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異世界の歩き方  作者: レルミア
裏切りの水面
32/104

敵は誰だ

遅れましてすみませんでした。

 なぁ。

 もし、の話だが。

 こんなことを考えることはないだろうか。

 もし目の前に自分の望みを全て叶えるチャンスがあった時。

 自分はそれを掴むために戦うことが出来るだろうか、それとも目をそらして逃げ出すのだろうか。と。

 やるときゃやる。

 簡単に口に出来るがこれほど難しいことはないと、俺は思う。


----そんなことを言う奴が居たな。

 

 不意に昔のことを思い出してそう零す。

 誰だったか忘れるわけもないが、今は別にそれについて言及する必要はないだろう。

 ただ今重要なのは今目の前に広がるこの惨状だけだ。


「酷い…」


 隣で風神から助けだした少女がそう呟く。

 城壁の上に立っている俺達の足元には、八割の第2師団の人間と二割の第1師団の人間で出来た死体の海が広がっていた。夥しく流れる血の川を這うように進んでいく第2師団の人間達には到底勝ち目は無いように思えた。

 馬鹿な子供に扇動された馬鹿な復讐者達。

 どこからどう見てもそういう評価しか浮かばなかった。

 だが。

 俺はそういうのは嫌いじゃない。

 あー?

 人を利用するなんて性格が悪い?バカ言え、俺が今からするのはただの援助だぜ。

 俺の世界で幾度と無く行われた侵略のための援助さ。

 そう。

 俺がやるのはただの援助だ。

 スッと目を細めて、呟く。


「やれ」


 まぁ。

 援助と言っても塩を送るわけじゃあない。

 送るのはただの――――


****


 「ふん…秦野国か…まさかあそこから戦火が移るとはな。やつを炊きつけたのも秦野国の人間か?」


 第2師団改め、叛逆軍に手を貸して第1師団を蹴散らして猛進してくる一団を眼下に捕らえながら、ヴォルゴード王国の国王たるエリファス=ヴァストは呟く。

 当初予想されていたのとは違い、彼は祭壇ではなく城の自室に立っていた。

 圧倒的な秦野国の進撃を目にしてもエリファス=ヴァストはうろたえる様子はなく、臣下とは違う冷静さを持っていた。

 それは懐刀があるというわけではなく、ただの諦観だった。

 この国はすでに立ちゆかなくなっているというのはわかっていた。

 恐らくここで精一杯抵抗し、たとえ秦野国と第2師団を排除したとしても疲弊したこの国に目をつけたグーデルバイト帝国あたりが秦野国へ攻撃したことへの報復として攻め込んでくるだろう。その時にグーデルバイトに抵抗できるほどの兵力は残っていない。

 そしてここで降伏し、彼女に王位を渡したとしても秦野国の政治介入は回避できないだろう。

 どうあってもこの国の生き残る方法はない。


「代々継いできたこの国を私の代で終わらせるのは少し申し訳ないが…もう限界が来ていたのかもしれないな」


 ボソリとそう呟くと、隣に立っていた風神が笑う。


「貴様はよくやったさ。代々続く悪習もこれで絶たれると考えろ。そうすれば幾らか良いだろう」

「どうだろうな…風魔で一瞬で死ぬのと、秦野国に支配されて搾り取られて死ぬのはどっちが幸せなのかは私には分からんよ」


 風魔がなくなればやがて人は飢える。

 食物を生産することが難しいこの国土で膨大な人数を養うのは無理があった。

 そのことに頭を抱えていた過去の政府は風神に頼み込んで口減らしをお願いすることにした。

 結果的に生き残った人間の生活水準は上がり、餓死する人間も極端に減ったのだがそれを人道的とするかどうかは民が判断を下すことだ。

 それが今回、否とされただけのこと。


「だが…大人しく殺されるつもりもない」

「本当にやるのか?」

「ああ。本来の”魔憑き”…いや、”神憑き”の力を見せてやるとしよう」


****


「貴様、確か双子の姉を殺された魔獣の片割れか…気でも狂ったか?」


 失血でビクビクと痙攣する仲間に止めを刺し、灰鴉の一人がそう言う。

 その口調には嘲笑が含まれていて、ゲリを煽ろうとしていたがゲリはそれに応える素振りも見せない。


「あんたが私の正常な状態をどう思っているかは知らないけどね、私は今現在これ以上ないほどに正気で正常よ」


 食いちぎった腕を吐き捨て、残りの二人の灰鴉をギロリと睨みつけてゲリが言う。

 その口調は明らかな殺意を持っていて、自分をこの大陸へ召喚した灰鴉でさえも障害となるのなら殺すという決意が滲み出ていた。


「私達を殺して灰鴉を敵に回せば…貴様はもう二度と転生出来ないし魔大陸には帰れないのだぞ?」

「…お姉ちゃんの居ない魔大陸も、この世界も興味ない。だからそういうのもどうでもいいもの。あの人から開放もしてもらった。だから今の私は完全に自由なの。あんたたちに命令される筋合いは――――ない」


 ここへ来て灰鴉の表情が凍る。

 手綱を握っていたはずの凶悪なペットに牙を剥かれてしまえばそうなるのは必然だ。

 ゲリがその気になればこの場にいるほとんどの人間は容易に殺せるように思えた。そして事実、その通りなのだ。

 そしてその彼女はすでにブチ切れていた。

 言葉の通じない暴力装置と化している。


「じゃあ――――死になさい」


 そして灰鴉は、瞬く間に肉塊へと成った。

――――なんだこりゃ。いみわかんねぇぞ何だこいつ。

 リーニャが変な女連れてきたと思ったら鬼のように強いんですけど。しかも俺に復讐心持ってるっぽいんですけど。俺そんな恨まれること――思い出すのも大変なぐらい沢山あったわっべーわ。

 とりあえず口の周りを血だらけにしている彼女から少し距離を取るように後ろに数歩下がってヴィーザルを引き抜く。

 とにかく、彼女の動きは凄まじく早い。

 後ろのリーニャとリンを襲うつもりはないようだから守ることは考えなくていいのかもしれないが、だとしても一対一で勝てる自信はない。というか負ける自信しかない。

 どうすれば勝てる。どうすれば死なない。

 チリチリと刺すような緊張が俺の体を固くさせて、胃がひっくり返っているような気さえする。

 貧血故か、薄暗くなってくる視界の中でゆっくりとゲリが振り返るのが見える。

――――来る。

 ゲリが膝を曲げたのを見てそう判断した直後。

 彼女の牙が俺の眼前に広がる。

 予備動作も地面をける動作も全く見えなかった。

 ああこれは無理だわ。と、心の何処かで納得してしまった時に自分の背後から何かが破裂したような強烈な声が聞こえた。


「待てッッッ!!」


 えっ


 場違いな言葉に思わず自分も待てをしてしまうと、目の前のゲリも体を硬直させているのが分かった。

 


 えっ?


「あなたが復讐したいのがその人だって言うのは分かったけどさ」


 その言葉を聞いて、やっとこさ待てと叫んだのがリーニャだということが分かって、余計に頭が混乱する。

 この人知ってて連れてきたの?


「その人、今全力の三十パーセントも出せてないんだけど、その状態で殺してお姉さんの名誉を取り戻せるわけ?」


 リーニャがそう言うと、ゲリが困ったように顔を歪める。

 ああ。

 そうか。

 この子は。

 フレキの妹――なんだ。

 俺がなんとなしに殺してしまった――フェンリルの力を借りて殺したあの狼には家族が居て、その家族が俺に復讐しに来ているということだろう。

 とてつもなく重い。

 自分が殺した命にも家族があって、物語がある事を再確認して自分がやったことがいかに残酷なことかを改めて確認した。

 俺がやっていることは本当に正しいのかの判別がつかなくなってくる。

 俺がやっていることは本当に――

 泥沼に陥りそうに成ったところで、ゲリは大きなため息を吐いて直立姿勢に戻る。


「…まぁ、リーニャの言うとおりね。ただ姉さんの復讐をするためにこいつを殺すわけじゃないもの…。人間ごときと正々堂々戦って、人間に殺されたと言う屈辱を晴らすため…そういうことだったものね」


 自分に言い聞かせるようにそう言って、ゲリは服についたホコリを払う。


「さぁ、あなたのやりたいこととやらをやりに行きましょう。あなたを殺すのはその後で全快してからにしましょうか。で、どうするの?今のこの内乱…悪い人間は、誰なのかしらね?」


 嫌な笑みを浮かべてそう尋ねるゲリに、俺は何も答えることが出来なかった。

ガンダムBF楽しいですね。

サントラがいい曲揃っててとてもお気に入りです。

ガンダムUCの機体出て欲しかったんですけどさすがに無理でしたかね~

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