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第二十六話 向こう側

 学校が再開し今まで通りの生活に戻ってすぐの週末に僕は再びあの工事途中のビルに向かっていた。だが今回は前みたいに一人で来たわけでは無い。待ち合わせの駅前に着いて目的の人物を探す。スマホのメッセージアプリを開いて着いたことと何処にいるかを聞こうとするがそれも杞憂に終わった。


 帽子を深く被りスマホ見るために舌を見ているが、そのオーラと言うか溢れ出る美貌と言うかただならぬ雰囲気が道行く人々の視線を集めていた。

 周りの視線が気になるが深呼吸してから話しかける。


「えっと、お、お待たせしました」


 目的の人物、姉崎茜は目だけでこちらを確認しながら足元の荷物を持ってこちらを向く。


「おう、私も今来たとこ」


 絶対嘘だ。僕も結構早くに着いたつもりだったんだけどな。というか姉崎さんの荷物…… リュックはまだいいとして、あの長い荷物はなんだ? 薙刀でも持ってきたのかな?


「ちょっと待って、あんたその荷物は何?」


「え? 何って食べ物とかサバイバルセットとかだけど・・・」


「いやいや、武器は?」


「一応・・・通販で買ったサバイバルナイフだけど」


 物凄く呆れた表情で姉崎は僕を見てため息をつく。


「あんた、そんなんで自分一人で彼を見つけようとしてたわけ? 頭ン中お花畑かっつうの」


「えぇ・・・」


「まあいいや、さっさと例の場所まで案内して」


 姉崎はそう言って不服そうに歩き出した。


「ちょ、ちょっと待ってよ! 僕が案内するのに先に行くなよな・・・」


「なんか言った?」


 僕は黙って姉崎さんの後ろについてビルに向かう。時刻はまだまだ午前8時、今日は一日を使ってレベルアップを狙っていくつもりだ。

 僕一人では限界というかレベルアップの兆しすら無かったからありがたいっちゃありがたいが、このまま主導権を握られ続けていいものか。


「ねえ、この道真っすぐでいいの?」


「あ、はい・・・そうです」


 暫く無理そうだな。






 ・・・






 10分ほど歩いて目的のビルが見えてくる。大通りから外れた位置にある建物だからかあまり人目を気にせずビルに入ることができた。

 以前訪れた時より少しだけ小さくなっているがこの調子ならあと2週間は開いていてもおかしくない。


「すっげ、ホントにあるし」


 信じてなかったのかよ……


「それで、向こうはどんな感じなの?」


「えっと、周り一面は森だけど門の周囲20mは綺麗に森が消えていて見晴らしが良くなってる感じ」


「なるほどね、門が木々に遮られて離れすぎると門が見えなくなって、あまり離れられないのね」


 そう、それが最大の問題だ。言ってしまえば別の門を探せばいいのだが今回それは一旦置いとくとして、森という地形は結構厄介だ。


 動きにくいし周りも良く見えない。本来ならもっと人や物が必要な場所、てか調査自体がそもそも1人2人でやるようなものじゃない。

 今更だが我ながら無謀すぎるな。


「ま、なるようになるかな・・・ それとこれ、あんたのそのショボいナイフじゃ気休めにもならないからこれ使いな」


 そう言って僕が駅前からずっと気になっていた長い袋からある物を取り出した。


「・・・え!? これって!」


 マナ鉱物合成棍


 異世界で採取された鉱物、つまりマナを吸収した石や金属を細かく砕いてこちら側の素材と混ぜ合わせて作る長い棒だ。


 見た目はただの棒だが、マナを含んでいるため同じ長さと重さの鉄の棒を用意して同じ力、同じ速さ、かつマナを纏ってダミー人形を叩くと、鉄の方は人形が凹んだりするくらいだが、合成棍はなんと人形に喰い込んでしまう。


 マナの有る無しはそれだけの違いが出てしまう。


 この合成棍は学校から卒業まで一人一本支給されるが、支給と言っても持ち帰ったり出来るわけじゃなく学校の専用のロッカーで管理していて使うときに持ち出すといった具合だ。


 だから勝手に持ち出したとなったら大問題だ。


「これ、どうしたの? てかヤバいじゃないの、バレたらどうなるか」


「バレたりなんかしないわ、だってこれ彼に支給された物だから」


 そういうことか! あいつの寮に行った時も寮母さんはあいつの私物やら何やらを誰のものか分からないでいた。姉崎はそれを利用してあいつに支給された合成棍を持ち出して来たのか。


 学校側も当然アイツの事を忘れているから持ち出した合成棍は元々無かったことになるため何も問題が無い…… ハズだ。


「理由はわかったけど、でもなんでそれを僕が使うんですか?」


「私にはスキルがあるからそれで充分よ」


「え、でも姉崎さんはマナコントロールが・・・」


「いいから! ほら、さっさと行くよ」


 そう言って姉崎は門にずかずかと入っていってしまうので僕も慌てて姉崎を追いかける。向こう側の見えない光の中に足を踏み入れる。


 しばらく何もない空間を歩いていくといつの間にか森の中に出ていた。嗅ぎなれない草や土の匂いが鼻を刺激し心臓の鼓動が早くなる。


 一度深呼吸して気持ちを落ち着かせる。


「ちょっと、ボーっとすんなって」


「いや、気持ちを落ち着かせてただけで・・・」


「それよりあんたここで何体くらい倒したの?」


「話聞いてないし・・・ えっと、魔物を二体倒したぐらいかな。あ、そういえば『浮足』持ちの鹿を何回か見たな」


「なるほどね、私たちじゃその魔獣は狙えそうにないわね。となるとやっぱり魔物を重点的狩るしかないわね。それも襲撃型を」


「そう・・・なるね」


 魔物は何処からともなく現れ目に映るものすべてを攻撃する存在だ、だがむやみやたらに襲うわけでは無い。


 魔物にはいくつかの行動パターンがある。代表的なのは二つ、一つは徘徊型。読んで字のごとくエリア内を歩き回り獲物を探す魔物だ。

 もう一つは襲撃型。襲撃型の魔物は湧いた瞬間、あらかじめ目標が決まっているかのように行動する魔物だ。


 襲撃型はどうやって目標を決め、目標の場所を特定しているのかはわかっていないが主にマナの集まる場所を目指しやすいというのはわかっている。


 余談だが協会の調査員は主にこの襲撃型から研究員や拠点を守ることになる。


 このエリアは僕一人でも襲撃型が寄ってくるぐらいマナの集まりが悪い場所だ姉崎さんと二人ならより効率よく魔物を狩ることができるだろう。


 だけど……


 正直怖いんだよなぁ、魔物って。


 心の中で大きくため息をついて体をほぐして準備をする。チラッと姉崎さんの方を見るとさっきより表情が曇っている感じがする。やっぱり姉崎さんもアレとは戦いたくないよな


「何?」


「い、いや、何でもない・・・です」

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