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禁忌の果実と攻略眼  作者: 御中御庭より


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第八話 森と獣族

「この森には、守り神が居ます」


受付のお姉さんが続けて言った。


「厳密に言うと、神ではなく獣族が居るんです」


「……本当に居るのか?獣族なんて」


今まで聞いた事もない存在。

疑わずには居られない。


「ええ居ますとも。ところで貴方達、ヴェル様とエリオ様。リヒト様、はいらっしゃらないのですか?」


「ええ」

「あー、まあいろいろあって」


「そう、ですか。分かりました。郵便鳩で魔獣退治で前線を張って街を守っていると、噂の方は聞いておりました」

「あなた方の実力を買って、お二人に是非受けて頂きたいクエストが有るのですが」


ヴェルと顔を見合わせる。


「是非とも」


「ありがとうございます。明日朝一、この街の南門に来て下さい」


___

翌朝、言われた通り南門に来た。

そこには受付お姉さんと、質素な服を着た二人の女性が立っていた。


「んん?」


よく見ると頭に耳が生えている。

それに……尻尾?


「紹介します。ロロとロゼです」


二人が一歩前に出る。


「ロゼと言います。初めまして。エリオさん。ヴェルさん」


礼儀正しい所作、凛としているがどこか幼い顔つき、胸ほどまで伸びた茶色の髪が柔らかく揺れる。

耳は萎れている。


「こっちは妹の……」


「ロロにゃ!」


自身の胸に右手を当てそう言った。彼女は鼻をフンと鳴らした。


肩ほどまで伸びた髪は少しボサついている。

髪以外瓜二つの姉妹だな。


「さて、本題のクエストについてです」


「待つにゃ」


ロロが人差し指をこちらに向ける。


「まだ実力、知らないにゃ」

「そんな奴信用出来ない、私と手合わせ願う。にゃ」


ヴェルと顔を見合わせる。


ロゼが一歩下がる。


「よーっし、行くにゃ」


重く、冷たくなる空気。


瞳孔が縦に細くなるのを見た刹那、

彼女は影を残した。


「ぐっ!」


「にゃっは〜お姉さんは合格にゃ」


ヴェルはロロの手を掴んでいた。

速い。瞬きの暇もない程に。


俺は数歩距離を取る。

ロロを凝視する。


《猫族》

《芯強度:中強》

《攻略:中》

《弱点:耳》


--視える。


ロロが手を振り払う。

目が合う。


なびく空間、身を屈める彼女。


速い。だが――読める。


三つの橙の線。

俺の腹を、腕を、足を掴む線。


身体を捻り躱す。合わせて、掌底を。


「にゃむ!ぶ」



____

「これなら勝てるかもしれにゃい!」


「エ、エリオさんヴェルさん無礼をすみませんでした」


彼女らに相槌を打つ。

尻尾は振れている。


受付のお姉さんが咳払いをする。


「……本題入ってもよろしいでしょうか?」


頷く。


「これを見てください」


剣が抜かれる。

露わになった刀身は、半ばから欠けていた。


「この森に居る獣族の一種、鼠族の仕業です」


「獣族は森の中央で暮らしています。ですが――ある日、鼠族に襲われました。現在獣族の生活圏を占領されています」

「1年ほど前、我々は一度、この街の勢力を集め討伐隊を組み、獣族と共に戦いました」

「勝利を収め解決したのですが、数日後、獣族は再び襲われ振り出しに戻ってしまったのです」

「……討伐隊もほぼ壊滅状態にされました」


「それで力を貸して欲しいって事ね。でも私たち二人が戦ったところで勝つの無理だと思うんだけど…」


杖を握れなかったあいつの手がよぎる。

前を向いて生きる……か。

……あいつなら。


「ヴェル」

「……受けよう」


「ちょ、ちょっとエリオ!」


「困ってる人が居たら……見て見ぬふりは性に合わないだろ?」


猫耳をピョコピョコさせている。


「にゃ〜!」

「か、感謝します。ありがとうございます」


「あ、頭を上げて!」

「にしてもなんで同じ獣族が襲ったのか?」


ロゼが頭を上げ話し出す。


「犬、猫、狼、兎……私達、四種族は協力して生きています」

「鼠族……銀色の髪に黒い目、彼らは己らで生活をしていて、話しかけても逃げるだけでした。でも突然住処に現れて言ったんです」


「にゃム……」


「白い髪に朱色の目の鼠族を中心にして……『神聖樹は我々の物にする』って」


「神聖樹……?」


初めて聞く名だ。


ロゼは目を瞑る。

眉間にシワが寄っている。


「その日から森は地獄に変わったのです。大樹も住処も占領されました。……圧倒的数とあの顎……」


こちらを向く。


「神聖樹……恐らく大樹の事です。あの木は、祖先が代々繋いできた軌跡そのもの。……負ける訳にはいきません。……取り返さなきゃ、いけないんです。誇りを土地を……奪われたままでは、生きていけません」



風が鳴る。誰も口を開かなかった。

ロゼは瞬きもしなかった。

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