第五話 旅一日目
門を抜け街を背にして歩き出す。
行先は分からない。
…そういえば、聞いていないな。
「なーヴェル、これから俺たちどこに向かうんだ?」
「南西の桃源郷を目指してるわ」
「ここ東の端っこの街でしょ?道なりに歩いて三週間ってところね」
ヴェルは淡々と語り出す。
「禁忌の果実のなる樹のちゃんとした場所はよく知らないのよね。だからありそうな場所をこれから巡るのよ」
「巡る、って一応目星は付いてるんだよな?」
「まー、あるわよ。もちろん」
「あ、でもこの旅仮説と予想で行ってる縁があるから、そこは勘弁ね!」
ウインクしながら手を合わせている。
「まず前提、この禁忌の果実なんだけど」
「桃源郷。天下の神殿。あと、魔族の根城にはあるはず」
「魔族も、あれは変な技のひとつだと思うし」
「果実はいくつあるか分からない。でも少なくとも一つじゃないわ」
「桃源郷って確かあれか、国の傭兵とか護衛してるって奴らの祖国だな。そーいや見たことあったな」
「彼らは変な技を使うらしいから絶対にあるわ」
ほへー、と間抜けな声が出ながら聞いていた。
「あ、そうそうエリオ、お金、どのくらい持ってる?」
「え?あ」
「は?」
日が下りかけた頃、外壁が目に入った。
俺達は町に着いた。
小さく簡素な宿場町だ。
「今日はここまでね」
「ヴェルー、もう疲れたのか?まだ日暮れてないから進めると思うんだが」
「中途半端に進むのは危険よ。あと街間隔は数時間歩いたら着くようになってるから、このペースがベストよ」
「知らなかった…」
「さ、宿とって、ギルド探すわよ。お金は私が持ってきた銀貨十枚しかないんだから、二日で無くなるわ」
どんな町にも外壁とギルドはある。
どこでも魔獣がよく出る事が嫌な程わかる。魔獣を狩るクエストをこなして稼ぐのがこの旅の稼ぎになる。
魔獣はどんな個体でも一体で銀貨一枚、結構大きな報酬だ。
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森に入ってすぐ、魔獣が二体飛び出した。
「右」
ヴェルが斬る。
浅い。
俺が踏み込む。
足を断つ。
倒れたところに喉を突く。
三体目が背後から跳ぶ。
振り向きざま、横薙ぎ。
沈む。
「三」
それからは作業だった。
十体。
息が上がる前に終わった。
紫の液は出ない。
それだけで、少し安心している自分がいた。
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「はい!ありがとうございます!旅の方!」
ギルドの受付で交換を済ませた俺達は食事処を探すため外に出た。
「はあ…」
「忘れてたわねー」
俺達は宿に戻ってきた。食事を、お酒を!と思っていたが、露店はおろか、店すらなかった。
「私が携帯食料持ってきてて助かったわねエリオ」
ベッドに腰掛ける。
ヴェルは四日分の食料を持ってきていた。頭が上がらないね。
「魔法で作った水、美味しくないけど、これも仕方ないわね。エリオ」
「はい!すぐ作ります!作らせてください!」
二日、あと二日歩けば大きな街に着く。だから明日も同じになるだろう。
「エリオ、足揉んで」
「はい…」
ヴェルの前に膝をつく。
目を閉じると、森の匂いがまだ鼻に残っていた。
いやこの匂いは
「いやクッサ」
「オグッ」




