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未来から来た金髪美女

 その翌週、またしても、我が風華学園高等部二年三組に転校生がやって来た。それも、不自然という意味では沖縄出身の美少年のはるか上を行く、米国出身の金髪美少女だった。

 

 担任の安田に伴われて教室に姿を現した彼女は、身長は170センチほど、スレンダーな体型ながら、胸は制服のシャツがはちきれんばかりに盛り上がっていた。当然男子生徒は大いに沸き立った。


 彼女は、自分の名前をカタカナで黒板に書くと、流ちょうな日本語で自己紹介をした。

「ロサンゼルスから日本に引っ越してきたアリッサ・セントメリーよ。よろしくね」


 五月も終わろうとするこの時期に、偏差値で言えば中の上くらいの私立の中高一貫校に、それもうちのクラスに立て続けに転校生とは、謎を通り越して不自然極まりない。


 その日は部活は休みの日だったが、放課後、私は宇宙そらくんと二人で部室で情報交換をしていた。

 話題は自然と例の転校生のことになった。


「彼女、もしかして、その対抗組織とやらが送りこんできたヒューマノイドってやつなんじゃない?」


「違う。彼女は人間」

「分かるの?」


「彼女の身体は細部まで観察した。胸部の形状の差は個体差および日本人との人種の差に起因するもの。女性器周囲の体毛がなかったが、人為的に処理されたもので、個体差ではなく文化習慣の違いと推察した。彼女が地球人の女性であることに間違いはない」


「なに、体毛って、あんた、裸、観れるの!?」


「念のため、クラス全員の身体を確認した。個体差はあったが全員普通の地球人だった」


「わ、私のも見たの」

「クラス全員の身体を確認済みと言った」


 私は思わず宇宙そらの頬をひっぱだいてしまった。


「こ、今度私の裸を観たら、承知しないから」

「確認済みなのでもう観る必要はない。約束する」


「きーっ、私の裸は忘れろ!」

 宇宙そらくんの頭をもって揺さぶっていると、部室のドアがノックされ、パイパンの、あ、今はハイジニーナ脱毛っていうのか、その金髪の転校生、アリッサ・セントメリーが入室してきた。


「歴史部に入部させてほしいのですけど」

 私たちは思わず顔を見合わせた。謎の転校生が、向こうからコンタクトを取って来た。


「もちろん入部は大歓迎だけど、まず自己紹介と入部の動機を聞かせてもらえるかな」と私。

「アリッサ・セントメリーです。源氏物語とか、日本の古典に興味があって、それで歴史も勉強してみたいなって思って」

 

 彼女は、宇宙そらくんの方を向くとことばを続けた。

喜屋武きゃんくんも、わんがくとー、アリッサってぃゆでぃやー、ゆたしく、かながなーとぅしやー」

 とっさのことで、私も、宇宙そらくんも、反応ができなかった。


「あきさみよー、喜屋武きゃんくん、沖縄出身なのに、私のうちなーぐち、わからなかった?」


 どうやら宇宙そらくんはうちなーぐちもミッション遂行には関係がないとして刷り込まれていなかったようだ。それにしても、沖縄の方言を自在に使いこなす米国人って、この女、何者?


「建前は止めて、本音で話そうか」と私。


「ということは、久我さんは、彼の正体を知っているんだよね」とアリッサ。

 

 私は頷くと彼女に問うた。

「私のことは姫乃ひめのでいいよ。で、セントメリーさん、で、あなたは何者なの?」


「私のこともアリッサって呼んでね。私は未来から来た。それだけは伝えておく」


「な、何のために?」

「未来に関する情報や現代では未到達な知識などを過去の人間に話すことは禁則事項となってるの。教えられないわ。私のミッションもそれに該当するわ」


「あなたは、私たちの味方なの。それとも敵? それだけは教えて」

「詳しい説明はできないけど、どちらともなりうるとだけ、お伝えしておくわ」


 未来人なんて、宇宙そらくんと出会う前の私だったら到底信用できない話だけど、今なら、そんなことも、まああるのかもしれないなと思えてしまう。


 私の周りで、私が心の底で期待していたワクワクするような非日常が起こりつつあった。


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