第13話 JulyFestival〈現地編 ニ〉
ほんとはJulyFestivalはただ楽しくするはずだったのに、ストーリーの都合上ちょっと怖くなってしまいました。申し訳ございません。
鉄のパイプと、大きなあざ。
怖い。その場から逃げたくなるような怖さだった。
なんせ、人が首をやられているのだ。
俺らは、水槽に夢中で事件がどのように起きたのか分からなかった。
ないている子供から話を聞くと、倒れているのは父で、後ろから急にやられたのだと言う。
犯人は黒い髪の身長の高い男で、マスクにサングラスをしていたとのことだ。
俺はすぐに近づき、心臓の状態を確かめる。
心臓は動いていない。
「今すぐ救急車を誰か呼んでください!!」
メラがそう言う。
メラは必死に心臓マッサージをしていた。
突然のことに驚いていたが、自分たちにも何かできることがあるはずだ。
「誰か蘇生ができるGIFTの人はいますか!?」
もともとこの現場にいた日本人らしき人が言う。
いないようである。この世界にAEDなるものはあるのだろうか。きっとあるのだろうが、AEDを探して!と、言うほどの自信もない。
俺にできることは……いつもダメダメな俺では見当もつかない。その間に事態はどんどん進んでいく。
俺が無駄に思える事を考えているうちに、ふと思いついた事があった。
それは、レオンのGIFT、つまり電気によってAEDと同じようなことができるのではないかということだ。
電気ショック。それがこの世界にあるのかは知らない。
だが、誰もAEDを求めていないことから、きっとないのであろうと思った。
やってみる価値はある。この世界の人が電気ショックを知らず、「変なことをするな」という可能性は否定できない。
だが「私の父は医者で、一度母が倒れた時に電気を流していた。」と、嘘をつけばよい。後で俺が言われる分には良いのだ。
思いついたら即実行!
俺はすぐやることにした。
「レオン、あの倒れている人の心臓に電気を流せるか?」
「ああ、できるが…なぜだ?」
「俺の母が倒れた時に父が電気を流していた。」
「なるほどな。だけどお前の母も父も、いないんじゃないのか?」
「俺がすごく小さい頃だからまだいたんだ。」
「わかった。やってみよう。」
ーーーーー
「みなさん、近づかないでください!!」
「やるぞ。ラウス。」
「うん!いいよ!」
「…放電!!!」
バチッ!!と、地面に電流が流れた。気がした。
最初はレオンも少々怖がっていたが、何かを感じたのか、強く放電し始めていた。
それを感じられるくらい、強かったのである。
「ラウス、お前もしか………」
「ラウス、心臓が動き始めたぞ。」
メラが何かをしゃべろうとしていたのだが、さえぎられてしまった。まあ、仕方がない。
しかし、上手くいくもんだな。あと、何でレオンはあんなに冷静でいられるのであろうか。
そこへやっと、救急車が到着。
救急車が来るまで約10分。
俺たちの奮闘は厄災と希望の始まりとして後世に受け継がれていくのであるが…そんなことはまだ誰も知らない。