あとがきに代えて
◆友情に甘え
四話完結の短編である。登場人物は実在し、ヘビやムカデなど作中の生物らも当地に棲息する。
棟梁こと西山周司は筆者の幼馴染みで、幼稚園から中学まで、同窓だった。筆者がUターンするに際して、自宅兼治療院の建設を初めとして親身になって世話してもらった。
そればかりか、拙著『過疎化バスターズ』(Amazonペーパーバック・電子書籍 二〇二三年六月)にも友情出演している。
消滅集落再生のために住宅を建設したり、限界集落活性化をめざして学校をリフォームする建築士の役である。主役の動物たちに負けず劣らず、ユニークな個性で異彩を放っている。
ベテランの彼にも、動物の棲み家や学校の建築を請け負うのは、初めての経験だったはずだ。苦労をかけてしまった。
◆天文学論争
今作の執筆を進めていて、長年の謎が一つ解けた。
これまた拙著『村の少年探偵・隆』(Amazonペーパーバック・電子書籍 二〇二四年四月)に以下のくだりがある。
☆
小学校の低学年の頃、同級生と青空を眺めていた。昼間の月が出ていた。
「あれはどれくらいの大きさやろ?」
一人が言った。
隆には幼稚な質問に思えた。
「ここから池田くらいの大きさはあるで」
隆は分かりやすく説明してやった。
ところが、もう一人が目を見開いた。
「そんなには大きゅうないで」
隆は少しムキになった。
「ほな、どれくらいあるんや!」
相手は中空に手で輪を作り
「これくらいかなあ」
と、自信なさそうだった。
よその村の子供たちだった。
「隆は大げさなこと言うやつじゃ」
その村では、そんな評判が立っている気がしてならなかった。
☆
これも実話である。
少年探偵・隆とは筆者にほかならない。村に起こる難事件・珍事件の数々を見事に解決していく。
◆ワンピース
筆者にとっては、大事の前の小事。誰が論争相手だったかは、思い出せずにいた。
考えてみるまでもなく、あんな天文学論争ができるのは西山しかいなかった。うかつの極みである。
これでジグソーパズルが一枚、完成した。
先日、棟梁が寄ってくれた。久々に仲間内で集まろう、という話になった。大々的に呼びかけても、諸般の事情で出席者は限られている。それに、鬼籍に入る者も増えた。
あとワンピースを残すだけのもあるのに、歳月は人を隔てる。
[注]『過疎化バスターズ』『村の少年探偵・隆』の概要は My本棚 https://ncode.syosetu.com/n5587kb/ で