第10話:「“好き”って言ったら、“待ってた”って笑われたんだけどもうだめです好きです」
最後の時限のチャイムが鳴って、いつものように席を立とうとして――
私は、気づいてしまった。
「あ、今日、ルナと帰るって約束してない」
それなのに、教室の前の廊下には、制服を着た銀色の影が立っていて、
まるで私が来るのを当然のように待っている。
「……いるんだよなぁ。やっぱりいるんだよなぁこの人……」
「帰ろう?」
何気ないその一言が、喉の奥をくすぐる。
ルナは毎日、こうして「ふつう」に隣にいる。
だけど、私は昨日“好き”って思ってしまった人間で、 今それを言うのか言わないのか――その瀬戸際にいる。
帰り道。歩道橋の上。今日は珍しく、人通りが少なかった。
ふたりで並んで歩く音だけが、カツカツと響いてる。
私は言おうか、言わないか、そればかりを考えていた。
ずっと考えてて、結局喉まで出かけた「すき」の言葉を、3回くらい飲み込んでる。
「ねぇ、ほのか」
不意に、ルナが口を開いた。
「昨日の……“たぶん好きだと思う”ってやつ、すごくかわいかった」
「な、なんでそれを今……!?!」
「今思い出したから」
「思い出しキュン禁止だよ!?何その無自覚殺し!」
でも、私はそこで、ようやく決意した。
喉元で止まってた言葉を、ちゃんと、ちゃんと出す。
「……ねえ、ルナ」
「うん?」
「私――好き」
風が止まったみたいに、空気が静かになった。
ルナは目をまっすぐ見て、ゆっくり、
とても静かに笑った。
「……待ってた。」
その一言が、もう、どうしようもなくて。
涙とかじゃないけど、体の奥がぶわって温かくなる感じで。
私、今、やっとちゃんと“恋”ってやつを踏み込んだ気がした。
「……あーもう、ほんとに、ほんとに好きだわ私……」
「ふふ、私も、何度も言ってるけど、好きよ」
「言ってないときも多かったよ!?なんか攻めるだけ攻めて満足してたよね!?!?」
「それも、ほのかが可愛いからよ?」
「やばい、ほんとにこの人、全然勝てる気しない……」
駅前。人通りの増えた街中。
でも、ルナは気にせず手を繋いできた。
以前と同じはずの手の温度なのに――
今日のそれは、「恋人としての」手のひらだった。
> 【通知】
ルート進行度:恋人ルート・3%
次のイベント:「秘密のお泊まり会」/「初めてのデートプランづくり」/「キス未遂事件」
※ルートが確定しました。
私は、白鷺ルナと恋を始めた。
きっと面倒で、混乱して、甘すぎて、笑っちゃうくらい真っすぐで――
そんな毎日が、これから始まる気がした。




