第5話:「友情ルートを選んだのに、なぜか親密度MAXってバグってない!?」
朝。
昇降口で靴を履き替えようとしゃがんだら、ローファーの中に何か入ってた。
「え、なんか……紙?」
出てきたのは、ピンクの紙で縁取りされた豪華なカード。
>【おはよう手つなぎイベント(朝限定)】
発動条件:白鷺ルナと目が合ってから3秒以内
選択肢が出る前に手を繋がれます。
発動まであと:1秒
「今かよぉぉぉぉぉ!!!!」
振り向いた瞬間、ルナがぬるっと私の手を取っていた。
「おはよう、ほのか」
「こら待てえええええ!!この強制発動仕様いつ実装したの!?アップデート告知して!!」
「日替わりで新イベント挟まないと飽きられるから」
「誰に!?!?プレイヤーいないって言ってたよね!!?」
教室に戻ると、机の上にはバレンタインでもないのにハート型の飴と、メモ。
【親密度ボーナス:現在80%】
※100%で“特別スチルイベント”が解放されます
「やめてぇぇぇぇ!!なんか勝手にゲージ溜まってるんだけど!!」
「友情ルートでもMAX行く仕様だから」
「なんで!?友情ってそんな重たいものだっけ!?」
昼休み。
私は、保健室に避難した。昨日と同じ展開だが、今日は昼寝で逃げる戦法だ。
が――
「……ほのか、ここにいたのね」
入ってきたルナは、静かにドアを閉め、カーテンをスッと引いて私のベッドのそばに立った。
「ルナ、お願いだから今だけはイベント抜きで……」
ルナは黙って私の手を取った。
「じゃあ、友情スチルだけで許してあげる」
【友情スチル(密着型)を獲得しました!】
白鷺ルナは静かにあなたの隣に座った。
心拍数が少し上がった。
友情とは、時に恋より甘い。
「やめて!!そういうナレーション入れるの禁止!!」
「ほのか、顔真っ赤よ」
「これは……照れとかじゃなくてもう……敗北……」
帰り道。
私は小さな決意を胸に、ルナに言った。
「……あのさ」
「うん?」
「私、ほんとに“友情ルート”でいたいの。恋愛とかじゃなくて、普通の、友達としてさ……」
ルナは少しだけ沈黙して、でも、にこっと笑って言った。
「じゃあ、その友情がどこまで深くなるのか、試してみましょう?」
「言い方ァァァァァァ!!!!」
この物語は、友情ルートを選んだはずの私が、
どこまでも深く、そしてなぜか“甘く”なっていく友情に巻き込まれていく話である。