連行
少し遅れてしまいました。すみません。十二時代までには投稿したいと思います。こうしてだんだん期間が伸びていくんでしょうか。よくないですね―
盗賊を憲兵につき出して数日後、どうやら俺達が捕まえた盗賊はなかなか前科を持っている悪党だったようで、賞金をかけている貴族も居たほどらしい。そして更に働きを認めてくれたのか、憲兵団から報奨金が出ることになった。
その金を支度金として、逃げる意味も込めてその日の夜に簡単な支度をして旅立つことにした。
俺と一緒にいては面倒だと思って街を出たところで別れようとしたのだが、まだ右腕が治っていないし自分の命の恩人をほうっておくことは出来ない、といって強く同行を勧められたのでお言葉に甘えている状態だ。
この世界のことはまだまだ知らないことばかりだ。この世界のことを知っている人がいるのといないのじゃ全然違うし。
そういえばバァラ…つまりこの世界のお金の説明を受けた。
青銅金、黒金、銅金、銀貨、金貨のご種類が有り、青銅金が最小単位でそれより上は十倍ずつ増えていく方式だそうだ。
つまり青銅金が一円とすると、黒金が十円、銅金が百円、銀貨が千円、金貨が一万円と言ったところだろう。そしてもらった報奨金は金貨二枚に銀貨が三枚、銅金が四枚と、日本円にして二万三千四百円とかなり安い…と思っていたのだが、これは思った以上にでかいお金らしく、ここらへん周辺では銀貨一枚、つまり千円あれば一人が一週間過ごすのには困らないらしい。物価が安いということなのだろう。っていうかそう考えると金貨って銀貨十枚分…つまり十週間…二ヶ月近く過ごせることになるぞおいやべーな。貴族ってすげーな…こんな金額を賞金にするとか…。
どうも金貨二枚と銀貨三枚は貴族からの賞金らしい。
「金って、五国共通なんですか?」
ふと疑問に思って訪ねてみると、リーニャ先生は首を振って否定する。
「バァラというのはリュドミーラでしか使えないものです。秦野国では紙のようなものをお金として扱っているとも聞きますが、私は他国に出たことがありませんので…分かりません」
ふむ。
商人としてそれでいいのかとは思うが、情報インフラなんて全く整っていないこの世界で師匠が居ないのならばこんなものか、と納得してしまってから馬車の荷台に仰向けに転がる。
「これから何処に行くんです?」
「今から行くのはリュドミーラの第四都市、イムラというところです。確か…私達が居たライマ村から馬車で4日…程だったと思います」
第四都市、というのはリュドミーラで4つ目に大きな都市ということらしい。
五国はそれぞれ五つの都市を持っていて、更にその都市が約十五個の村を抱えている、らしい。
イムラというところは今まで俺達が居たリーニャ先生の故郷であるライマ村が所属しているところで、父親のコレクションした珍品を売りさばきに行くらしい。
…白い角のおっさんのお面がなんで4つもあるんだよ…なんでたくさん買ったんだよアホかよ…
おっとリーニャ先生のお父様の悪口はここまでにして。
「対立した商人ギルドに命まで狙われてたってことは、今から行くイラムっていうのも不味いんじゃないんですか?同じ都市管理のところなんですし結構危ないと思うんですけど」
と、そう尋ねるとリーニャは首を振って否定する。
「商人ギルドと言うのは各都市に4つずつあるんです。約十五個の村を五個ずつで三つ。そして都市の中に一つ。計4つで管理しているわけですね。村にある商人ギルドを俗に支部と呼びますが…その三つの支部を統括しているのが都市にある商人ギルド、というような感じになっているんですよ」
「なるほど、ってことは今から行くイラムの商人ギルドは地方の商人ギルドとは違うってことですか」
「ええ。都市の商人ギルドは憲兵団の目も行き届きやすくて不正もしにくいので、支部に比べたら悪事は働きにくいんです」
なるほど。
日本の三権分立みたいな感じになっているのね。
「でもそうすると、商人ギルドと憲兵団が手を組んで悪事をしてたらどうするんです?」
「ああ、商人ギルドと憲兵団の両方には定期的に冒険者ギルド、つまり私達町民から立候補した人達が内部調査に入ることになっています。誰かが証人になればだれでも内部調査に行くことができるので、サクラのような役回りの人間も生まれにくいんじゃあないですかね」
なるほど。
関税なんかを設定されるのは国民だから冒険者ギルドの内部調査も熱が入るってもんだしな。
でも内部調査に入ったって学がないと意味が無いよな。
そこら辺のバランスはどうなってんだろうなと思っていると、ふと馬車の動きが止まる。
何事かと思ってリーニャの肩越しに正面を見ると、たくさんの馬車が行列をなしているのが分かる。
「なんですかこれ」
「検問ですね…何かあったのかしら」
すこし不安げな顔でリーニャ先生が言う。
んー。
彼女としては俺が懸案事項かな?
馬車の下に隠れてもいいが、街に入ってから見つかって騒ぎになったんじゃ意味が無いので、おとなしく問題があるのならここらへんで見つかっておいたほうがいいのかもしれない。うまく行けばリーニャ先生と別れた後も屋根あり飯付きの生活ができる。ただし扉は冷たい鋼鉄のものだろうけどな。
そんなことを考えていると、俺達の馬車の順番が回ってくる。
そして憲兵が俺の顔を見た途端に目の色を変えて奥のテントへとすっ飛んでいった。
すごいな。
黒髪黒目ってのは本当にすごいんだなぁと思いながらリーニャに目を向けると、リーニャは思った以上に驚いたように目を丸くしている。
どうやら彼女が予想していた以上に憲兵が反応したらしい。
彼女も案外天然だな。
そんなことを考えていると、先程テントへすっとんでいった男が女性を連れてやってくる。
うーん。胸にスイカ入れてんのか?あの人。
鈍く光る銀色の鎧が胸部で不自然に盛り上がっているのを見てそんなことを思っていると、凛と透き通ったような声が響く。
「私はイムラ憲兵団第2師団長、カーライアム・ミュンスターです。差し支えなければ貴方の身柄を保護したいのですが」
いやいやいや、差し支えありまくりなんだけど。
と、は言えないよなぁ。
隣で目ん玉を吹き飛ばさん限りに目を見開いてるリーニャを一瞥してから、少しずつ馬車を囲みつつある鎧の兵士達を見て心のなかで嘆息する。
俺はもう存在その物が秦野国の重鎮のような扱いになってしまうので、もし本当にただの黒髪のただの通りすがりだったならいいが、秦野国の密使の可能性も排除しきれないために捕らえる。ということなのだろうか。
うーん。
五国は平和な関係だったと聞いていたんだけれど、思っていたより水面下ではいろいろな争いがあるのかもしれないな、と少し辟易しながら頷く。
「わぁったよ」
「ありがとうございます。お連れ様も良ければご一緒に。決して悪いようには致しませんから」
そうこうして、俺達二人はイムラ第2師団の捕虜となったのである。
っていうかこんな辺境でネズミ捕りみたいなマネしてんじゃねぇよ…暇人かよ…




