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異世界の歩き方  作者: レルミア
ヴォルゴード王国・潜入編
15/104

新人商人

 連合都市ヴァルハラ。

 ここは5つの国の特産品が集まるところで、商人を目指すのならばここには一度はこないと一人前にはなれないと言われている場所である。

 そんな所に、リーニャとリンが辿り着いたのだが、一週間もかけてこんなところに来た理由は何なのかリンはまだよく分かっていなかった。

 右を見ても左を見ても城壁の切れ目が見えないような巨大な城壁に取り付けられた大きな門へと歩みを進めると、衛兵が声をかけてきた。


「身分証の提示と目的を言ってください」

 

 黒を基調とした鎧に赤のラインがあしらわれた鎧に身をまとった衛兵にそう尋ねられて、リーニャが胸元から一枚のカードを取り出して衛兵に見せる。

 

「行商と、情報収集ですね」

「はい。最近物騒ですからね」

「そうですね…”魔憑き”がまた出たと言う噂もありますし、気をつけてください」


 衛兵にそう言われて門への歩みを進めるが、馬車の行列は一向に進む気配を見せない。


「もう知っているんですね…篠芽さんのこと」

「そうね、来てよかったわ」

「…えっと、いまいちまだここに来た理由がわからないんですけど、なんで隣国のヴォルゴード王国かシュトゥルムガットに行かなかったんですか?」

「隣国にいるかどうかもわからないし、そもそもそんな大きな範囲をあてもなく探すのは無理よ。だから情報が集まるここに来たの。ここだったら何処にいくにも距離は一緒だしね」


 そんなものだろうか。

 情報屋なんて何処にでもいるだろうし、何故こんな所に。

 と、一見してみれば篠芽から離れていく行動を取るリーニャに疑問を抱きながらも、遅々として進まない馬車の上で作業を進める。

 ここで売るのはリュドミーラで購入した肉や魚を加工した干し物だ。

 自分達の食料にもなるしヴァルハラから違うところへ旅立つ人間達の食料としても人気が高いため、かなりの値段で売れるらしい。「ある程度の技術がないと虫に食われちゃうんだけどね」とはリーニャの談だが、彼女は手に入れた肉と魚をしっかり干物にできていた。

 どうやら馬車の後部に取り付けられた車輪が付いた石窯のようなものが必要らしいが、まだ詳しくは教えてもらえていない。

 ヴァルハラの門をやっとくぐれたと思うと、すぐにリーニャは門近くの馬車停留所へ馬車を停める。一つ一つの馬車に専用の部屋があり、止めた本人が居なければ部屋の鍵を開けられないと言うもので、かなり高い。一日止めるのに銀貨十枚が必要になるぐらいだ。

 そんな所に迷いもなく停めると、大通りを通って中央広間へと歩みを進める。


「このヴァルハラは6つのブロックに分かれているの。中心にミッドガルドっていうおっきな市場があって、その周りを五等分するように五国のブロックが設置されているの。まぁ外壁の頂点が国のブロックの分かれ目だと考えればわかりやすいんじゃないかしら」


 なるほど、とリーニャの言葉を噛み砕いて理解してから門にいた衛兵の事を思い出す。

 確かあの衛兵は黒と赤の鎧を着ていたから、ここはグーデルバイト帝国のブロックなのかな?でも建物はリュドミーラに似ている気がするし、何なんだろう。

 疑問に思って尋ねてみると、彼女は笑って答えてくれた。


「ここはリュドミーラブロックで合ってるわよ。門にグーデルバイト帝国の衛兵がいたのは不正防止のためなの。リュドミーラ方面からの門にリュドミーラの衛兵がいたら万が一息がかかった人間がいたらヴァルハラに不正侵入してくるのを防げないでしょ?だからできるだけ入り口が設置されている国と仲の悪い国の衛兵が置かれているわけ。まぁいちゃもん付けられたらヴァルハラ政府に言えばすぐにその衛兵はクビだし、面倒事にもならないから賛成してるけどね」

「なるほど…っていうかグーデルバイト帝国とリュドミーラって仲悪いんですね。なんでなんです?」

「んー…あんまり詳しくは知らないんだけど、グーデルバイト帝国ってあまり食材資源が無い代わりに地下資源が豊富なのよ。金属関係ならグーデルバイト帝国の右に出る国はないと言われているわね。で、多分食料がないからってリュドミーラに法外な取引を持ち掛けたんじゃない?相場なら支出1:1のところをリュドミーラが損するような具合で」

「でも、そんなの断ればいいじゃないですか」

「グーデルバイト帝国は金属に秀でているから兵士の装備の質もかなり高いのよ。それに正直言ってリュドミーラは兵力維持にモチベーションが保てていないから予算も削られていて弱いわ。だから武力威圧も効果があるの。食糧支援してくれないのなら剣を振るうぞ、とでも言ったんじゃないかしら」

「実際に剣を振ったらシュトゥルムガットとか秦野国とか、グーデルバイト帝国の隣国に嫌われそうですけれど」

「んー…どうかしらね。シュトゥルムガットは氷土のお陰でグーデルバイト帝国同様に食糧無いからリュドミーラからもらえるならもらうっていう姿勢でグーデルバイトに加担しそうなきもするし、秦野国はそもそもそういう外交をしていないから飛び火が来ない限り批難しない気がするわ。唯一リュドミーラに味方してくれそうなグーデルバイト王国も最近きな臭い噂があるみたいだし頼りにならないわ」

「なるほど…それで、リュドミーラはグーデルバイトに食糧を渡してるんですか?」

「第一都市には行った事ないし知り合いも居ないから分からないわ。そういう事情を知るためにもここに来たのよ。国同士の関係を知るのは商人の基本よ基本」


 ウィンクしながらそういう彼女が扉を開けたのは宿屋だった。

 あれ情報収集じゃないのかな?

 

「今日二人分空いているかしら。一部屋でいいんだけど」

 

 リーニャがそう尋ねると、宿屋の主人は頷いてみせる。


「開いていますよ。等級はどうします?長く止まるなら一級が一番お得になるようになっておりますが」

「んー…ちょっと滞在期間わからないから三級でいいわ。一週間ほど宿取れるかしら」

「ええ、食事はいかが致します?お部屋に運ぶサービス付きですが」

「なしでいいわ」

「そうですか。では一週間で黒金七枚でございます」

「安いわね、一日黒金一枚なの?」

「ええ。二級になると銅金六枚、一級になると銀が四枚でございます。」

「凄い差ね…まぁいいわ。とりあえず部屋に案内して頂戴。それ見て階級上げるかどうか決めるわ」

「了解致しました」


 そう言って案内されたのは六畳程度の部屋に粗末な布団が一枚引かれているだけの、本当にただ泊まるだけと言った部屋だ。

 まぁ孤児院にいた時も似たような環境だったし私としては何の問題もない。


「防音はどうなってるの?」

「防音スペルの魔符が一枚につき黒金五枚になっております」

「やけにぼるわね…普通防音スペルなんて青銅金三枚がいいところじゃないの?」

「まぁうちで取り扱っているのはヴァルハラの魔法部隊が作ったものですから、質は確かですよ」

「なるほど。効用期間は?」

「壁に貼った札を剥がすまではほぼ永続…でしたかね。最大二ヶ月位持つと思います」

「凄いわね…よし買うわ。またここに来るからその時に渡して頂戴」

「了解致しました」


 パパッとそれだけ取引をして宿に荷物をおいてヴァルハラの市場へと向かう。

 相場視察だそうだ。

 市場へたどり着くと、丸い巨大な広間が広がっていて、中心にむけて緩やかな長い傾斜が付いて下りざかになっており、中心の大きな広場は買い物客達が買った品物で腹を満たしたりする場所になっているようだ。


「おお…」


 商売人達が大きな声を張り上げて道行く人達のきを引こうとしてしている様は圧巻だった。

 心なしか、大通りから広間へと行く商人たちの顔も晴れ晴れとしているようにみえる。

 商人の聖地。

 ここに自分の市場を出せたら一流と言われるだけのことがあるんだと思う。


「凄いですね!」

「ふふっ…そうね」


 はしゃぐリンに微笑みかけて、坂を降らずに円の一番外側の通路を歩いて行く。

 右側にはガラスの中に並べられた品物が飾られており、左側には屋台を出している人達が私達の気をひこうと頑張って声を張り上げていた。

 すごい。と素直に思う。

 右側のショーウィンドウは色とりどりの装飾品などが並べられていて興味深いし、左側の屋台は食べ物の匂いで私達の足を誘おうとしている。 

 それぞれが場所を最大限活かして商いをしているという事に胸が膨らむ。

 私もここで店を出したい。

 周りに負けないぐらいの工夫をこらしてみたいと、思う。


「今何処に向かってるんですか?」


 周りの商品を横目で見ながら歩く彼女に尋ねると、彼女は足を止めて私に問題を出した。


「問題です。私は何処に向かっているでしょうか」


 急に問題ですか。粋なはからいですね。

 そんなことを考えながら周りを見渡してみると、屋台の配置にもばらつきがあるのが分かるし、それぞれ特徴があるも分かった。

 例えば今自分達がいる近辺の屋台は食べ物を扱っているし、このまま真っすぐ歩いて行くと生地屋が並んでいるし、生地屋の間を縫って坂を下れば靴屋がある。と、こんなふうに大まかの種類が分けられて屋台が設置されている事がわかる。

 が、自分達が売るのは食糧だ。

 相場を見るのがここが一番だろうと思う。目の前の焼いたトウモロコシがすごい美味しそうだし。

 けれどもここじゃないどこかへ向かっているということはここには用事がないということだ。


「あ、登録ですか?」

 

 ふとイムラのファーストマーケットで店を出す前に、リーニャが役所に届け出をしていたことを思い出してそう言うと、彼女は惜しい、といって説明をしてくれる。


「屋台を出すならそれも必要なんだけど、私達は残念ながら屋台は出しません!」

「ええー」


 ちょっと残念に思ってそう漏らすと、リーニャは私の頭を撫でながら説明を続ける。


「よく見てみなさい。ここにあるのは買ったらその場で食べられるようなものばかりでしょ?」


 言われて見渡してみると、焼かれたモロコシにケバブに串焼きと、確かにその場で食べられるようなものばかりだ。


「ここで買ったのはあの休憩所で食べるの。でも私達の売るものは日持ちのする干し肉でしょ?まぁ干し肉もそれはそれで美味しいしここで売ってもある程度の利益になるでしょうけど、もっと利益になる方法があるの。もし貴方だったら大口の日持ちする食糧を売りたい時どうする?」

「う、ううん…全部売りたい時…ですよね?」

「そうね、手持ちのものを全部、かつ高く売ることが出来る方法ってなんだと思う?」

「知り合いの冒険者ギルドに売る…とか?」

「遠からず、ね。知り合いの一人だとその人の言った値段しか付けられないからその値段で固定されてしまうけど――――」


 と、少し歩いた所でミッドガルド広場から出て少し通路を歩き、また大きな広場へとやってくる。


「ここならその限りではないのよ」


 促されるままに視線を広間の中央へ投げると、そこには台座の上に立った男が指を上げて大きな声で叫んでるのが見えた。


「金三枚!!金三枚だよ!!おっと金四枚だ!!次は居ないのかい!!居ないな!決定だ!!ミシャル公が落札!!」


 なんだこれは、と先程までとは全く違った興奮がこの場を支配しているのに驚いて目を剥く。


「ここはオークション会場。値段を売る側がつけるのではなくて買う側がつけていくの。今売られたのはビロード生地ね。なかなか高いわね…ビロード生地なんて何処から入手するのかしら」


 そんなことを呟きながら、歩くリーニャはその広間を素通りする。

 え、素通りするの?

 またまた肩を落としていると、リーニャは笑う。


「またここに来るわよ。貴方の作ったあの木細工、ここで売ってみたら?価値がわからない初出のものはここで客に価値を決めてもらうっていうのもありよ」


 なるほど、と自分がここに来るまでに作っていた木の細工を思い出す。

 話に聞いていたフェンリルと言うものをイメージして作ったもので、毛皮まで木で再現したものだからかなり時間がかかったものだ。

 一週間まるまる使って一個しか出来なかったんだもの。いい値段がつくといいな。

 そう思いながら彼女についていくと、大通りをまっすぐに進んでいる。


「ここはグーデルバイト帝国のブロックでね。武闘系の施設が集まっているの。さっきリンちゃんが言った冒険者っていうのがここで出てくるわけよ」


 そう言って屋根の丸い、赤いレンガで作られた大きな建物の前で立ち止まった。

 自分の身長の二倍もありそうな扉の上には、大きな文字で冒険者ギルドと書かれていた。


「冒険者ギルド、よ!」

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