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禁忌の果実と攻略眼  作者: 御中御庭より


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第一話 朝と違和感

朝はだいたい、リリの声で始まる。


「エリオー! あーさー!」


勢いよく扉が開いて、七歳の妹がドタドタ飛び込んできた。


「おーきーてー!」


小柄な体で、まっすぐベッドにダイブする。

もちろん俺の腹をロックオン。


「ぐっ……」


この精度、百発百中である。


「重い」


「重くない!」


リリは胸を張る。金色の髪がぴょこんと跳ねる。


「兄上、もう朝ですよ」


扉のところで腕を組んでいるのはテオフィルだ。


「お前は朝から説教か?」


リリの頭を撫でながらそう返す。


「せ、説教ではありませんよ。鍛錬の時間が__」


「冷めちゃうよ。朝ごはん」


廊下の向こうから、やわらかい声がする。

ミレーヌの声だ。


「兄さん、今日も」


「分かってるよ」


エリオは起き上がり、リリの頭をぽんと叩いた。


台所ではマドレーヌが鍋をかき混ぜている。

長い茶髪を後ろでまとめ、すらりとした背で振り返った。


「おはようございます、エリオ様」


「おはよう。今日も頼む」


「ええ、もちろん」


いつも通りの朝。

騒がしくて、温かい。


――守りたい。

あの日、何も出来なかったから。


俺は強い。剣も魔法も、この街では負けたことがない。


だから、この家も、この時間も。


ずっと。




昼前、森の入口。


今日も魔獣討伐の仕事をこなすため、

門に向かって歩いている。


「エリオ遅い!」


声をかけてきたのはヴェルだ。

エニア・ヴェルモント。

ポニーテールで目立つからすぐわかる。

剣が俺と五分の頼りになるやつだ。

こいつはいつも大きなバッグを背負っている。


腰に手を当てているが明るい声。

怒っては、いなそうだな。


「遅くねーよ。時間ぴったり」


リヒトが高笑いながら杖を肩に担いだ。

炎魔法が得意な魔法職。


優しく背が高く顔もいい。

受付の女性との会話がやけに長い。


「よし、行こうか」


「おう!」

「ええ」


森は昼でも薄暗い。


俺達三人がパーティを組んで半年が経つ。

魔獣を狩ること。それが仕事。


正面から木を縫うように

駆けてくる狼の魔獣が二体。


ヴェルが踏み込む。鋭い斬撃が上から下へと流れ、狼の魔獣の首を断つ。


俺はもう一体の左前足を剣で狙う。重い感触が腕に伝わる。魔獣が倒れたところをリヒトの魔法が焼く。


「エリオ!上くるぞ!」


三羽の鳥の魔獣が一斉に降りてきた。


俺は短い詠唱で火球を散らし、魔獣の軌道をずらす。空いた隙をヴェルが叩き落とした。


「完璧だな!」


リヒトが言う。

ヴェルはフンと鼻を鳴らす。



「これで三十体」

「目標通りね」


リアカーに魔獣を積み込み、森を出る。


「よーし今日も街の平和守ったな!」


リヒトが胸を張った。


「そうね。悪くないわ」


ヴェルが笑う。


俺は森を振り返ってみる。昼間は静か。

そう。何もおかしくない。




ギルドはいつも賑わっている。


受付横に魔獣を乗せたリアカーを置くと、

受付の女性が慣れた手つきで確認してくれる。


「いつもありがとうございます。ええと……はい。二十五体ね。銀貨二十五枚」


「二十五?」


「はい」


「三十じゃないの?俺たちは三十倒したはずだ」


「でも、計測は二十五ですね。……はぁ。実は最近、増えてるんですよねこういうの」


「増えてる?」


ヴェルが静かに聞き返した。

俺は受付に詰められるのかと少し構えた。


「討伐の報告の数合わないんですよ」


銀貨の冷たい重みが掌に乗る。


「はい。次どうぞー」


だが、間違えるはずがない。

三十。

確かに、三十体倒した。

五体も減るなんて、そんなことあるのか?


受付を後にする際、リアカーが目に止まった。


赤い血に混じって

紫色の液が滲んでいて、灰が浮いていた。


外で夕方の鐘が鳴り始める。


鐘の音がいつもより低く感じた。

「テオー、魔法のクラスってどんなのあった?」

「事象を発生させる、初級魔法。攻撃魔法等の、形を崩さず遠距離まで放つ魔法は中級魔法。広範囲に影響を及ぼす魔法は、上級魔法だよ。雷や風魔法もここに入ります。後は火と風、みたいに複合させる魔法は複合魔法って言います。扱える人は少ないみたいですね」

「はへー」

「聞いてます?兄上」

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