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安田二号の逆襲

 文化祭も間近に迫り、天気もようやく正気を取り戻して秋の気配を漂わせはじめた頃のことだった。

 白金しろかね先生が赴任して約一か月、いよいよ今日から安田先生が二年三組の担任として復帰することとなった。

 当然、我々歴史部の面々は戦々恐々である。


 白金しろかね先生と一緒に朝のホームルームに安田先生が登場すると、はたして教室は騒然となった。

「おかえりなさい」「お疲れっす」「元気ですか!」「復帰おめでとうございます」

 様々な言葉が飛び交う中、安田先生の復帰第一声は軽薄窮まる挨拶から始まった。


「おー、皆さん、お久しぶりっこ、おはようさんさん、サンバイザー」


 元々にやついた感じの先生だったけど、それを通り越して吉本の漫才師のようなキャラになっていた。


「先生、頭、大丈夫ですか」

 思わず声をかけたアリッサに「おー、アリッサ、サワディカップ、Fカップ、さわっていいかー」

と、漫才師を通り越して不適切にもほどがある下ネタギャグが炸裂した。

 クラスメイトは彼の変化に戸惑いながらも、「まあ、元気になってよかったんじゃない」と受け入れているようだったけど。


 放課後、白金しろかね先生が私たち二年部員四名に集合をかけた。

 部室に集まった私たちに、開口一番、彼女はこう言った。

「ねえ、彼は本当に安田先生なの?」

 

 私は、彼女の質問を質問で切り返した。


「それ以前に、白金しろかね先生、先生は白金しろかね先生じゃないですよね。先生こそいったい何者なんですか?」


 彼女の正体を不審に思った私は、図書館にあった昔の卒業アルバムを確認した。確かに四年前に白金しろかねゆい唯という女生徒はいたが、卒業写真を見る限りそれは別人だった。


「あちゃー、もうバレちゃった?」

 悪びれるところもなく、彼女は話し続けた。

「同じ公務員でも私は実は警察官なの。ま、そっちの方はおいおい説明するとしてさ、安田先生は以前からあんな感じなの?」


 今まで無表情で無言を貫いていた宇宙そらくんがいきなり真実を語り始めた。白金しろかね先生は敵ではない、信頼してよいと判断したみたいだ。


「以前の安田明とは同一ではない、彼は二体目」

「二体目? 二体目ってどういうこと?」

「安田明を名乗る物体はアルファケンタウリ星系第四惑星の生命体が生成した対人類コンタクト用ヒューマノイド・インターフェイス。一体目は我々歴史部と思想的に対立し、攻撃を仕掛けてきたため、やむなく破壊した。


 宇宙そらくんのあまりの話の内容に、さすがの白金しろかね先生もたじろいだ。

「ごめん、喜屋武きゃんくんが何を言っているのか、さっぱり分からないんだけど」


と、突然、宇宙そらくんが会話を中断して立ち上がった。


「防御に失敗した。位相が変化している。注意」


 きょとんとする白金しろかね先生をしり目に、私たちの脳裏にあのゴキブリ事件の記憶がよみがえった。

「またなの!」


「完全に空間を乗っ取られた。警戒」との宇宙そらくんのことばに、私たちに緊張が走る。


 部室の隅の床に水たまりのようなものが発生、次第に大きく広がり、中からタコの頭のようなものが現れ始めた。

 次第に全身を現したそれは、私たちほどの身の丈の大きさの、一昔前のウェルズの小説に出てくるようなタコ型の火星人だった。


「撃て!」

 八本の足をさわさわと動かしてこちらに向かって来ようとするそれに向かって、弥生やよい言霊ことだま魔法が発動した。

 椅子が勢いよく火星人に向かって発射された。しかし、命中し、ひっくり返りはしたものの、火星人は怯むようすもなく再び立ち上がった。


「撃て!」

 二脚目、三脚目の椅子が命中するが、火星人は倒れるもののすぐ起き上がってくる。どうやらダメージは受けていないようだ。


 ようやく我に返った白金しろかね先生が、手にした特殊警棒のようなものをきちきちと伸ばすと、立ち上がろうとした火星人に殴り掛かった。

 私とアリッサも掃除用具箱からモップを取り出して、三人でタコ型火星人をタコ殴りにした。


 殴るとよろけ、倒れはするものの、一向にダメージを受けている様子はなく、攻撃の手を弛めると立ち上がってこようとする。

 

 いよいよ息が上がってきた。私たちの体力の限界が近づいていた。

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