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神楽坂弥生の覚醒

 アリッサは持ち前の物怖じしないコミュ力で早速歴史部のメンバーと仲良くなった。

 その日は宇宙そらが何か用事があるとかで部活を休んでいて、部室にいるのはアリッサを含めた女性四人だ。部活といっても例によって特になにをするでもなく、ガールズトークに花を咲かせていた。

 自ずと、話題が、今ここにいない喜屋武宇宙きゃんそらのことになった。


 河川敷でピンチを助けられた落合恵おちあいめぐが興奮気味にその日の彼のことを語り始めた。

「あの時の喜屋武きゃん先輩、かっこよかったなー。決めた! 私の初めては喜屋武きゃん先輩に貰ってもらおうっと」

 と、これはもう完全に過激に恋する乙女モードだ。


「先輩方は、応援してくれますか?」


「実は、私も、喜屋武きゃんくんのこと、とっても気になっています」とアリッサ。

「えー、アリッサさんがそのダイナマイトボディで迫ったら、私なんて全く勝ち目がないじゃないですかー、でも、負けない、私だって、身体を張って頑張りますよ!」


 部室でみだらな行為に走られても困るので、普通であれば部長として心配するところだが、宇宙そらくんの場合はその心配はない。

「残念でした。宇宙そらくんはあるべきものがないから、メグちゃん、あなたの期待に副うことはできないわよ」とは、もちろん言わずにおいた。


 それよりも、気になるのは神楽坂弥生かぐらざかやよいだ。

 私は、彼女が私の方を見て何か話したそうにしているのに気がついた。


「今日は、これくらいにして帰りましょう」

 部活を早めにお開きにしすると、私は彼女とスマホでメッセージをやり取りして、駅近くのファーストフード店で落ち合った。


「こんな話、いきなり聞かされて、絶対に信じられないと思うけど」と前置きして、彼女は語り始めた。

 彼女の実家は稲荷神社である。お稲荷様では狐は神の使いだ。その白狐が、夢に現れて彼女に告げたそうだ。

 「他の星の生命体が潜入している。力を授けるので撃退せよ」と。


「翌朝、目覚めると、私の身体に不思議な力が宿っているのを実感したの」と彼女。


「不思議な力って、具体的にどんなことができるの?」

「普段は何もできないんだけど、いざという時になると発動するの。昨日もね…」


 帰宅途中に柄の悪そうな高校生に囲まれ、河川敷に連れ込まれたそうだ。

 おそらくは落合恵を誘い出した連中だろう。懲りずに今度は神楽坂弥生を拉致しようとしたようだ。


 そこで彼女の力が発動した。なんでも河川敷に転がっていた石をミサイルのように彼らに向けて発射して撃退したそうだ。


「昨日の相手は異星人じゃなくて、ただのチンピラ高校生だと思う。でも自分に魔法少女のような力が備わったことは確かみたい」


「こんな話、いきなり聞かされて、でも、私、何となく、姫乃ひめの喜屋武きゃんくんなら、もしかしたらわかってくれるんじゃないかと思ったの」


 分かります、分かりますよ、彼女の話はおそらく真実だろう。


弥生やよい、私はあなたを信じるわ」と言うと、彼女は喜色満面で私の手を握った。


「地球の侵略を目論む悪い宇宙人が現れたら、私がこの魔法を使って撃退するので、何かあったら何でも相談してね」


 宇宙人の中から悪い宇宙人のみを判別して撃退するのか、それとも宇宙人は悪い奴という前提で、無差別に撃退の対象とするのか、文脈からは定かではないが、これでは、宇宙そらくんのことを軽はずみに打ち明けるわけにはいかない。


 やれやれ、宇宙人が生成したヒューマノイドに、未来人に、魔法少女か。

 いよいよ我が歴史部に役者が揃っちゃった感があるのだけど、はてさて、これからどういうことになってしまうのだろうか。





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