第二十三話 目的
12時過ぎに家を出て、目的地に向かって歩き出す。住宅街を抜け、寂れた公園の名前のわからない木々を横目に最寄り駅まで歩く。
近くに大学があるためか学生向けに入居者を募集しているアパートが乱立している。車の通りも少ないすれ違うのは年寄りか学生の、のどかな風景がゆっくりと流れていく。
電車に乗り、15分ほど電車に揺られ目的の駅に着く。都会とまではいかないが、人通りや車の量が地元とは段違いに多い町までやって来た。
そこからさらに10分ほど歩くとそれは見えて来た。
5階建てほどの建物で、全体がシートに覆われていて工事途中といったような建物だ。数年前に工事途中のこの建物の中に門が開き一時的に工事を中断していたがそのままになってしまっているらしい。
門の先は何処に繋がっているか分からないが、こちら側に発生する門は多少の誤差は有れど大体同じ場所に発生する。つまり一度門が発生した場所はもう一度発生する確率が高いのだ。
そのこともあってか僕の学校で起きた忌々しき事件、穴型の門が再び発生する可能性があるため2週間も休校中だ。
まあ、僕にとっては好都合と言ったところだが。
僕とあいつとの出会いは調査員育成校の入学初日…… じゃなくて、結構昔まで遡る。
あいつは僕の事を全く覚えていないが、昔僕の近所に元々住んでいて小学校に上がる前に引っ越してしまったのだが、それまでは毎日のように遊んでいた仲だ。
ある日事件が起きる。僕たちがよく遊んでいた公園の近くの林の奥に門が開いたのだ。幼かった僕はそれが何なのかよくわからず興味本位で門の中に入ってしまったんだ。
最初は好奇心でどんどん奥に進んでしまい気付いた時には帰り道がわからず何も考えれなくなってその場から動けなくなってしまった。
ほんとにあの時は怖かった
気付けば周りは薄暗くなって風で蠢く木々のざわめきがさらに不安を駆り立てた。そんな時だった、僕を見つけえてくれたのはあいつだった。
あいつは涙目の僕の手を黙って握って門まで連れて行ってくれた。その背中がテレビや本で見たどんなヒーローよりもカッコよく頼もしく見えた。
僕の中であいつはヒーローであり恩人であり憧れの存在だ。
だからあいつが引っ越してしまった時はそれはもうわんわん泣いたのをいまだに覚えている。それから僕はあまり外で遊ばなくなり、というかあいつがいなくなって僕の心にぽっかりと穴が開いて小学校では友達を一切作らなかった。
そのおかげで中学では誰とも喋らず過ごすことになり今ではこんな立派なコミュ障になってしまった。
とにかく、僕がここに来た理由、それは…… 異世界に行くためだ。
僕が異世界に行く理由は一つ。
僕の唯一の友達を見つけ出すこと。それだけだ
僕のスキルは『リンク』、マナ的な繋がりを誰かと構築して繋いだ対象が近くに居ると自分のマナが上がる。繋げられる対象の数が増えると自分のマナがさらに上がり、レベルが上がると繋げられる対象がさらに増えるというスキルだ。
かなり珍しいスキルではあるがあまり強いスキルではない。が、このスキルには面白い特徴がある。それは繋がった対象が効果範囲にいなくても、マナ的な繋がりを感じとれることだ。
そして僕のスキルの繋がりは未だに解除されてない。
あいつは必ず生きている、異世界で、確実に。
だから僕も異世界に行く。そのために強くなる必要がある。
強くなる方法は一つ、『マナを吸収する』これだけだ。マナを吸収する方法はいくつかあるが代表的なのは異世界に滞在する、魔獣や魔物を倒す。この二つだ。
と言っても一つ目の方法は僕には関係ない。これはレベル0のマナを全く宿していない人限定の話だからだ。
レベル0の人間が異世界にしばらくいるとマナが急速に吸収され短期間でレベル1になることができる。が、レベル1になるとマナが自然には吸収されなくなる。
そのため、すでにレベル1になっている僕には関係が無い。
大事なのは二つ目、魔獣や魔物を倒してマナを吸収する、だがこれには一つ問題がある。門だ
そもそも門が無いと異世界に行けない。世界各地、日本各地で毎日交通事故は起きているが、いざ目の前で起きるか?というものだ。(まあ、二週間前にやばいのが目の前に発生したが)
ともかく、強くなる、レベルアップするには門を見つけないといけない。だけど、町中に発生する門はすぐに協会やそこから権利を買い取った企業がすぐに管理してしまう。
つまり、強くなりたくても門が無い、かつ門を使えない。これが現状だ。
だが、僕にはそれを解決する方法がある。僕のスキルは選んだ対象とマナで繋がりを形成しマナを上昇させるスキルだが、この繋がりを僕は見ることができる。
スキルに意識を集中させると繋がりの線が見える。最初、僕はこの線の先に彼がいると思って線を辿ったが着いたのは自分の家から一番近い門だった。
その門はすでに協会が管理している門だったのだが、線は門の中に入り込んでいたので僕は全速力で走って門に入った。
周りの人たちの制止を振り切って異世界に行っそこに彼はいなかった。
程なくしてすぐに取り押さえられて元の世界に戻されいろいろと取り調べを受け、次の日の朝に家に帰らされた。
それから暫く自室に籠っていたのだが、ふとスキルに意識を集中させると線の向きが変わっていたのだ。妙だと思い僕はこの線をまた辿ってみると、今いるこの建物にたどり着いた。
そして線は虚空を指して途切れていた。それから毎日この場所に足を運び何時間もこの場所でそれを待って。ようやくそれが現れた。
なれた足取りで建物の階段を上がり扉を開けると、そこには天井にギリギリ届かないくらいの門が開いていた。
僕のスキルの繋がりは異世界だと対象の方向指すがこちらの世界だと一番近い門の場所を指す。門の発生の法則や予測は何十年も研究されているが未だに解明されていない。
僕は世界で初めて、唯一門の出現を予測できる人間だ。
僕はこのスキルの彼との繋がりを辿って必ず見つけ出す。
こんな狂った世界の連中はあてにできない。僕一人で見つけ出す。




