第三十三話 日常の変化2
午前の授業が終わって昼食をとってから午後の訓練が始まる。
僕の口から思わずため息がこぼれる。無理もない、朝にあんなことがあってから変に注目されてしまった。それからというもの、見てないのに僕を見ている気がしたり、聞こえても無い陰口が聞こえてきたりと散々だ。
気を取り直して訓練に勤しみたいがうちのクラスは19人。なので二人組を作るとき必ず一人余る。それが意味することは……
はあぁぁ
そもそも今までアイツとしか話して来なかったし、二人組もアイツとしか組んだことが無いから朝の事が有ろうが無かろうが関係ないんだけど。
心臓がグッと掴まれている感覚のまま着替えて訓練場に向かう。途中、姉崎さんにあしらわれた真田を一瞬見かけたが朝の事が嘘のように楽しくカースト上位の連中と話してた。
睨まれたから逆恨みされたかと思ったけど大丈夫そうだ、良かったあ。
僕は内心ホッとしてその場を後にする。
何も、気付かないまま……
全員が集合し現役調査員の指導の下、訓練が始まる。内容は主にマナの操作。そして体を動かすということで、マナを足に纏って走ったり、サンドバッグ殴ったり蹴ったりする。
そして一番重要視されてるのが模擬戦だ。
マナ操作で一番大事なのはどれだけ無駄が無いかだ。
魔獣や魔物との戦闘で一番大事なのは防御することと言われている。防御の方法は単純で攻撃を受ける部位にマナを纏わせる、これだけだ。
だが、マナ操作が雑だと攻撃を受けない部分にまでマナを纏わせたり、何なら全身に纏わせてしまう奴もいる。
レベルが低いと操作できるマナが少なく探索や戦闘の途中にマナ切れを起こしやすいため、出来るだけ生存率を上げるため調査員を育成するにあたりマナを吸収していれば誰でも出来る防御手段から叩き込まれる。
なので訓練の内容は模擬戦の割合がほとんどで今やっているのはウォームアップと変わらない。
しばらく時間が経ったのち教官が生徒たちを集め二人組を作らせる。一人余る、つまり僕が余るのだが安全のため教官は全体に目を光らしてないといけないので余った人とは組んでくれない。
必然的に他の二人組に入れてもらうことになるのだが……
辺りを見回しても誰も見向きもしない、早くどこかに入れてもらわないと教官からどやされて、皆の前で晒上げになる。何とかしないと。
だが僕にはどうしても話しかけることができず、ただ時間だけが過ぎていく。
そんな時、後ろから肩をポンと叩かれたので振り返るとそこにいたのは姉崎さんだった。
「綾瀬今日は、というか今日から模擬戦はあたしと組みな」
「え!? あ、その」
返答に戸惑っていると今まで姉崎さんと組んでいた男子生徒の 林 が思わず声を上げる。
「ちょ、ちょっと待って! 今まで俺と組んでたじゃん、なんで急に綾瀬なんだよ!?」
「あー、ごめんこっちにも色々事情があるからさ今日のところ・・・じゃないこれからは別の人と組んで」
「そんなぁ」
林は一年の時から姉崎さんと組んでいて模擬戦のたびに決まって必ず姉崎さんに壁まで吹き飛ばされている生徒だ。
だけど彼にとって模擬戦は学校全体で見ても数の少ない女子生徒、しかもかなりの美人とのコミュニケーションをとれる場だったのだ。
それを急に、しかも本人の口からこんな堂々と切られてはもう彼のメンタルはズタボロだろう。
だけどそれは他人事ではない、朝の件に合わせて今回の模擬戦パートナー宣言で周りの人たちの僕を見る目の色が明らかに変わっている、
うぅ、吐きそう。
「ちょっと綾瀬? 大丈夫?」
大丈夫じゃねえよ、ストレスで胃に穴が開くよ。
「だ、大丈・・・夫。なんとか」
苦笑いして答えるので精一杯だ。
「ていうか、何で僕なの?」
そう聞き返すと姉崎は小声で
「あたしとあんたはこれから異世界に行く機会が増えるでしょ? だから訓練だって一緒にやってあたしたちの連携を深めた方がいいでしょ」
確かにそうでけど、もっとこう…… やり方は無かったのかなあ。
僕は内心文句を吐いたが口には決して出さなかった。




