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第8話 岩石系乙女

 


『野良モフ50頭討伐』


 新たに 『処理班』 に回ってきたクエストは予想通りのガッカリ大量討伐クエストだった。


 場所はルーガスから東に位置する 『ロイグ草原』 徒歩で片道丸2日かかる為、短いとはいえ野宿を含む旅になる。


 今回のクエスト予定としては、



 2日かけてロイグ草原到着。


 5日間で野良モフ50頭討伐。


 2日かけてルーガスに帰還。


 2日かけてレポート作成、依頼人報告。


 合計11日で内部処理完了! おめでとう!


 と決めた。かなり余裕を持たせた日程だ。

 これなら無理なく達成可能で、それでもリミットまで3日の余裕があるため、ある程度予定が狂っても調整できるだろう。


 これ決めるの本当は私の仕事じゃないんだよ? ローレライさんの仕事なんだ。

 何で私が決めたんだろう。不思議だね。



「じゃあ、そろそろ出発しましょうか?」


 旅支度を整えた私がローレライさんに声をかける。ギルドから支給された携帯食料やベッドロール等が入ったリュックは結構重い。

 高ランクの魔術師タイプ冒険者の中には、こういった荷物を魔術で創り出した空間に保管し、いつでもどこでも取り出せるようにして手ぶらで旅をする人もいるんだとか。便利過ぎる。今すぐ友達になりたい。



「おう、んじゃまぁ行くか」


 よっこらせ、と言いながらローレライさんが椅子から立ち上がる。今回ばかりはローレライさんもリュックを背負い旅支度を整えていた。

 ……コートはいつも通り着てるけど。


「このリュック重いし邪魔なんだよな。これ背負っちまうと全然スタイリッシュじゃないし」


 彼がスタイリッシュだった瞬間があっただろうか? 否、無い。今までも、おそらくこれからも。



「アホなこと言ってないで行きますよ」


「へいへい」


「じゃあ、エレノアさん。行ってきます」


 振り返ってカウンター越しにエレノアさんに挨拶する。エレノアさんは優しく微笑み、コクリと小さく頷いた。


「行ってらっしゃい。2人とも、気を付けてね」


「はい!」


「おう、嬢ちゃんは俺がしっかり面倒みてやるさ。心配するな」


 ローレライさんがグッと親指をたてる、うわぁ……なんて頼りなさ。


「ふふふ、よろしくお願いします」


 エレノアさんも苦笑してるし。


 鳥かごを覗くと、アークが 「生水は飲むんじゃないぞ!」 と言っているかのように、鳥かごの中を自在に飛び回っていた。……今、空中で直角に曲がらなかった? アークはどんどん虫離れしていくね。






 ギルドの扉を開けて外に1歩踏み出すと――



「――わっ!?」


「え!?」


 ――ドンッという軽い衝撃を下半身に受けて私は少しよろめく。


 何ごとかと思ったけど、原因はすぐに分かった。


 目の前にはペタンとしりもちを付いた少年が1人。どうやら正面から衝突してしまったようだ。私は慌てて少年の元にしゃがみ込む。


「ごめんなさい。余所見してたの。怪我は無い?」


「う、うん、大丈夫、です」


 少年を正面から抱えるようにして立たせ、小さなショルダーバッグと衣服に付いた埃をポンポンと手で払う。……確かに怪我はないようだ。良かった。


「おいおい、出発早々に何やってんだ嬢ちゃん。 おい、ぼうず。悪かったな。この姉ちゃん岩みたいに固かったんじゃないか? ははは」


 私の後ろからひょっこりと顔を出したローレライさんが笑う。

 乙女の身体に対して 『岩みたい』 て表現をしますか普通? 当然プルプルのピチピチですよ。自信ありますよ。


 ローレライさんの言葉を聞いた少年は目を丸くする。

 だよね、「何言ってんの?」 って感じだもんね。よし少年、言っておやりなさい。


「岩…うん、岩みたいだった!」


 何言ってんの!? 

 

 お姉ちゃん怒るよ!? 普段優しい分怒ると怖いよ!?


 と心の中で興奮していると、少年は必死な様子で私の手を掴んできた。


「お姉ちゃんたち、冒険者でしょ? お願い! 僕の依頼をうけてください!」


「?? ええ……っと……」


 困惑する私たちに構わず、少年は必死に私の手を掴んで離さない。


「……話聞くしかないんじゃないか?」


 ローレライさんが頭を掻きながら顎でギルドのテーブルを指す。 



 ……困った。いきなり予定が狂った。









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