第四十四話 気付くと
逃げなきゃ
とにかく遠くへ
アイツが来る前に、アイツが……
足を動かそうにも足取りが異常に重い。何も無いはずなのに一歩一歩が見えない何かを掻き分けるようだ。
不安が募る。
がむしゃらに何故か見慣れた森を懸命に走る。
森の終わり。先が眩しく照らされている。
あそこまで行ければ、アイツは追ってこれない。直感でそう感じた。
前に中々進まずとも、懸命に走り、ようやく森を抜けた。とてつもない安心感が全身を駆け巡り『逃げ切った』と確信させた。
振り返ると、森の中は暗く完全な闇に覆われていた。だが何も見えないはず闇の中からこちらを覗く存在を確かに感じた。
不気味に思い、目を離さずその森から離れる。
充分離れたがまだ安心できない、意識を逸らさずその森を凝視する。
まだ、まだ、まだ……
すると、ポンポンと何かに肩を叩かれる。自分の進行方向から叩かれたため仲間だと思い振り返るが何もいない。
風が止む。音が無くなる。
再び森の方を見ると、アイツが、そ……
・・・
急に目が覚めた。ゆっくりと瞼を開けるのではなく、例えばスイッチを入れた時のようにサラは目を覚ました。
見慣れない部屋に居ることに混乱し、点滴が見えたにもかかわらずここが病室だと気が付くのに結構時間がかかってしまった。病室だと気付いたが次に頭をよぎったのは、なぜ自分がここに? そう思った時タイミングよく病室の扉が開かれた。
一瞬心臓がドキッと跳ねて無意識に傍に置いてあった槍に手を伸ばそうとしたが入って来たのが見覚えのある人物だったため意識を緩めた。
「目が覚めたんですね! サラセンパイ!」
病室へ入るなりサラに飛びついたのは同じ部隊に所属するイブという女性だ。
色白で身長は180を超えていてデカく金髪激長の腰まで伸びるフワフワツインテールに体型は出るとこは出て、締まるとこは締まったボンッキュッボンのまさに理想の体型、それでいて手足は長くスラっとしているようだが軍人らしくちゃんと鍛えられた筋肉がついている。
その鍛えた腕でサラをがっちりホールドし豊満な胸を息苦しく押し付けてくるため押し退けようとサラがイブの腹部に手をやるとこれまたがっしりとした感触が伝わってくる。
するとサラは違和感を感じる。いつもならマナに物を言わせ無理やり退かすが今回は中々退かせない。
「お・・お、い! いい、加減に・・・しろ」
「あー! センパイ! 息してください!」
「だったら離れろ!」
名残惜しそうにイブはサラから離れ近くにあった椅子に腰かけた。
口では邪険に扱っているが、こうして見舞いに来てくれていることにサラは嬉しく思っていた。そのことを口に出すのは恥ずかしいので言わないが。
「そろそろよろしいかね?」
いつの間にか病室に居た見慣れない人物に身構える。
「そう身構えないでくれたまえ、まずは自己紹介をしよう。私の名はウォルター 異世界管理局の者だ」
紺のスーツを着こなす40代弱の男性、短い無難な髪形と整えられた髭、まさにダンディを擬人化したような人物だ。動作が一々スカしてるのが気に喰わないが。
「サラ・アンダーソンくん、キミにはいくつか聞きたいことがあるのだがその前に言っておくことがある」
何を言われるのか内心ドキドキしながら言葉を待つ。
「任務は無事成功だ。今回のキミの功績によって我がアメリカ、いや! 人類はより大きな一歩を踏み出すことになるだろう。管理局の者を代表してお礼を言うよ、ありがとう」
予想を裏切った言葉に反応が遅れてしまった。
「い、いえ、そんな自分には、えと、もったいないお言葉、で、す」
任務が終わったら上司共をアレしてコレして考えていたが、いざ感謝されると何もできないサラであった。
「そしてここからが重要なんだが、まずはキミに任務で何が起きたかを詳しく説明してもらう前にキミが寝てる間に何が起きたかを説明しよう」
先ほどまでのフレンドリーな雰囲気が消え緊張が走りサラは思わず姿勢を正した。




