヤが悩ましげに唸るのを見かねたチェルシーが口を開く。
「そもそもさぁ、私達があいつに攻撃を当てられない理由を具体的にあげてみようよ。それから検証したらいいじゃん。単純に強い。だけじゃなくて今みたいな限定的な状況下ならある程度絞られるでしょ?」
「…そうだな。まず経験値。これはどうしようもない…後はなんだ?」
「そうだな…俺は手合わせして感じたのは素早さがそもそも違う。俺が1の行動を済ませる頃にはあいつは3の行動を済ませている。攻撃を躱し、周囲を確認し、そして次の行動の準備をする。これが行われているせいで体勢を崩す事もできないし攻撃を加える事ができなかった…と思ったんだがどうだ、カガミ」
「ああ。間違いないな。お前頭いいな」
「お前みたいに何も考えなくても勝ててたわけじゃなくてな」
「…なるほど。俺も勉強するわ」
「やめてくれよ、俺が勝ち目なくなるだろうが」
「そういうわけにもいかねーだろ」
「まぁ、そうだけど」
そんな会話を尻目にアリーヤは考える。
スピード。物事の処理の速度の違い。
恐らく後者は経験によって行動が洗練され、一つひとつの動作の移行に無駄がなくなったために行われるものだから一朝一夕で身につくようなものではない…が、意識するのとしないのとではやはり違うものになるだろう。
そして前者だ。
これはなんとかなるかもしれない。
速度が違うのなら、それを落とせばいいのだ。
人間が加速をするのにどうしても必要なのは地面だ。地面をけることによって体に勢いをつける。だとするのならばその足場を崩せばいいのではないか…と考えが至ったところで顔を上げると、どうやら土属性の魔法を行使することが出来るヴァームも同じことを考えていたようで、目があっては頷いてみせた。
「ヴァーム、地面を崩す…まぁ泥にしてもいいし砂にしてもいい。とにかく足場を崩すのにどれくらいの時間が必要だ?」
ガッチリとした体系のヴァームはアリーヤの質問を少し考えてから答えた。
「…現時点では十秒。だが足場を崩すだけなら数秒でできるだろう」
「現時点では…と言ったな。短縮する方法があるのか?」
「魔法陣を描けば魔法の行使は一瞬だ。泥か砂に変化させる程度の単純な魔法陣なら儂でも書けるし魔力の消費量も少ない。数を連発出来ると思うぞ」
「それは助かる。後は風属性の…そうだな、チェルシー」
「はぁい?」
「君は空中の人間の姿勢を崩すぐらいの風を送ることが出来るか?」
「出来るわよ。でもその場合足止めしてるヴァーチルとカガミにも影響が出ちゃうかもしれないわね。これはヴァームの足場を崩す魔法にしたってそう。私達が未熟なせいだけど、あいにくそこまで精密にできないわ」
「ああ。構わない。ヴァームとチェルシーが篠芽先生の動きを一瞬だけでもいいから止めてくれれば…後につなげることが出来る」
「…へぇ?」
「一瞬だけ篠芽先生の動きが止まった瞬間を狙ってデイジーとリオが剛力魔法を付与して地面を思い切り叩き割ってくれ。そのために必要な割り込みには加速魔法を使ったメルティが運んでくれ」
「俺は別にかまわねーけどさぁ、俺がそれやるとデイジーとリオにセクハラとか言って後でボコされそうなんだけど?」
「…それはお前の普段の行いが悪い」
「え!?フォローしてくれねぇの?!そこは我慢してくれって一言言うだけでいいじゃねぇか畜生!合法セクハラが出来ると思ってたのに!」
「そういうこと言うから私達はセクハラっていうのよ…あんた馬鹿でしょ…」
「うるせぇデイジーは黙ってろ、お前は男のロマンが分かってない」
「リオ、殺していい?」
「…許可する」
「ま、まぁまて男のロマンは生きてこそ達成されるものなんだ。ちょっと待て。その握った拳を下げろ。今すぐにお願いします下げてください待ってアッ!」
メルティイズデッド。
…まぁそんな痴話げんかは置いといて。
あくまでこれは篠芽先生の姿勢を崩すまでの話であり、最終目的は彼に一撃を加える事なのだからここで終わりではない。
つまり、僕達の出番となる。
「そこまで行ったら僕達の出番だ。カームとヴァームが物理障壁でサンドイッチにするように篠芽先生を挟み、その上下左右から僕とアルトリアとジョセとポーシャが魔法を放つ。恐らく中心で魔法弾が接触して爆発することが予想されるから地面を砕いた後はすみやかにメルティがリオとデイジーを回収してくれ。衝撃波に巻き込まれたら傷を負ってしまうからな。一応ここまでがプランだが…恐らく彼はその上を行く。魔法弾をかわし、さらに魔法弾の衝突に因る爆発すらも回避した場合は壁の外に待機してもらうヤンとマミとフレデリカに対処してもらう…いいかな?」
「オッケーよ!」
明るくヤンが答え。
「出来るかどうかは分からないけどやるわ」
少し自信なさげにマミが答え。
「構わないわ」
そしてフレデリカがいつものように小さな声で答えた。
「…良かった。じゃあこれで一応はプランが完成したわけだけど…ぶっつけ本番で出来るとは思えないし、そもそも僕の予想が前提から間違っている可能性がある」
「それを言い出したら終わらんだろ。まずは各々イメージトレーニングを煮詰めて置いて明日に備え、そして授業を聞くことが必要だろう」
「そうだな。結構授業は戦闘に役立つことを教えてくれる。みんなこれからは真剣に授業を聞いてこの戦いに活かしてくれ。なんとしてもあいつの鼻っ柱を叩き折ってやろう」
アリーヤがそう言うと、Dクラスの全員が拳を振り上げ、
「「「「「「応!!!」」」」」
そう叫んだ。
そしてとりあえずは解散ということになったので教室に戻ろうとすると、隣にメルティが来た。
「すごいな」
唐突にそんなこと言うもんだから少し反応が遅れたが、すぐにアリーヤのことだと思って頷いた。
「ああ。あそこまで全員をフルに使った戦略は僕は思いつかないよ」
「…それもそうなんだけど今俺がすごいなって言ったのは篠芽先生のことだぜ」
「…え?」
「考えてもみろ、あそこまで壊れてたクラスがたった二分で普通の授業すらまじめに聞こうと取り組むようになるんだぜ。一体どういう魔法を使ったんだって話だ」
言われてみれば確かにその通りだ。
僕も気付かぬうちに誘導されていたことに気づく。
これすらも、彼の策のうち。
完全に手のひらで踊らされていることに気づいて少し悔しくもなるが、それを知っても尚その上を行こうと思ってしまうのも彼の策のうちなのだろうか。
「お前もそんな顔するんだな」
気付けば、メルティが笑ってこっちを見ていた。
「どういういみさ」
「いや、お前は結構無気力なやつだと思ってたんだけどな、案外熱血なんだな?と思ってよ」
「…それを言うなら君だって。普段おちゃらけてヴァーチルにくっついてるかとおもいきや結構クラスのこと見てるじゃん」
「…褒め言葉だよな?」
「八割ほど」
「あとの二割はなんだよ…ったく。んじゃあ俺はトイレ行くからお前は先に行っててくれ、教室だろ?」
「うん。じゃあまたあとで」
「ああ。またな」
昇降口でメルティと別れた僕はクラスメイトの新たな一面を知ることができて少し嬉しくなりながら教室への道を歩く。
どうやらかなり、学校生活が楽しくなってきた。
****
その日の夜。
孤児院にて。
遅い食卓についていた篠芽とリーニャとホルンとカーライアムがあーだこーだと学校について話し合っていた。
「大変そうですねぇ…高等部」
「ほんとだよ…私のクラスはAクラスでな…高等部クラスでも一番強いクラスだそうだ。その分鼻も伸びきっていてな…全員幻覚の中で叩き潰してやらないといけなかったよ」
はぁ…と溜息を吐くカーライアムはかなりいやそうな表情をしているが待って欲しい。
この人は俺に剣を教えると言って一方的にボコしたことがある。
しかもかなり嬉々とした顔でやってたぞ。
そんなことを思うがまぁそれを突っ込むほど命知らずなわけでもなく。ただ話を聞いていた。
「まぁ私に一撃入れるほど強い奴は居なかったがな…ホルンの方はどうだったんだ?確かお前はCクラスだろ?」
「ええ。私の場合は二つ属性を使える魔術師って時点で結構なアドバンテージがあるのか最初から露骨に反抗心を見せる人は居ませんでしたね」
「それは羨ましいな…篠芽は?」
「俺もカーライアムさんと同じ感じでしたよ。まぁ手は出しませんでしたけど」
「すごいな…」
「いやまぁ…俺の世界じゃこれが普通だったんで…ってかそういえばホルンさん。うちのクラスにも二属性使えそうな子が居るんですよ。後でコツとか教えてもらえませんか?」
「私ですか?篠芽さんが…ああ。そうか。そうでしたね。ええ。今度教えに行きますね」
「なんだ、いやに嬉しそうじゃないか」
「いやぁ、だって私と同じタイプの弟子なんてとったことありませんでしたし、やっぱり嬉しいもんですよ」
「そういうもんか?」
「まーカーライアムさんみたいにゴリゴリの脳筋女子は結構いますか…いやなんでもないです」
「遅いぞ篠芽、そこに正座しろ」
「この歳にもなって地面に正座なんて勘弁して下さいよー」
「失礼なこと言うのが悪いですよ、篠芽さんが悪いです」
「お前も敵になるのか…リーニャ…裏切られた…」
「やかましいわ」
そんな馬鹿なことを話しては夜が更けていった。
なんだかんだと言って命がけのやりとりから離れた生活というのはやはり心が落ち着く。
またここに戻ってこれて、良かった。




