プロローグ
幼い頃、私、久我姫乃は、美少女戦士か魔法少女になりたいと本気で思っていた。もちろん当時夢中になって観ていたTVアニメの影響だ。
さすがに小学校も三年生くらいになると、あれはTVの中だけの話で、実際自分が使い魔の猫に声をかけられたり、突然魔法の能力に覚醒することなどないことに気づかされた。
その一方で、宇宙には数えきれないくらいたくさんの星があって、その中には地球と同じかそれ以上の文明を持った生物がいるという話に強い興味を感じた。宇宙人は実在するのだ、実在するんだったら是非会ってみたいなと思った。
といって、地球征服を目論む宇宙人の円盤に吸い上げられて人体実験をされるとか、レーザー光線で焼かれるとか、そういうのはまっぴらごめんだ。
友好的なイケメンの宇宙人が転校してきて、友達とか、あわよくば恋人同士になってみたい。夢見る乙女の私はそんな非日常を期待していた。
なんでも我々の住む太陽系のある銀河系には2000億個の星が存在するそうだ。
ノッティンガム大学のえらい博士が、銀河系には少なくとも36の高度な文明が存在する可能性がある星があると試算したらしいが、2000億個の中に36個って、文字通り天文学的な確率で、そんなの「ありません!」って言っているのとほぼ同義語じゃないのか。
朝目覚めて夜眠る、そんな日常が繰り返されるこのフツーの世界に、宇宙人との邂逅なんて、そんなことは確率的に起こりえるはずがない。高校生になった私はそう理解し、納得もしていた。
そう、喜屋武宇宙が我が風華学園高等部に転校してくるまでは。