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けいおん部へ

「えっと状況がつかめないのだけれど」


 と言うと愛崎から驚きの言葉が発せられた。


「新生IBを作ろう」


 と言われ遠山君はぽかんとした。

 僕は何言ってくれてんのーと思いながら


「僕はけいおん部に入らないし」


 と言うと


「何で?親から許可もらえないから?」


 と言われ


「そうだよ」


 と言うと


「それなら大丈夫だよ。親に内緒にすればいいんだよ」


 と言われ思わず苛立ち


「門限あるから練習できないの」


 と言うと


「だから言ってるじゃない朝練なら大丈夫だよ」


 と言われるといままでぽかんとしてた遠山君が


「新生IBってどういうこと?」


 と聞かれ愛崎が言った。


「IBをもう一度やり直すんだよ」

「どういうことです、愛崎さんは何の話をしているんですか?」


 遠山君は、この状況を理解していなかった。


「愛崎、僕はIBの活動なんてできないし、僕はもう歌いたくないんだ」


 そうだ、僕はこういう奴なんだ。

 親が恐いなんて口先だけで、僕は僕自身才能なんて無いと思っているから、歌うのが恐いんだ。

 ニコニコでは、もちろん良い評価が圧倒的に多かったが悪い評価もあったのは事実だ。


「何言ってるの?武ちゃん?そんな事嘘だって分かるよ。ごめんね、遠山君は混乱してると思うけど私が武ちゃん達IBをプロデュースして、一躍有名にしたんだよ」


 そんな発言に遠山君は驚きを隠せなかった。


「え、嘘だろ。だってIBは仮面バンドだろ」


 愛崎は遠山君に顔を近づけ言った。


「そうよ」


 それは見事なまでの短文極まり無い発言がむしろ遠山君をさらにびっくりさせる。

 愛崎は得意げに豊満な胸を反らし


「IBのボーカルは武ちゃんよ」


 あぁ、愛崎はやってくれた。


「本当ですか?水渚君?」


 と興奮が押さえられていなかった。


「うん、そうだよ」


 と呆れ顔で言った。


「僕は昔というかこの間までIBというバンドのボーカルをやっていたんだ。このバンドは中学生時代の思い出に残してもらうためにビデオで撮ってニコニコに流すために仮面をかぶり愛崎に流してもらったら人気が出てきて。最初は良い評価ばかりだったけど、その内そら耳で変な歌詞に変えられたりして評価が悪くなった時に親に見つかり僕は潮時だと思い、バンドを解散したんだ」


 こんな長い発言にも遠山君は相づちを打ちながら聞いてくれた。


「そして、ベースの新井君は他の高校へ行ってしまい、もうIBは復活できなくなった」


 僕がそう言い終えると


「だから、遠山君の力が必要なの」


 と愛崎が言いくるめた。

 僕は復活させる気はないよと言おうとすると感激した遠山君が


「分かったよ。それなら協力しよう。僕としても伝説のバンドの一員になれるならそれは、とてもうれしい事だよ」


 と話が勝手に進んでしまった。


「待ってよ、僕はまだ納得してないよ。第一僕には親からの許可が必要だし」


そう言うと愛崎はなんて事無しに


「だから、言ってんじゃん。朝だけ練習すれば、誰にも見つからないし、もう武ちゃんの両親には話したりしないよ」


「信用できるか。今だって遠山君に話したし」


 と言うと愛崎は遠山君に同意を求めるように


「拷問されても言わないよね」


「はい、言いません」


 と言われたが僕は信用できず。


「でも第二に・・・言いたくないけど遠山君が新井君の様に上手いなんてありえない」


「そんな、ショックです」


 と遠山君は戦闘不能になるし


「そんなことないよ、遠山君だって十分上手いよ」


 と愛崎にフォローをいれてもらったら遠山君のスイッチが入ってしまい


「だってって何だよ、上手いと断言してくれよ」


 と言われ愛崎も言い直し


「いやいや、上手いよ遠山君はとても上手いよ」


 とフォローを入れ直したが


「そんなの、僕が言ってくれる前に言ってくれないと」


 とぐだぐだ論議に発展し僕はふと時計を見ると時計がHR五分前を指していた。ここからクラスまでは走っても三分かかる。なので僕はこう言った。


「HRが始まるからもう行くね。この話はまた後にしよう」


 と言ってその場を凌ごうとすると、


「後っていつだよ」


 と言われ


「昼休みに」


 と思わず答えてしまった。僕は乗り気じゃなかったのに。ペースにはまってしまっていた。

 その後の授業の中で三時間目の時に自習になった。

 生物の先生が休みらしい。生物の先生は、おじいさんで今年で定年退職するらしい。自ら言っているのだから、そうなのだろう。

 それにしてもだ。僕はどうやら大変なことをやらかしたかも知れないぞ。

 窓ガラスの向こう側つまり外を眺めながら、僕は考えていた。

 もちろん、さっきのけいおん部の件についてである。


「何、外見てにやついてるの?」


「えっ、清君何」


「だから何にやついているんだ?」


 どうやら、僕は外を眺めながらにやついていたらしい。あまりにも無自覚だった。


「別ににやついてなんかないよ。考え事さ」


 とちょっと茶化した風に言った。

そう、内心では嬉しいのだ。僕は昼休みまでどうしたのか忘れてしまうほど、うかれていた。

 昼休みになり僕はお昼ご飯にカレーを食べに食堂へ行くと愛崎に出会い、その時に食べ終わったら屋上で集合と言った後、愛崎から遠山君に伝わったのだろう。

 先に遠山君が来ていた。


「朝の話の続きをしよう」


と僕から遠山君に話しかけると遠山君はうなづいて


「愛崎さんは?」


「愛崎はいつも食べるのが遅いんだ」


「そうですか」


 愛崎はいつも遅いのだ。中学の時からそうで昼の自主練に顔を出すことはあまりない。

 愛崎とは中二からの仲だ、それくらいのことは、心得ている。でも、必ず最後にやってくる。


「で、新生IBの件だけど」


「何のことだ。新生IBって」


 とたまたま屋上にやってきた清君に聞かれた。


「こちらの人は誰ですか?」


 と遠山君が僕に訊いてきた。


「お前こそ誰だよ。人に名を訊く時はまずてめぇの名からと習わなかったか」


 と清くんがちょっと挑発的な態度をとった。どういうことだろう、いつも優しい清君らしくない。


「こっちは遠山君でこっちは清君でIBのドラム担当していたんだ」


 と僕がすかさずフォローした。


「初めまして、いえお初にお目にかかります。ベースの遠山です」


「いや、そういうのはいいから」


 と言っている清君ではあるが恥ずかしそうに顔が真っ赤だ。


「さっきの新生IBって何なんだ」


 と訊いてきた。


「あぁ、それね。たっくんの代わりに遠山君を招いてもう一度作り直そうって愛崎が提案してくれたんだけどね」


「IBを作り直す?何言ってんの新井の代わりなんていない」


 と清君が答えた。


「うん、僕も遠山君のベース聴いたことないからななんとも言えないんだけど」


「臣でいいですよ水渚君」


「じゃあ、臣君」


「そういうことじゃねぇよ」


 といきなり大声で清君が割りこんできた。屋上にいた人達が一斉にこちらに首を向ける。


「そういうこと言ってるんじゃない、IBの活動自体がありえないと言ってるんだ」


 僕にはどういうことか分からなかった。


「清君どうかしたの?」


「うるせぇ、黙ってろ」


 そういうと清君は下の階へと続く階段の前の扉を開けた。

 そして、入れ違いに愛崎がやってきた。


「さっき高田とすれ違ったけど凄く不機嫌そうだったよ。何かあったの?」


 と愛崎は開口一番に発した。

 僕と臣君は何も答えなかった。


「二人共私の話聞いてる?」


 と怒り口調で言われたので返す言葉も無く清君とさっき話した内容を愛崎に話した。


「それだけ?」


「「はい、それだけです」」


 綺麗にユニゾンした。

 何故、清君が怒ったのかは分からなかった。昼休みはそんな感じで何も話が進まずに予備鈴が鳴った。

 僕は急いで自分の教室に戻ると不機嫌な清君は自分の席に座っていた。次の休み時間に清君と話そうと思い、授業が終わって清君の席を見ると清君は立ち上がって何処かへ行こうとしていた。


「清君」


 僕は大声で叫んだ。清君はこっちに振り向いてすらくれない。他の生徒が僕の事を完全に頭が狂った人かのように冷たい視線を浴びされた。


「あの子、誰呼んでたんだろう。誰とも関わって無いくせに」


と小声でそういう声も上がるが


「清って高田だろ」


 と言う男子もいた。もちろん、小声だが。小声だったら聞こえないとでも思ってんのかよと思うがあえて口にはしない。

 しかも、それを言った所で聞き手がいないのでは、また冷たい視線を浴びるはめになる。

 清君だけがこのクラスの僕の聞き手さ。

 なので、僕は何も言わない何も口にしないつもりだったが。


「高田が最近絡まないのはあいつと絡んでるからか」


「ホント、最近の高田が機嫌悪いのと関係してるんじゃない」


 とクラスの皆が高田君を不機嫌にさせてるのは僕の性にしている内は我慢したが、クラスの奴らはこんな事を言い出した。


「高田も実はあの根暗と一緒なんじゃない」


 僕は自分の事は我慢できたが、友の悪口に切れた。


「清君を悪く言うな、それは何人たりとも僕は許さない。清君の何が分かるっていうんだ」


 と言うと


「何を熱くなってんだよ」


「キモ」


 と言われたりした。


「まぁまぁ、そんなせめなくとも。高田君なら屋上にいるよ」


 と委員長がトイレから帰ってきて偶然居合わせて助けてくれた。

 委員長は唯一話をしてくれるが用事がある時だけだ。

 用が無くては喋ってくれない。


「ありがとうございます」


 僕は実に正直な気持ちを委員長に向けた。


「ありがとう、なんて私何もしてないわよ」


 委員長のありがとうと言う声は、完全にいや、完璧に模声されていた。

 僕の地声はバスで委員長の声はテノールなのに委員長は僕の声を模声してみせた。

 だが、そんなことは今はどうでも良かった。

 僕は屋上へ向かう為にクラスを出て一気に階段を登り上げた。その先に清君がいると信じて。しかし、そこに清君の姿はなかった。


「もう、何処か別の場所に行ったのだろうか?」


 と僕が何気なしに呟くと、屋上の扉がガシャっと開いて表れたのは清君だった。そう、僕のクラスのクラス委員長は、ここまで予想いや、予測していたのだ。


「さすがは、クラス委員長」


 と僕は小さく呟き僕をみて苛立っているであろう清君の元へ行った。

 清君は扉をあけた先にいた僕を見てその場に立ち尽くしていた。


「清君話があるんだけど、いいかな?」


 と訊くと清君は一言


「お前と話すことは何もない」


 まだ苛立っているご様子だった。


「確かに臣君じゃたっくんの代わりになれないかもしれないけど、もう一度あの頃みたくバンドができるんだぜ」


「僕はそんなことを君と話したいとは微塵も思ってない」


「じゃあ、何をそんなに怒っているのかい?」


「そんなことどうでもいいだろ。それより君こそ、両親から許可を貰って活動しているのかい?」


 清君は僕の両親も知っているから、そういう事が言えた。


「あぁ、貰っているとも」


 僕は嘘をついた。


「そうさ、両親をやっと言いくるめることに成功したのさ。そんなことで怒ってるのかい?」


「だから、お前には関係ないだろ。今度確認してやるからな」


 ヤバい、確認されたら、僕が両親に怒られる。それは大変だ。手に汗を握りながら僕はまた虚勢を張った。


「あぁ、確認したまえ」


「もちろん、確認するとも」


 キーンコーンカーンコーンと昼の授業の最後の授業の始まりのベルが鳴った。


「さぁ、根暗い君は早く授業に行くのだな。僕は今日はもう帰るさ」


 と言って、スタスタと屋上から階段への扉を開きすかさず降りていった。

 僕も清君がクラスのある二階まで少し距離を開けて降りた。

 清君はそのまま何も言わず降りていった。

 僕は急いでクラスに戻ると授業はもう始まっていた。


「遅れてすいませんでした。体調が優れなかったので保健室へ行ってました。後高田君ですが容態が悪化しそうなので帰りました」


 と言うと


「そうか、高田のことも聞いている早く席に座りなさい」


 授業はサクサクと進んでいた。

 そう、こんな事が起こるのも委員長には視えていたのだ。


「はい、先生」


 僕はそれだけ言って自分の席に戻って教科書を出そうと引き出しを引くと、紙屑が落ちてきた。

 それは委員長からの手紙だった。要約すると、


『保健室に行ってた事になってるからそんな感じの振りをしてくれたらいいよ。でもこの紙見る前からそうしてるか』


 という予言も入った内容だった。

 僕はさすがにこの文章を見て引いた。

 だってありえなさ過ぎる。僕がどうするかも計算済みだなんて、まるで何でも知っているかのようなそんな怪奇めいた内容だったから。

 まぁ、最後の授業は取り上げるぼどの事が他には無かった。

 そして、放課後がやってきた。

 僕はけいおん部の活動場所へと足を早めた。

 僕は今日という日をもって両親に内緒で再びIBの活動をする訳だが、活動場所に行くと臣君が来ていて


「水渚君、どうするんですか新生IB。高田君の許可無しにやってもいいんですか?」


「いや、それは無理だろう。高田君達初期メンバーが認めないと活動は難しいだろう」


「あ、皆来てるわね」


 と愛崎がやって来た。


「愛崎。清君から許可を取ってないなんてどういうつもりだ。」


僕は愛崎に訊いた。


「そうですよ。愛崎さんこれはどういう事なんですか?」


「その事なんだけど、清ね、武ちゃんが中二の時辞めたじゃんか、あの後色々と問題があってやめたのよ」


と愛崎はまずそうな顔をした。

「うん、知ってるよ。受験の為でしょ」


 と僕の答えを聞くや否や


「そんな事言ったのね清は」


 と愛崎は何か煮えきらない感じに言った。


「あのー、僕にはさっぱりなんですけど」


 と臣君が割って入って来た。そりゃそうだ臣君は清君の中学時代を知らないのだから無理も無い。

 しかしこればかりは清君と僕らの事だから人には言えない事情がたくさん交差している。


「あのね・・・」


 と愛崎は口を開いた。


「ある事件があったんだ………」


 なんだって、僕が知らない間に事件があっただと。僕は一人たまらなく何かもやもやしたものが積もったみたいになった。


「でも………この事は知らない方が新生IBの為なんだ」


 何が起こったと言うのだ。

 愛崎は全然説明しようとしてくれないし、IBは僕を除くと三人しかいないんだぞ。

活動をしていたと言うのかあの三人で、まさかそんな事はありえまい。誰がボーカルをやったと言うのか。


「清に見つかったなら仕方無い。今日はお開きにしましょ」


「何をごましているんだ」


「ごめん、武ちゃん今は言えない。それは、武ちゃんと臣君の為でもあるんだ」


 と言って今日予定していた僕の事に関する事とこれからの事についてのミーティングは無しになって一日を終えた。

 僕は急いで帰った。両親にばれたくなかったから、家に帰ると両親は置き手紙を残し旅行へ行くと書いてあった。

 あぁ、そういえばそうだった。もうすぐ両親の結婚記念日で今年は旅行へ行こうという提案があったのだ。両親は子供についてはあれだが中々に仲がいいのでこうやって旅行に行ったりしているのだ。大人は切り替えしが早くて凄い。両親は旅行中は僕の事など一切考えていない。帰ってくるのはどうやら五日後の様だ。これで、僕は音楽活動に専念できる。

 僕の父親は僕のギターを倉庫に隠してくれたのだ。母親は家督にうるさく神社を継ぎなさいと言って、僕が音楽に没頭するのは許さないが、父親は僕にやりたいようにやれと言うので僕に関してだけ両親は対立するのであった。しかも音楽をやることには母親は反対するが、別に全てを禁止にしている訳ではない。ただ単に僕にこの神社を継いで欲しいだけなのだ。


「久々にギターに触れて思いっきり弾けるぜ」


 と僕はお腹が減るのも忘れて弾いていた。しかし、さすがは成長期。やっぱり腹が減ってご飯を作り食べて風呂に入ったりして寝支度を整え、寝た。

 次の日、いくら両親がいないからといっても早起きが習慣についていて、ギターを持って学校へ行こうとしたが。


「は!!!」


 僕は気づいたのだった。


「奴等のペースに巻き込まれている」


 今ごろそんな事を思った僕はギターを家に置いてきた。

 危うく騙される所だった。

 そう、僕はもう流されていたのだ。

 新生IBを作ろうとしている事になっている事に危うく僕まで、その新生IBに仲間入れされる所だったのだ。

 騙されてたまるか。

 僕は、そんな気で学校へと赴くと昨日と変わらずそこに愛崎は居たのだった。

 しかし様子はいつもと違っていた。


「あ、武ちゃん」


「どうした。愛崎何を泣いているんだ」


 そう、愛崎は何故か泣いていたのだった。


 「えっとあっとこれはちょっとね」


 と愛崎は急いで泪を拭いた。

 でも、泪の後迄は拭い切れていなかった。

 しかし、僕にとってはそんな事どうだって良かった。

 僕には愛崎が泣いていたという状況の方が異常すぎて何もできなかった。

 反応しようにも、どの反応が正解なのか僕には分からなかった。

 それでも、何かアクションを起こすのが男の優しさだとは思うが、こちらも愛崎が泣いているのが唐突過ぎて本当にどうすれば良いのか分からず、ただ狼狽する事しかできなかった。


「取りあえず、落ち着けよ愛崎」


「うん」


 こういう時の愛崎はとても素直だ。

 まぁ、元が素直ではないと言っている訳では無い。

 あくまで、僕がそう思うだけなのだが。

 人の行動は主観が変わればいくらでも変わる物だ。

 しかし、話を聞かねば何があったのか分からない。


「えっとね、えっとね」


「落ち着いてゆっくり喋れ」


「でも、早く伝えなきゃって」


 何があったと言うのだ。

 愛崎はそう簡単には泪を見せずいつも天真爛漫に僕に歩み寄って僕をいろいろと助けてくれるそんな強い女の子のはずだったのに。


「えっとね、高田が絶対新生IBは認めないって」


 清君が、そんな言葉を口にするなんて。


「清君が………」


 僕はやっと愛崎が泣いていた理由が分かった。

 でも、あの清君がそんな事言う筈無い。

 だっていつもどんな時でも優しいあの清君が?

 まさか、確かに昨日その話をしていた時、機嫌が悪かった様だが、僕を支えてくれる大切な友人なのに愛崎を泣かせるだなんてありえない。


「あの清君がそんな事言う訳無い」


 そうだよ、優しい清君が。まさかそんな事をするとは。


「武ちゃんは私を信じてくれないの?」


 そうだ、愛崎がそんな嘘を吐いて得になるとは到底思えない。

 でも、だから、しかし。

 僕はもう訳が分からなくなっていた。

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