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第4話 終わり良ければ

「それはそうと、年内に入れるの?」

 それが、最大の問題だった。

「無理やなあ」

 棟梁はあくまでも、冷静かつ客観的だった。

        ☆

 翌年の遅くない時期に完成はするだろう。しかし、一年近く、妻と娘は狭いアパートで、ムカデやゴキブリ、天井裏のネズミ、それを付け狙う青大将らと生活を共にしてきた。


 往診の帰り、酒屋の女主人が大きなヘビを見た、と顔をしかめていた。

 よそ事と思っていたところ、娘から「私の足の太さくらいあるヘビが床下に入って行った」と報告があった。


 ヘビなどは見なかったことにすればよい。ムカデの場合は大小にかかわらず、実害を及ぼすから厄介だ。

 アパートで寝ていて、足の裏がくすぐったいので片方の足で払ったところ、激痛が頭のてっぺんまで走った。見ると、小さなムカデだった。

        ☆

「正月は新居で迎えたかったなあ」

 私がため息をついていると、棟梁は「よっしゃ」と何か決断した様子だった。


 悲願がかない、暖房もない新居で震えながら、一家は新年を迎えることができた。もっとも、年が明け、妻と娘はアパートに寝に帰ったが。

         ☆

 不思議な宇宙空間に移り住んで三年。埼玉の方に区切りが付き、私は完全に徳島県人に戻った。

 遠距離通勤がこたえたのか、目の症状が進んだ。盲導犬を申請し、翌年六月、大阪の盲導犬訓練所で宿泊訓練に入った。

 毎朝、相棒にトイレをさせた後、台に上げてブラッシングをする。日課なので、ブラッシングの台はしっかりしたものが欲しかった。


 写メを棟梁に送っておいたところ、訓練所から帰るとすぐ、やってきた。盲導犬の体長を測り、次回には立派な台を設置してくれた。

 やはり、棟梁の仕事だった。意表を突いた。一枚の厚い板と二本の角材を使い、蝶番ちょうつがいで折り畳み式のブラッシング台を造っていた。無駄がない。文句のつけようがなかった。


 値段をたずねると

「ええよ。また寄るわ」

 棟梁は軽トラに道具を積み込み、山の家に帰って行った。

          ☆

 その後、モノづくりを教える学校を始め、忙しいのか我が家には顔を見せていない。

 農夫が季節の野菜を届けてくれるたびに、棟梁の消息を訊く。農夫も最近、会ってないみたいだ。

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