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第二十五話 尋問

 学校の最寄り駅からほど遠くないカフェで適当に選んだ飲み物を飲みながら席で縮こまる。普段ならコンビニ、ファミレスぐらいしか入ったことが無い僕がこんな場所に来ることになるなんて。


 さすがの僕でも普段来ないカフェに入っただけでここまで緊張しない。原因は僕の前に座って甘ったるそうな飲み物を飲んでる彼女のせいだ。


 駅前で僕に唐突に声をかけて来た姉崎さんだ。


 考えても何の要件か見当がつかない。普段、というか今までまともに話したことが無い人だから緊張して顔を上げられない。


 そもそもこんな現場クラスメイトやほかの生徒に見られたら…… 考えただけでも恐ろしい。


 彼女はスキルをうまく扱えず訓練で相方を毎回吹き飛ばして、それはそれは恐れられているが顔やその明るい性格が彼女の人気に拍車をかけている。


 もし姉崎さんと二人っきりでお茶したなんてバレたら僕の明日は来ない。正直もったいないけど背に腹は代えられない。悪いけど適当に話を切り上げて早々に立ち去ろう。


 僕がそう決意した時、沈黙に耐えかねたのか姉崎が口を開いた。


「ねえ」


「は、はい・・・」


「いやだからそんなビビんなって、私あんたになんかした?」


「いや、特には」


 呆れたようにため息をつき、まあいいかと言いつつ話を続ける。


「単刀直入に言うけど、なんか・・・変な感じしない?」


「・・・変?」


「そう、具体的に言うとあの事件が起きてから。なんていうか・・・私の中の記憶とみんなの記憶が同じなんだけど違うような」


 心臓がドクンと鳴る、まさか僕以外でこの違和感に自力で気づく奴がいるなんて思いもしなかった。でもなんで僕に聞くんだ? 姉崎さんくらいの人ならほかにいくらでも相談相手はいると思うけど。


 僕は意を決して聞き返す。


「えっ・・・と、それで、どうして僕にそんなこと聞くの?」


「さあ、なんとなく。目が合ったからかな」


 何だよそれ、思わず口に出してしまいそうな理由に内心むっとしていると窓の外を見ていた姉崎が不意にこちらを見て思わず目が合う。


「ていうか、()()も変なのよねぇ」


 ジロジロと見られ固まる僕はまさに蛇ににらまれた蛙だ。何もできないまま完全に姉崎のペースに飲まれ適当に切り上げて帰るという決意はいつの間にかどこかえ消え去った。


「なんであんたと今まで話したことなかったの?」


「えっと・・・それは僕の性格というか何というか」


「いやそれは知ってけど、あんたの前に変な机が置かれてたけど、あんたの席は本来私の()()()()()だったら私の性格だったら一回くらい話しかけてるはずなのよね」


 なるほど、だから姉崎さんは違和感を感じてるのか。姉崎さんのすぐ左後ろ、僕の一つ前の席は本来彼が使っていた席だ、姉崎さんとあいつは学校でちょくちょく話す仲だったのだろう。


 それがあの事件以降、僕の席順が姉崎さんのすぐ左後ろという認識に変わった。だけど僕とは今まで会話をしたことが無い、だけど自分と席が近い人とは喋ったことがあるはず。


 という矛盾が姉崎さんの中で違和感を生んでいる正体だ。


 どうするべきか、僕は一応彼女の求める答えを持ってはいるがそれを教えるべきか……  正直教えたところで話を信じるかどうか怪しいし、何か余計なことをされても困る。だったら、やっぱりここは適当にごまかすのが無難か。


 しばらく考え込んでいるとまた姉崎が話し始める。


「さっきは何となくって言ったけどそれは半分の理由でもう半分の理由は、あんたの前の席が運ばれていく時のあんたの表情・・・ というか目が、物凄く悲しそうだったから」


 驚きの表情を浮かべ僕は姉崎さんを見た。


「見られてたんだ」


「あんたのあの目を見て私もなんだかものすごく悲しい気持ちになって、それから何か忘れちゃいけない事があったのを思い出したの、でもそれが何か、思い出せない・・・ そんな時あんたを見つけたの、で思ったのこいつなら何か知ってるんじゃないかって」


「き、気のせいじゃないかなあ」


「嘘よ」


 鋭く放たれた言葉に一瞬ドキッとする。


「あんたのあの目、普段のあんたから考えられない感情が籠ってた。話したことなくてもそれくらい見ればわかるくらいにね。何か知ってるんでしょ? お願い、全部教えて!」


 前のめりで話す彼女に思わず身を引こうにも背もたれに邪魔されこれ以上逃げ場がない。どうなのっと言わんばかりにこちらを見つめる、いや睨みつける彼女に観念して僕はあの日起きた事件の事を話した。






 ・・・






「なるほどね」


 少し考え込む姉崎に僕が問いかける。


「えっと、信じる? 僕の話」


「・・・信じるわ、てかあんたの話を聞いてたらだんだん思い出して来た」


 そう言いながら姉崎は頭を押さえる。


「どうしたの?」


「大丈夫。なんか軽く頭痛がして、でももう収まった」


 異変に気づくと異変に書き換えられた記憶と元の記憶が合わさり頭痛がするらしい、僕はそういったことが無かったが最初から気づいてるのと教えてもらう違いだろうか?


 姉崎さんの頭痛も治まってこれ以上何も話すことが無いので僕は席を立とうとする。


「ねえ」


「はい!」


 相変わらず急に話しかけるなあ、呼び止められて返事もしてしまったため僕は再び席に着いた。


「あんたまだ隠してることあるでしょ」


「え?」


「とぼけないで、言ったでしょあんたの目に普段なら考えられない感情が籠ってたって。あれはただ事件の真相を知ってるだけって目じゃない」


 図星を突かれ表情が固まる。


「私は全部知りたいんだけど?」


「知ってどうするんだよ」


 思わず口が動く。今までの口調から考えられない言葉に逆に姉崎の表情が固まる。


「知ったところで、姉崎さんには関係ないでしょ。これで話は終わり、もう僕に関わらないで」


 席を立ちカフェの扉に向かおうとするが姉崎さんの横を通った瞬間、右腕もガシッと掴まれる。


「まだ話は終わってないでしょ」


「いい加減にしないと僕もそろそろ怒るよ!」


「だったら座って早く全部話して」


 イライラした僕が口を開いて何かを言いかけた瞬間、掴まれた腕に痛みが走り開いた口を食いしばる。


「わかった?」


 その場に座り込みうんうん頷いたことでようやく解放された。走って逃げる選択肢も浮かんだが見上げた彼女の表情がその考えをかき消した。


 僕はもう一度席に着き今度は包み隠さずすべてを話した。僕がこれから何をするのかを……






 ・・・






「話は分かった。じゃあ、あんたのやることに私も付き合うわ」


「え?」

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