第9話:「“これって恋?”って聞いたら、“もう答え知ってるでしょ”って返された話」
日曜の昼。今日はルナと駅前の商店街で待ち合わせをしている。
私は、約束の時間より3分早く着いた。
これは偶然ではない。計算の産物である。
というのも、遅れるのは恥ずかしいし、ピッタリだと楽しみにしてたって思われそうで、それはそれで照れくさい。
だから3分前。ギリギリ“自然に見える意識”のライン。
……だが。
「おはよう、ほのか」
「うわっ、もういる!!」
白鷺ルナ。すでに立ってた。髪も服も、昨日より少し柔らかめのスタイル。
なんか……かわいい。
いや違う、いつもかわいいけど、今日はなんかこう、やわらかくて、近い。
待ち合わせた私たちは、商店街にある雑貨屋をのぞいた。
「これ、かわいくない?」
白鷺ルナが指さしたのは、ペアになったぬいぐるみ。
ウサギとネコが寄り添って並んでる。
「名前が『ぴったりふたり』って書いてあるのがちょっと引っかかる……」
「でも、なんか私たちに似てない?」
「……そういうこと言うな!!バグる!!思考が!!」
雑貨屋を出ると、なんとなくそのまま川沿いを歩いた。
ルナはいつも通り静かに、でもたまにこっちを見ては少しだけ笑う。
風が少し強く吹いて、ルナの髪がなびいた瞬間、私はふと口を開いた。
「……ねぇ」
「うん?」
「……私たちって、さ。こうしてるの、なんなんだろうね」
ルナはちょっとだけ立ち止まって、私の顔を見た。
「どういう意味?」
「なんというか……その、これって、友達……なのかなっていうか、いや、別にそれ以外って決めつけてるわけじゃないけど……」
言ってることが自分でも支離滅裂だと思った。
でも、止められなかった。
「私、ルナのこと……なんか、こう、普通じゃないなって思ってて、最近とくに変で、心臓とか顔とか色々うるさくて……」
ルナは何も言わずに、でも、目だけはじっとこっちを見ていた。
「……たぶん」
「うん」
「たぶんだけど、好き……だと思う」
言葉にしてから、無性に照れくさくなって視線を逸らした。
ルナは、それでもふっと小さく笑って――
すぐに、いつものように私の手を取った。
「ねぇ、ほのか」
「な、なに」
「“思う”って言ったけど……たぶんじゃなくて、けっこう確信あるでしょ?」
「う、うるさいな!!言わせんな!!まだそこまでは……わかんないし!!」
> 【通知】
自覚進行率:99.9%
“確信”までは、あと少し。
でも、手は自然に繋いでた。
引っ張るでもなく、握りしめるでもなく、ただ――当たり前のように。
私はまだ、恋ってものをよく知らない。
でも、ルナの手が温かいってことだけは、ちゃんとわかってる。




