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【プロローグ】
嵐の夜に雷鳴が轟く。吹きすさぶ暴風のなか、草木がまばらに生える岩山の崖を馬車が走る。それを一匹の腹をすかせた魔獣が追いかける。
巨大な狼の様なその魔獣と馬車の距離が少しずつ、少しずつ詰まっていく。
馬車に乗っているのはさらわれた子供たちと、それを売り捌こうとする悪漢だ。子供たちからしてみれば奴隷になるか、魔獣に食われるか。どちらにせよ彼らの将来は暗い。それを知ってか知らでか、雨風の音に混じってすすり泣く声が聞こえる。
魔獣が馬車へ飛びかかろうとしたその時、馬車を引く馬が道を踏み外した。崖の下は硬い地面があるだけだ。このまま落ちれば誰も助からないだろう。魔獣も深追いすることは諦め、新たな獲物を求め駆け出す。
幾人の運命が一思いに幕を閉じると思われた。
しかし、馬車が地面に激突する直前で車内から閃光が弾ける。夜の闇を打ち消す程の光が落ち着き、やがて露わになったのは馬車を牽いていた馬と悪漢、そして数人の子供たちの無残な死体と瓦礫の山。
その中には、異質な淡い光に包まれ生き残った、白い髪の少年がいた。




