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第四十一話 影響

 研究室の一室でコーヒーを飲みながらパソコンを眺める女性が一人。

 周りに自分以外の人は居ないというか自分が許可した者、それか自分より上位の者しかこの研究室には入れないためこうして気兼ねなくコーヒーを飲んでいられる。


 するとドア越しからも分かるくらいバタバタと足音を立て息を切らしながら一人の女性が扉を強く開け入室してくる。


「岡田さん、何呑気にコーヒー飲んでるんですか!? このニュース見て下さい、ほら!?」


 扉を開けた勢いのままに岡田にタブレット端末を突き付ける。


「そんなに慌てなくても、わかってるよ助手君」


 そのままコーヒーを飲みながら目を合わせることなく岡田は返事を返す。まるでそこに載ってるニュースには興味ないと言わんばかりだ。


「いい加減私の事を『助手君』と呼ぶのは止めて下さい!」


 名前をいつまでも呼んでもらえずにぷりぷり怒っているのは立花紗香22歳、淡い茶髪のショートヘアの可愛らしく。性格は良く言えば活発、悪く言えばおっちょこちょいな女性だ。


 大学在学中に岡田と出会い研究を手伝う内に気に入られ、大学を卒業してすぐに国の異世界研究機関に就職し岡田のチームに配属され以来岡田さなえの手足として今日までせっせと働いてるというわけだ。


「相変わらず、怒ると可愛いな」


「茶化さないでください。それより岡田さんコレですよコレ!」


 突き付けたタブレットに映っているのは、つい先程アメリカの異世界研究機関が公開した短い動画だ。


 1週間前、アメリカのとある異世界探査チームがレベル6の探索に成功したと世界中に発表。


 あらゆるメディアがすぐに詳細な情報公開を求めていた。


 だが政府は、情報がまだ整理できておらず全ての情報を公開すると混乱を招く恐れがあるとその詳細を明らかにすることは無かった。


 口では何とでも言えると批判が絶えない中、今日コレが公開された。


 空を飛ぶ黒い影、山の間を横切る巨大な何か、etc…


 異世界という未知の世界が現れて長い月日が経ち、マナやスキルと言ったこちらの世界には存在しない未知の力が発見、研究されるも、年月が経つほど次第にその熱は薄れ、異世界の生物もどこかこちらの世界の物と姿形は似ていてある種の諦めが立ち込めていた。


 そんな中、公開されたこの映像は世界中の人々の諦めを晴らす風となった。


 映像を見た人々の反応は様々で、驚き歓喜する者、作り物だと言う者、何なら似たようなものなら見たことがあると吹聴する者と色々だ。


 岡田の前に鼻息荒くしながら立っている立花もこの映像を見て影響された内の一人だ。


「これ見て何とも思わないんですか!? ドラゴンですよドラゴン! マンガやゲーム、アニメ、映画のフィクションじゃない本物の!!」


「わかった、わかったから少しは落ち着きなさい」


 興奮する立花に後ずさり、手に持ったカップから少しだけ中身が零れ落ちる。


「あ、す、すみません」


「落ち着いたようね。次からは、気を付けてね」


「はい……」


「この件に関してはもうすでに対応してるところだからそんなに焦らないで。それより次の調査の準備を進めておいて」


「はい…… わかりました」


 うつむく姿が可愛らしく思わず抱きしめて許してしまいそうになるがグッと堪えて立花を諭す。


 そんな慌ただしい一日が終わりに近づき、自宅のちょっとお高いマンションに帰宅するとリビングのテーブルの上に見慣れない封筒が置いてある。


 どう見ても怪しさ全開だが、岡田は全く気にする素振り無く封筒を手に取る。


 封筒は若干膨れていて中に紙以外の何かが入っているようだ、差出人などは何処にも書いておらず、裏面に一文『借りは返した』とだけ書かれていた。


 岡田はそっと静かに笑みを浮かべ封筒をテーブルに戻した。

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