第9話「監視の影」
時刻は遡って、アリアが目覚めたその日の未明。
ポーラの街の影で、一人の青年が誰かと連絡をとっていた。
『そちらも目覚めていたか?』
相手の男が口火を切る。
「ええ、予定通りに……」
『そうか、計画は順調だな。こちらもついにあのシヴァを喰ってやったぞ』
「おめでとうごさいます」
『封印のおかげだな。さすがにあれで弱っていなければ、いくら300年で力を増した私でも魔王を喰うことはできなかったろう。まったく、あの小娘も役に立ったものだ……ああ、気配もかなり微弱だったから、おそらくよほど敏感な者でなければあの魔王が目覚めていたことには気付かなかったはずだ』
「…………」
(ついに念願かなって魔王を喰らえたからか……いつもより饒舌だな)
無言を貫く青年は、ひとり胸中でつぶやく。
『ところで、監視に気付かれてはいないだろうな?』
「…………………今のところは」
『……本当だろうな? 今後はさらに注意しろ。絶対に悟られるなよ』
「了解しました」
『シヴァの力……さすがに最強と呼ばれただけはある。吸収した力を身体に定着させるのにおそらく1年ほどはかかるだろう。……これから私は眠りにつく。その間気付かれることなく監視を続けろ』
「はい」
そして『最後に』と、赤金色の目をした……300年前は珊瑚色の目を持っていた魔王の元側近はこう警告する。
『カオス、あの小娘を死なせるなよ。あれも私の大事な餌となってもらうのだからな』
「かしこまりました………ベリアル様」
カオスと呼ばれた青年は青紫の双眸を怪しく輝かせながら、己の主に恭順の礼をとった。
ここまで読んでいただきありがとうごさいます。ここで第1章はおわりです。
ついでに連続投稿もいったん終了(汗)
できるだけ早く続きを書きたいと思いますが…
さて次はいよいよ学園編がスタート。
ようやく他の主要人物と魔法が活躍できる舞台がやってきます。
よろしければ気長にお付き合いください。ではでは。