第二十一話
何が…… 起きたんだ? 体が思うように動かせない。何かに埋まっているみたいだ何も見えない。口の中がザラザラして気持ち悪いな、うええ。記憶が少し曖昧だ、俺は何をしてたんだっけ…… そうだ!
自分が今まで何をしていたのかを思い出し意識が急速に覚醒する。
早いとこ地面から出よう。
ザバっと勢いよく地面から砂に埋もれた上半身を起こし周りを見渡しその光景に驚愕した。
なんだこりゃ!?
辺り一面真っ白の砂。砂漠のような乾いた砂では無く、何か精気のようなもの抜かれた抜け殻のような砂だ。さらに辺りを見回すと民族少年と戦っていた岩場や周りの森、いくつもあった巨人の屍が見当たらない。
何もかもが砂となって消えていた。あまりの光景に愕然としてると視界の先に薄っすらと見えるものに気付く。
あれは? 遺跡だ! よかったてことはクラゲちゃんたちは無事か。てかよく考えればクラゲちゃんにはスキルがあるから遺跡があろうと無かろうとどっちにしろ大丈夫か。
まだ確証は取れないが自分の中で彼女たちが生きている可能性の割合が高いことが少しだけ気持ちを楽にした。今すぐにでも遺跡に行きクラゲちゃんたちの安否を確認したいがそれよりも重要なことがある。
奴が生きているかどうか、それをすぐに確認しなくては俺に平穏は訪れない。
周りが全て砂になったおかげで歩き出してから数分で奴を見つけることができた。ぐったりとうつ伏せで倒れこむ民族少年を見つけゆっくりと慎重に近づく。
いきなり起き上がり攻撃されるかもしれないからな。
微かに息はしているようだ、あれだけの衝撃を受けてまだ生きているのかと驚愕するがそれはお互い様か、とすぐに気づいて自分とこいつの化け物っぷりに呆れてしまう。
右腕が完全に吹き飛び血がダラダラと流れていて、それ以外にも腹や指などが欠けていて、あちこちがぐちゃぐちゃで出血が止まらない。恐る恐るうつ伏せの民族少年を仰向けに起こす。目がだいぶ虚ろだ、もうこいつの命も持って数分って感じだ。
見るも無残な姿だ。それでも尚虚ろな目でこちらを見てくる。どういう意思が込められているか俺には分からないが。
うっ…… そんな目で見て来ても、こうなったのはお前のせいだろ! 俺は戦う気なんて無かったんだし……
動機はどうあれ自分がやったことには変わりないため、少年の無残な姿に罪悪感に押しつぶされそうになる。
いや俺は悪くない、悪くない………… ああ!もう!!
自分のこんな性格と、こんな性格だからこそ何もしないで見捨てる自分にむかっ腹が立って仕方がない。
つってもどうすればいいんだ? 俺に治すスキルは無い、今からクラゲちゃんを連れてきても間に合うか分からない。
どうすれば、どうすればこいつを助けられるんだ!
いや、落ち着け。焦っても何ができるわけじゃない、今俺に何ができるか考えるんだ。
と言っても俺が使えるスキルは思考を誘導する暗示スキルにマナを使って体から思い浮かべたものを生やす生成スキルの二つだけ、どうすれば…… いや待て、もしかしたら!
天啓ともいえる一瞬の閃きが俺の体を動かした。
まず生成スキルで民族少年の左腕を鏡写しにした腕、つまりこいつの右腕を生成し俺の体から引き抜く。引き抜いた腕を民族少年の右肩付近に近づけ、さらに腕に暗示をかける。
暗示スキルは生物に対しては思考誘導程度だが、物に対しては制限が無い。そこら辺の石ころもこのスキルを使えば鳥にもなる。
腕にかけた暗示は「少年の右腕となれ」結構アバウトだが俺の想定通り作り出した腕が動き始めた。暗示をかけられた右腕が少年の右肩にまとわりつき元々少年の右腕だったかのように馴染んだ。
そして真っ黒だった腕に少年の肩から血管が伸びそのまま腕の先まで伸びていく。俺が作り出した腕の血管は金色をしていて真っ黒い腕に金色の血管で結構かっこいい。
俺は右腕の要領で少年の吹き飛んだ脇腹や指、内臓などを生成し暗示をかけ少年の体を治す。
そのおかげでだいぶ少年の体を治せた、褐色の肌に所々真っ黒な場所があるがそこら辺は勘弁してほしい。
だがこれではまだ助かったとは言えない。こいつは体以上に血液を消費し過ぎている、じゃあどうするか? 同じだ。
俺は体から液体を生成する。真っ黒に光を完全に吸収する黒い液体を作りこの液体に少年の血液になるよう暗示をかけ、少年にあえて残した傷口から流し込む。
体は直した、血液も補充した、ぐちゃぐちゃの内臓も元に戻した。これだけ手を尽くしたのに死なれたら、俺の場合しょうがないと思えず後味の悪い何とも言えない感覚だけが残るだろう。
だから、この後どうなるか分からないがとにかく起き上がってほしい。
俺は黙って少年をじっと見つめていた。
少年の虚ろな目がどんどん薄れていく。もうダメか、そう思ったときゾクっとするようなマナの鼓動を感じる。紛れもない仰向けで倒れ伏している少年から発せられたものだ。
ゆっくりと少年は体を起こし、意識が朦朧としているのか少しボーっとしている。そんな少年を見ていると不意にこちらを見つめ目が合う。
咄嗟に目が合ったため俺は動けないでいた、が少年も動かないでいた。
お互い何もしない時間が流れる。
なんだこの時間は? 何をすればいいんだ? いや何もしない方がいいのか?
俺があたふたしていると少年がこちらに近づき、何をするかと思えば少年は俺に跪いた。
え? え?
俺は何が起きているのか、未だに理解できない。なぜの後になぜが俺の思考に押し寄せる。
そして俺は考えるのをやめた。
とにかくこれ以上戦いにならなそうなので、俺は若干後ろを気にしながら遺跡の方に戻り始めた。
が、やはりと言うべきか後ろをぴったりついてくる。別に何をしてくるわけでは無いのでいいのだが、いつまたあの攻撃を仕掛けてくるか気が気じゃないため心が一切休まらない。
そんなこんなで若干緊張しながら遺跡に戻ると、クラゲちゃんとその手の中にピーちゃんが遺跡の屋上で待っていた。
これだけの規模のもはや天変地異とも言える現象が起きた後だったため、もしかしたらと思っていたがクラゲちゃんたちの元気な姿を見れて結構安堵してる。
ふと後ろについてくる民族少年が何かしでかすかと思ったが大人しくしている。
助けといてなんだが、マジでこいつなんなん
まあ、何はともあれ一段落ついたって感じだ。改めて長かったな、ここまで。だけどようやくスタートラインに立ったって感じだな。
これでようやく、俺の目的のために動き出せる……
今回で一章が終わった感じなんですが、正直2,3話書いて飽きるだろうと思ってたんですけど、感想とかブックマークとかポイントとかでこの寝る前に適当に思いついた作品が少しでも評価されてなんやかんや続けられました。本当にありがとうございます。




