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第二十七話 向こうの異変

 あまり使い慣れていない武器の感触を確かめながら姉崎についていく。自分の位置情報を確認する術が無いため、あまり(ゲート)から離れられない。


 いくらマナの溜まってる場所が他に無いとはいえ、2週間で2体しか倒せていないため魔物を待つのはかなり非効率だ。なので手始めに森の中を数十メートル目印を付けながら進み魔物以外の獲物がいないか探す。


 僕は姉崎さんから半ば無理やり渡された合成棍があるけど姉崎さんは何を使うつもりなんだ? いくらスキルがあると言っても素手でやるわけじゃ…… いや姉崎さんなら問題ない、のか?


「えっとー、姉崎さんは何か武器とかあるんですか?」


「ん? 私は()()使うから問題ない」


 そう言って手に巻いてあるバンテージをひらひらと振って見せてくる。


 やっぱ素手なんだ……


 そんなやり取りをしつつ森に足を踏み入れる。地面に飛び出した根っこや生い茂った植物に苔のおかげでかなり歩きにくい。


 移動に苦戦する僕を置いて姉崎さんはどんどん進んでしまう。


「あ、姉崎さん。そんな進んだら危ないよ」


「あんたがとろいだけよ」


 酷過ぎないか流石に。僕があまり強く言えないからって…… 


 僕は何も言わずに姉崎さんについていく。姉崎さんは時折、周りを確認して進んでいきある程度進んだところで直進を止めそこから門を中心に時計回りに森を探索する。


 が、学校では戦闘訓練やマナ操作の訓練が主に行われていて、こういったサバイバルの訓練はあまり行われていない。森には様々な情報が眠っているためそれらを見逃さないように僕も姉崎さんも注意深く歩いてはいるが結果はあまり芳しくない。


 せいぜい近くに何かいないか確認するか、素人でも分かるような痕跡を見つけるかだ。


 30分は歩いただろうか、周囲にそれらしい痕跡は見つからず特に成果は無い。いざ戦う準備をして気負いしていた分これでは肩透かしだ。姉崎さんもなんだか、がっかりしてる感じに見える。


 まあそう簡単に見つかるわけないよな。戦闘は訓練だけで実戦経験なしサバイバルはずぶの素人二人じゃ話にならないよな。


 ていうか姉崎さんはどうして僕の事を手伝ってくれるんだろう? 正直言うと最初、姉崎さんはあいつに助けられたことを忘れていて何とも言えない気持ちだったけど、僕の話を聞いてそのことを思い出してくれただけで充分っていうかなんて言うか。


「あの・・・姉崎さん。どうしてあいつを見つけるのを手伝ってくれるの?」


 そう言って姉崎さんが振り返ると同時にその後ろに人型の何かが視界の端に映る。魔物だ。

 思わず不気味な目と目が合ってしまって背中がぞわぞわする。


「姉崎さん!!」


 僕は柄にもなく叫んだ。普段の僕だったら考えられないが無我夢中で叫んでしまった。それを聞いて一瞬戸惑っていたが姉崎さんも僕の視線の先を見る。


 それと同時に向こうに見えていた魔物も走り出す。


「避けてください!」


 マナを足に集め僕も一気に走り出して姉崎さんの位置にほぼ同時に到達する。僕はその勢いのまま合成棍を横薙ぎに振り抜く。


 姉崎さんも僕の声に反応してその場にしゃがみ込み、振り抜いた合成棍が魔物の上半身に直撃する。2,3メートル吹き飛ばしその場に倒れた。


「ありがと、助かった。あんた以外とやるじゃん」


「いや、急いでて武器にマナを込める暇が無かったから、まだ・・・」


 その直後むくりと起き上がる。だが、さっきの攻撃で体を支える何かを破壊したらしく上半身は後ろに倒れたままだ。


「マ、マジ?」


 流石の姉崎さんもこれにはドン引きだ。魔物は上半身を引き摺りながらこちらに走り込んでくるので武器にマナを込める。


 さっきは吹き飛ばす程度だったが、今度は・・・


「待って、ここは私に任せて」


 身構える僕を手で制し前に出て魔物を待ち構える。魔物はさらにスピードを増し自分の上半身を振り回し姉崎に襲い掛かる。


「舐めんじゃないよ!」


 姉崎はその場から飛び上がって魔物の攻撃を躱し落ちる勢いを乗せ拳を振り下ろす。拳が命中した直後魔物の体が拉げ地面に叩きつけられる。


 土が巻き上がり思わず顔を逸らす。パラパラと土が降りかかる中、地面を見ると魔物は地面にめり込み叩きつけられた衝撃で地面が凹んでいた。


 これが姉崎さんのスキル『剛腕』の威力だ。


 僕のスキルとは大違いの破壊力だ。結構なマナを消費したらしく姉崎さんは息を切らしていたがレベル1でここまで威力が出るのだから破格もいいところだ。


 少し息を整え姉崎が立ち上がる。


「ま、こんなもんね」


「すごいよ! 空からピアノでも落ちて来たのって威力だよ」


「何それ? まあ、あんたも中々やるじゃん。あの時よく動けたわね」


「いやー、ホントに夢中で」


 修羅場という程の事ではないが一緒に困難を乗り越えたことで初めて話した時よりかなり仲良くなった気がする。


 アナログの腕時計で時間を確認すると向こうの時間は午前10時を過ぎたぐらいだ。まだまだ余裕があるので今日はこの調子でこのまま狩りを続けよう。だけどその前にやっぱり聞いておきたい。


「ねえ、姉崎さん」


「ん?」


「姉崎さんはどうして・・・」


 その時、身を震わすとてつもない轟音が鳴り響く。


 何だ今の音は!? お互いに目を合わせ言いようのない不安がお互いに走る。枝の隙間から見える空が先ほどまでとは打って変わって赤く染め上げられていた。


 あまりの出来事に動けないでいたが姉崎さんが僕の腕を引っ張った。


「何ぼさっとしてんの!」


「ごめん」


 2人で門に向かって全力で走り出す。少し明るかった周りがだんだん赤黒くなっていくいつの間にか見える空は全て染まっていた。


 門が見える木の生えていない広場に差し掛かった時、門が激しく歪んでるのが見えた。誰がどう見ても門が閉じてしまうと本能的に理解できた。僕と姉崎さんはなりふり構わず走り姉崎さんは門に飛び込むことができた。

 僕も後に続こうとしたその直後、前から叫び声のような衝撃が僕の体を吹き飛ばす。


 マズい!このままじゃ異世界に取り残される!


 そう思った瞬間、門の先から手が伸び僕の腕を間一髪で掴み門の中の白い空間に引き込んでくれた。


「あ、ありがとう姉崎さん」


「早く立って、ここももう持たない」


 そんなこんなで僕たちは異世界から命からがら元の世界に戻って来たのだ。


 戻ってきて少ししたら門が消えてしまった。一難去ってまた一難、いや百難くらいの出来事に遭遇してしまった。二人そろってビルの一室でぐったりしてる。


 異世界はやっぱり命懸けだ、まあこんな事めったに起こらないと思うが。


「あの、姉崎さん。さっきは助けてくれてありがとう・・・ございます。おかげで取り残されずに済みました」


「さんは要らない」


「え?」


 姉崎さんはぐったりした姿勢でちょっと強く言い返す。


「だからさん付けすんなって言ってんの。で、さっき私に何を言いかけたの?」


「え、えっと、姉崎・・・はどうして僕に協力してくれるの?って」


 姉崎は少し間を置いてから答えた。


「別に・・・借りを返せるなら返したい。そんだけ」


 それから特に会話することなくその日は近くのファミレスで一緒に昼食を済ませてから駅まで歩いて姉崎とはそこで別れた。


 ドッと疲れてその日は帰ってすぐにベッドに横たわった。

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