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第七話

 自分が何者なのか、どうしてこの場所に来たのか、ただの偶然なのか。


 決意を固め地の底から飛び出し敵を退けまた進み始める。だがその足取りは少し重い、理由はさっき見た壁画のせいだ。壁画に描かれた不気味な何かとその何かがおそらくあった場所に落ちてきた自分との関係性をいやでも疑ってしまう。


 真っ暗な通路を歩き続け、答えの出ない問題にどうにかして自分の納得いく答えを出すために頭の中で必死に考え続ける。


 だが、考えても自分の納得いく答えどころか考えれば考えるほどわからなくなっていく。こんな考えるだけ無駄なことを考えてしまうのはまだ自分の精神が人間であることなのだろうか。


 不意に頭の中に壁画の不気味なものを思い出してバッと来た道を振り返る。さっきから頭の中を不気味なものが支配している。


 一度思い描いてしまった想像は簡単には払拭できない。想像がより恐怖を掻き立て背筋を震わせ、後ろから何かが少しずつ迫っている感覚に陥る。


 自分の精神の脆弱さがこの状況を悪化させる。


 この地に住んでいた文明は溢れ出す何かを抑えるために神殿を建て継続的に抑え込むために生贄を使い何かをこの地に封じてきた。


 だが、今この神殿に人の気配はない…… なぜいないのか。ここから先は考えたくもないが、考えるまでもない。


 何かによって滅ぼされた。さらに自分自身その何かには心当たりが一つある。それは魔物だ


 異世界の生物は2種類に分けられる、それが魔獣と魔物だ。魔獣は簡単に言うとマナを宿した生物のことだ、これに当てはめるとマナを吸収した人間も同じく魔獣と言える。魔獣は地球の生物と同じで食べて寝て子供を作って自分たちの種を繁栄させようとする。


 だが魔物は違う、正確に言うと魔物は生き物ではなく現象に近い存在だ、魔獣と同じでマナを宿してはいるが同じなのはそこぐらいだ。


 魔物は生き物のように食べたり寝たり交尾したりはせず、血も流れず、傷を負わせてもしばらくすると直ってしまうし仮に倒したとしても死体は残らず塵になって霧散する。


 何処からともなく現れて自分たち以外、つまり魔物以外の生物を無差別に攻撃する存在だ。


 姿形はあべこべで人の姿や獣に近い者もいれば、およそ生物とは思えないような姿をしている者もいる。人や獣に近くてもその動きの奇怪さや、姿形が我々の常識からかけ離れすぎた姿を見た者全てがその歪さで恐怖させてしまう。


 そして俺の体にもこれらと共通してる部分がいくつかある。まず血が出ない、ミラーフェイスに体のあちこちに風穴を開けられたが血や体液、内臓などは飛び散らなかった…… 


 内臓が無いぞうってか


 忘れてくれ


 次に傷を負ってもたちまち直ること、俺並みに速く治る魔物は発見されてないがそれはおそらくレベルが低いだけだろう。魔物もどれだけ姿形や行動が奇怪でも内包してるマナは出現エリアのレベルによる。


 最後に俺はここに来てまだ一回も食事を摂っていないということだ。ここに来てから何時間が経った? 例え時間がそんな経っていなくてもあれだけの戦いをしたんだ腹が減っていてもおかしくない。


 だがこの体は何も要求しない。唯一の希望は睡眠をとることぐらいだが眠いから寝るのではなく俺が寝たいから寝てるだけで、もしかしたら生物的な欲求で寝てるわけでは無くて別に寝なくても大丈夫かもしれないが。


 当初はマナによる体の変質が行き過ぎてしまったと思っていたが、本当は魔物に成ってしまったかもしれない。


 鼓動が大きく鳴るのを感じる、臓器が無いので気のせいかもしれないが俺はグッと体の芯に力を籠め大きく息を吸って吐く。頭の中をいったんリセットしその場から逃げるように走り出す。


 最悪を想定しておくのは大事かもしれないが、考えすぎも良くないかもしれない。とにかく! 俺が魔物かそうじゃないかは今は関係ねえ、まだ魔物じゃないうちにさっさとここを出ないと。


 完全に空元気だが今の俺にはこれくらいが丁度いいかもしれない。無駄なことは考えず後でゆっくり考えればいい、問題の先送りだがそれが有効な時もあるそれが今だ。


 走り始めて暫く経つが運よく上に上がる階段を見つけ登ることができた後どのくらい上に行けばいいかわからないが最悪天井を吹き飛ばせばいいと思っている。


 今やらないのはミラーフェイスのような奴らを呼び込みたくないからだ、あれが二体三体と集まってくるだけで悪夢、はっきり言って戦いたくない。


 今まで歩いて探索していたのは奴らの接近に一早く気付くために注意深くマナを探知しながら進んでいたからだ。


 だが、走り始めて気付いたことがある。俺は走りながらサッと後ろを振り返る。


 ()()に追われている……


 目を凝らしてもその姿の輪郭を捉えることはできないが、何というか後ろの闇すべてが追って来てるようなそんな漠然とした感覚が俺を襲う。


 このまま走っていても埒が明かないこの身に迫る恐怖を拭うために意を決して振り返り立ち止まる。そして自分に覆い被さる恐怖を払いのけるために、ありったけの怒りを込め咆哮する。


 これまでの慎重な行動すべてを否定するような行いだがそんなことを考える余裕は無く、ただひたすらこの恐怖から解放されたいその一心から放たれた咆哮は通路の壁はひび割れ自分の周囲を吹き飛ばし爆弾でも降ってきたかのような爆音が鳴り響いた。


 暫くして目の前のマナの不気味に揺らめき始める。


 のそり のそり とゆっくりとこちらに向かって

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