Interlude -01
私は恵まれていた方だと思う。
広い屋敷に住み、手入れの行き届いた庭を眺めながら朝を迎え、本棚には望めばいくらでも本が増えた。勉強も、剣も、魔法も、教えたいと言ってくれる人がいた。先生は何人もいて、使用人も多く、家の中はいつも静かで、整っていた。
両親は忙しい人だった。
遠くへ出かけることが多く、家にいる時間は決して長くなかった。それでも、帰ってきた夜は必ず私の話を聞いてくれた。剣の型をひとつ覚えたことも、難しい本を最後まで読んだことも、ちゃんと褒めてくれた。
「強くなりなさい」
父はそう言った。
「賢くなりなさい」
母はそう言った。
どちらも、優しく。
私はそれを疑ったことがなかった。
十歳の誕生日は盛大だった。大きなケーキに、並ぶ料理。使用人たちもどこか誇らしげで、私は少しだけ照れながら、贈られた細身の剣を受け取った。
重さを確かめるように握ると、父が満足そうに頷いた。
「似合っている」
母は微笑みながら、私の頭を撫でた。
その瞬間、私はきっと、正しく育っているのだと思った。
翌日、両親はまた遠くへ出かけた。
玄関先で馬車を見送りながら、私は小さく手を振る。振り返ることなく進んでいく車輪の音が、やけに規則正しく響いていた。
それが普通だった。
寂しいと思ったことはない。
強くなれば、何も困らない。
賢くなれば、失うものはない。
私は、そう教えられて育った。




