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第二十話

 赤い閃光が空を埋め尽くし昼なのか夕方なのか区別がつかない。彼方の空から絶望が赤い星となって徐々に音を立てながら迫ってくる。今まさにここに骸を晒した者たちと同じ運命を辿ろうとしていた。


 どうする? もう奴が目視できる距離まで迫ってきている! 今から逃げるか……? いや無理だ、奴の攻撃は半径数百キロにも及ぶクレーターを作り出す規模だ。逃げ切れるというかこれだけ強力な攻撃に俺の体が耐えられるか分からない。


 俺がどうにかするしかない、だがどうすればいいか分からない。開き直って玉砕覚悟で思いっ切り突っ込むか? ダメだここで焦って動いては意味が無い。考えろ、考えるんだ。


 奴の攻撃はおそらく、いや確実にスキルによるものだ。この規模の攻撃をマナを纏っただけで繰り出せるはずがない。てかそうであってくれ。


 スキルにはスキルで対抗しないと…… 決まった。多分、これしかない。


 俺はマナを纏い身体能力を大幅に強化する。

 このマナ操作はすべてのマナを操れるわけでは無い。どれだけ巧みに操作しても自身に纏えるマナには限度があるため纏いきれなかったマナは行き場を無くしまた体内に戻ってしまう。まあ、それでもこの体は桁外れの身体能力なんだが。


 俺は最大限、身体能力を強化したのち、この行き場のない膨大なマナを操りスキルを起動する。まだこのスキルに名称を付けてなかったが、まあ名付けるなら生成スキルとでも言うのか。


 生成スキルを使い自分の内に眠るすべてのマナを使い奴と同じようにこちらも一本の槍を作る。ズズズっと生成した槍を刀を鞘から抜くように背中から引き抜く。

 今まで作り出した腕は自分と同じ腕を想像して作ったからか、強度は元の腕と変わらないし力もそこまで変わらない。

 だが、これから作る物に自分のマナすべてを使ったら。


 俺にも攻撃スキルがあれば今の状況ももう少し楽だったかもしれないが、文句を言っても仕方ない。これが俺がなけなしの頭を使って考えた作戦だ。


 作戦の内容は単純だ、ありったけのマナを使ってスキルで槍を作りそれを思いっ切り奴にぶん投げる。以上。


 上手くいくかは不安だが自分が作り出した槍を見てなんだかいけそうな気がしてきた。作り出した槍は俺の残りのマナすべてを使ったためか不気味なオーラを発している。


 飾り気は無く先が尖っただけの鋭い槍、見た目だけならデカい爪楊枝だ。光を全く反射しないすべてを吸収するどす黒い色。数センチ、槍の輪郭に合わせ空間が引き込まれるように歪んでいる。


 マナには重さがあるのか? という議論が世界中で行われていたが。この槍を見せればその議論も終わりそうだ。


 さあ、そろそろ時間も無くなってきた。


 槍を構え狙いを定める。そして全身の力をフルに使い渾身の力を籠め黒い槍を星に向かってぶん投げる。


 星を貫く願いを込め。






 ・・・






 その日、人類の約40年に及ぶ異世界調査史上、初めての現象が観測される。異世界の特定の地域だけで観測されたわけでは無い。異世界のあらゆる場所、あらゆる国の調査機関が同時にそれを観測した。


 地平の彼方、はるか遠くの空が赤く染め上がり、それが徐々に広がってくる。


「岡田さん!」


 焦りのこもった声で呼びかけられたこの女性もその現象を自分の目で観測した一人だ。


「すぐに避難しよう、全員!(ゲート)まで退避!」


 岡田と呼ばれたこの女性、本名は岡田さなえ、年齢は35歳、垂れ目とそばかす、それに赤毛の長いポニーテイルが特徴の眼鏡をかけた背の高い女性だ。

 研究員の中では変わり者と言われ危険なエリアへの調査も自ら先陣を切って何度も調査に赴き、何度も死にかけたことで有名だ。


 だが、何度も死にかけたことにより高いマナを宿しており今ではレベル3に限りなく近いレベル2となっており日本の調査員全体で上から数えれる程の屈指の強さとなっている。


 普段の彼女を知る者からすると、この即座の撤退の指示は意外だった。危険な場所にも嬉々として足を運ぶ彼女の性格を考えると今回もこの謎の現象を観察するために異世界に留まると思い、それに付き合わされないために今回の調査に同伴しているチームの調査員たちは急いで帰ることを進言するつもりだったが杞憂に終わった。


 岡田たちは調査を中断し急いで撤収し始める。

 時間がどれくらい残っているか分からないため嵩張る機器はすべて置いていくしかない。すこし惜しい気もするがこの赤い空を見てから胸騒ぎが止まらない。


 門に急いで向かっている中、岡田は今起きている異変について考えていた。


 思い出してみれば調査中、異変は感じていた。異変を感じたのは火爪と呼ばれる虎の魔獣を観察している時だった。


 レベル1のエリアで出産間近の火爪の個体とその住処を一週間前に発見したため、火爪の生態調査のため丸一日かけ門から約20キロ離れた地点の火爪の縄張りの外にベースキャンプを設営しそこを拠点に調査を行っていた。


 虎の縄張りは本来かなり広いのだが異世界は生物的な差よりもマナの量やスキルが重視されるためいくら虎と言っても周りにライバルが多く縄張りはそこまで大きくない。


 それにこちらには私を含めレベル2がほとんど、レベル1の火爪はこちらから刺激しなければ仕掛けてはこないだろう。

 今回同伴してるメンバーに目に映る魔獣全てを己の糧にしようとする野蛮人もいないことだしそこら辺は安心だ。


 そして調査から一週間たった今日の午前10時ごろ、ようやく火爪の出産を見ることができた。


「うわぁ、赤ちゃん小っちゃくてかわいいですね!」

「そうね確かに可愛いけど、気を抜かないように」


 今回の調査に同行している助手が興奮して話しかけてくる。レベル1にも満たないが今回調査するエリアがレベル1のため経験を積ませるため今回の調査に同行させた。


 軽く注意するが、その気持ちもわからないわけでは無い。誰も解き明かしてない未知の世界に来ているのだからこの世界で体験するすべての事が面白くて仕方ないのだろう。


 暫く火爪の親子を観察して、そろそろベースキャンプに一旦撤収する準備をしている時だった。出産したばかりのメスの火爪が何かを感じ取ったのか一点を見つめ固まっている。


「どうしたんでしょうか?」

「わからない、作業は一旦止めて火爪の観察を続けましょう」


 しばらくすると興奮した様子でオスの火爪が巣に戻って来た。戻ってきてすぐメスや子供たちを匿うように体を寄せる。そしてメスの火爪と同じ方向を見ている。


(いったい、その先に何があるというの?)


 火爪の不安な様子がこちらにも伝わり、それが徐々に伝播する。助手も不安な様子で双眼鏡を覗いている。


 周辺の調査を行っていた隊員の一人が戻る。


「岡田教授、お伝えしたいことが」

「どうかした?」

「この近辺に生息していた魔獣たちが軒並み、それも何かに怯えるように巣に閉じこもっているようです」


 本来昼行性の魔獣すら怯えて巣から動かない。明らかに異常事態だ。

 今までなら未知の事を目の前にしたとき、自分を抑えきれずに行動に移してしまうのだが、今は……


 そして次の瞬間、魔獣たちが見つめる方向から自分の体が跳ね上がるような轟音が鳴り響く、そしてしばらくしてから彼方の空が赤く光り徐々に空全体を染め上げる。


 逃げなくては、手遅れになる前に!

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