第七話 お嬢と執事
目が覚めた。
いつの間に寝ていたのか。右頬が痛い。
窓に目をやる。青い光がうっすら入るのを見るに今はまだ明け方だろう。
足を曲げ伸ばしをしてベットの外に足を出し。身体を起こす。
ヴェルは寝ている。
横のベットで寝ている。
今は腹が減ってやばい。昨日、食事をした記憶が無いし、今すぐに何かを食べなければやばい。
ベットを降り、入口付近にあるヴェルのリュックへと忍び寄る。
食料は後二食分はあるはず。
……あった。乾パン。
背中から感じる視線は気の間違いだろう。
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「さ、エリオ行くわよ!」
「はぃ」
日が昇り始めた頃。
身なりを整えた俺達は非武装で歩き出す。左頬も赤く腫らした俺はヴェルの後ろをついて行く。
昨日の話をしに執事を探すのだ。
思ったより早く見つけた。
と言っても本人をではない。
ギルド横に不自然にある豪華な馬車、そして多くの兵士。
これは見つけたも同義だろう。
「いちばん大きい施設だし予想通り、ではあるけど、こういう辺鄙なとこに嬢が来るのもおかしいけどね。そもそも」
兵士に話しかける。が殺気を放たれてしまった、すぐに昨日貰った名刺を見せる。何とか昨日の執事と話すことになった。
ギルドの二階、上がってまっすぐ突き当たった部屋に通された。
扉を開けると左右にベッドが一つづつ。
右ベッドに昨日の執事が昨日と同じ格好で腰掛けていた。
「昨日の事。ですか」
「ええ」
「昨日の事にございます」
凛とした声を出した。
俺達は左ベッドに腰掛けた。
「申し遅れました。わたくし、ユキシゲ・クスノキと申します。フィオナ王女の護衛と世話をしております」
「エリオ・フェルナードです」
「エニア・ヴェルモントと申します」
「……まぁ固くしなくて大丈夫ですよ。とりあえず、要件をお伺いします」
「昨日の、あの護衛の方、ってどこ出身かとかって分かりますか?」
彼の眉がピクっと動いた。
「そんなことを聞いてどうするんです?」
「あ、あ〜いえ、彼の胸にバッチが着いていたので少し興味を……あ」
「彼の名はハジメ、桃源郷の者です。私と共に国の王女の護衛を勤めていました」
「あなたも、そうなんですね」
「ええ。そうです」
目の前に居るこの執事の人の胸にも、同じバッチが付いていた。
「桃源郷、あなたの故郷について、詳しく聞けませんか?」
ヴェルが聞いた。
「桃源郷、行けぬ地に行く、のですかな。行き方を教えましょう他言無用でお願いします……これが昨日のお礼ということで」
「『夕闇や枝垂桜のかなたより 闇の奥より匂い来る花の香よ』。これを桃源郷が"ある"とされてる盆地の入口で満月の夕方に目を瞑り言って下さい。そうすれば道が見えるようになります。行く際は後悔無きように」
彼は少し悲しいをしていた。
ヴェルはメモを取ってくれていた。
「以上で、よろしいですかな、お嬢が起きぬ様に静かにお帰りお願いしますね」
「あ、ありがとうございます」
一礼をして扉を開ける。
「そうそうエリオ様、お嬢より質問が」
振り返る。
「どんな人が好みかと」
____
日が高く昇る頃、俺達は荷物をまとめ次の街へと向かう。
着く頃には暮れるかもだからと、急ぎ足で歩を進める。
ヴェルはニヤニヤしていた。
「ンフッ」
「なんだよヴェル」
「いやぁ、さっきの好みの話、まんま私の事じゃなかった?って思って」
「……」
「図星?ねえ、図星」
「やめろヴェル、横腹ツンツンすんな」
「生意気なガキンチョって思ってたけど可愛いとこあるじゃ〜ん」
「……」
「あちょ、待ってよ!走らないでよ〜待って〜」
猛ダッシュで次の街に向かった。
暮れる前に着いた。
「でっかいな、この街。外壁も門も」
「ね〜大きいよね〜」
ヴェルはいつの間に横にいた。
結構飛ばしたはずだがケロッとしてた。顔を見ると微笑みかけてきた。
「さ!行こエリオ」
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宿を取り、ギルドへ向かう途中、会話が耳に止まった。
森の奥が奪われた……? なんの事だろう。
ギルドに着きボードを見る。
清掃。清掃。害虫駆除。鼠駆除……。
「この街、魔獣狩りの依頼って無いのか?」
「ええ、ここ周辺には魔獣は出ませんからね」
「ヒィィ」
「ワワ」
情けない声が出てしまった。
いつの間にか後ろにギルドの受付お姉さんが立っていた。




