表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
禁忌の果実と攻略眼  作者: 御中御庭より


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

10/12

第九話 森の住処

「案内します」


ロゼとロロに案内されて鬱蒼と茂る森の中へと入る。

受付お姉さんは街に帰った。

討伐隊と話をしに行くとのこと。


森の様子は明らかに異常だ。

木の幹---それに根に齧られた痕が異様に多い。鼠族の仕業だろうか。


……森に入ってから身体にまとわりつく視線も感じる。

気温は暖かい。それなのに感じるのは冷たさだった。


森の奥に入るほど木の幹が太く、高くなっている。


「ここが私達の現集落です」


ロゼが足を止めた。

何も無い場所。


「上です」


ロゼが指差す頭上には木と木を掛ける足場、それに建物があった。


「わぁ……」


ヴェルが呟く。


「……登れま」

「早く乗るにゃ!」


ロロが、乗ってくれと、己が背中をバシバシ叩いていた。


「じゃ頼む」


「ヴェルさんも」


「ええ。ありがとう」


艶やかに見えていたロゼの身体。

首筋と腕に走る古傷が、目に残った。


____

「足元、気ーつけるにゃ」


背中から降りる。


「族長の家、案内します」


足場の上を歩く。

隙間はある。足を横にしても抜けない程度。



族長の家まで程なくして着く。

それまで誰とも会うことはなかった。

物音もしない。歩く木の軋む音が広がるだけだった。


「族長、戦士を連れて参りました」


ロゼはそう言い藁の扉を捲し上げる。暗闇の奥にある光の揺れは俺たちを包み込むような、そんな柔らかいものに思えた。


「入れ……」


重く鳴る声。木が軋む音が重なる。

肌は冷たさを感じる。


「し、失礼します」

「失礼します」


身を屈めて入る。

先に入ったヴェルが入ってすぐ動きを止めた。


「ヴェル、止まると入れな」


目線を前にした時、わかった。

動けなかった理由が。


室内の奥に座っている人、

蝋の火に照らされた身体に無数にある噛み跡。

無い右腕、開いていない右目。

年老いた身体に刻まれたそれらはこの森の出来事を伝えるのに充分だった。


俺は何処か軽く思っていた。

ロゼが言っていたことを。


「にゃむ……早く入るにゃ」


はっとする。

奥へと這い、座る。

距離はある。それでも息遣いが届く気がした。獲物を定めるように動く眼は、身体を痺れさせていた。

逃げ道を探したくなる本能を、理性で押し殺す。


「……エ、エニア・ヴェルモントと申します」


ヴェルは頭を下げた。

震える身体と声は俺に共振する。


「エリオ・フェルナード、と申します」


頭を下げる。


「……頭を上げよ。……そう怯えなくてよい」


ゆっくりと身体を起こす。

音がないことが、逆に耳を打つ。

返って自身の鼓動を大きくしていた。


「……族長のハザクだ。ここに来た、それはつまり我々の話を聞いた、という事」

「前にも言ったが、ここから先は死と隣合わせだ。……戻るなら今しかないぞ」


一度目を瞑る。


「……覚悟は、しております」


「そうか、礼を言う。そして、すまない」


ハザクは頭を軽く下げた。


言葉は刺す。だが最後の一歩だけは、俺に選ばせている。


「奪われたものは、取り返す。それは我らの誇りだ」


「明後日から雨季が始まる。作戦は、明日、話す」


ハザクは目線を後ろにずらす。

合わせてロゼが退出するよう促した。


俺達は外に出る。


「……?」


何か感じた。でも言葉にできない。

追おうとするほど、輪郭が崩れる。

俺は、それを掴むのをやめた。



____

俺は、夜が好きだった。


街の色が輝く。

人は家に帰る時間。

温もりが目の前にあり、微笑みが溢れていた時間。


俺は、知らなかった。


夜は森にも等しく訪れる時間。

天からの灯りが消え、何も見えない暗闇の世界。


貸してくれたこの家にヴェルは居る。ロロもロゼも。居るはずなのに。


---たった一つ、違うだけ。


藁で作られた布団を自身に掛け、温もりを探す。

右手を伸ばしてみる。

果てしなく続く闇は自身さえも隠していた。


瞼を閉じる。

変わらない世界。

家族の笑顔を想っても、そこには何も無い。


右手の先から熱を感じながら、孤独に落ちていった。




瞼の裏を刺す赤い光が朝を知らせる。


暖かい。右側から温もりと柔らかさを感じ目が覚める。

寝息を立てているヴェルが居た。身体を丸め、右腕を包み込んでいる彼女が。


……確かに感じる感触。ヴェルが目を覚ますまでそれを感じ続ける事。それは俺が今出来る最善の選択。


「……起きたでしょ」


「……」

「……イッ!イタッ!ちょ辞めて!」


逃げ道は無かった。

腹をつねられた。



____

日が高く登る頃、ロゼにハザクの家に来るよう呼ばれた。


外に出ると、獣族が居た。

昨日、存在すらも怪しんだ獣族が家から出て、ゾロゾロと一つの家へと足を進めている。


「俺らも行こうか」


振り返り言い、足を進めた。


藁の扉を上げ、屈み中に入る。

前を歩く獣族は、左右へと別れ壁際で腰を下ろしていた。


顔を上げると胡座のハザクと目が合う。

横には獣族が四人立っていた。


ハザクに手招きされる。


ヴェルと目を合わせ、前へと歩む。

ハザクの横には獣族が、四人。ロゼもいる。

ロゼの右側に行き彼女に合わせ、背筋を伸ばし姿勢を正す。


人の入りが止まる。

視線を巡らせる。右壁際に、十人程、左も、同じくらい。

左前方には二十人程が座っていた。


光が射し込む。

軽装備を着た人達がゾロゾロと入り、右前に腰を下ろしていった。

---討伐隊も二十人程、か。


「……皆、まずは集まってくれてありがとう」


ハザクが口を開く。

横を向く人、話す人、皆、口を閉じ静寂が造られた。


「これより、作戦会議を始める」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ