新学期、波乱の幕開け
初めまして、この作品を手に取っていただきありがとうございます!
本作は、青春の中で起こるさまざまな感情のすれ違いや、徐々に縮まっていく距離感をテーマにしたラブコメディです。主人公の相川奈々と結城涼が織りなす、時にぶつかり合い、時に心が近づくような物語をお楽しみいただければ幸いです。
読者の皆さまが共感したり、クスッと笑ったりできるようなストーリーを目指しました。ぜひ、奈々と涼の成長や関係性の変化を見守ってください!
それでは、物語の始まりです。
春の暖かい風が教室に吹き込み、新学期の空気を一層軽やかにしていた。桜の花びらが窓際にひらひらと舞い落ちる中、私は教室の隅でひとり、ため息をついていた。
「また今年も同じ感じか…」
高校2年生になったけど、特に目新しいことは何もない。友達とのおしゃべりは楽しいけど、学校生活に特別な期待を抱くわけでもなく、淡々と日々を過ごしている。そんな私の名前は相川奈々。至って普通の女子高生だ。
しかし、その「普通」が一瞬で壊れる出来事が、新しいクラスで待ち受けていた。
「よお、相川。」
突然、頭上から声が降ってきた。見上げると、そこに立っていたのは——結城涼。
彼は隣の席になったクラスメートで、どこか自信たっぷりな笑みを浮かべていた。その整った顔立ちと長身で、女子の間ではすでに人気者らしい。でも、私は彼を知っていた。いや、正確に言うと、過去に彼にとてつもない恥をかかされたことがある。
「なんであんたがここにいるの!」
思わず声が大きくなる私に、彼は悪びれもせず肩をすくめた。
「運命ってやつ?」
運命だなんて、冗談じゃない。中学時代、彼は私の初恋の相手だった。でも、その告白が派手に失敗し、私の青春は台無しになったのだ。
「一緒のクラスなんて最悪…」
小さくつぶやくと、彼は少し驚いたような表情を見せた。
「俺にまだ恨みがあるわけ?」
「当然でしょ!」
その時、先生が教室に入り、私たちの会話は中断された。でも、その日から私の生活は一変した。
新学期が始まって数日後、私は部活の帰り道で偶然結城と出くわした。
「お前、まだバスケやってるのか?」
彼は気軽に話しかけてきたが、私は素っ気なく答えた。
「そうだけど…関係ないでしょ。」
「いや、ちょっと懐かしくなっただけ。」
中学の頃、彼もバスケ部だった。だけど、私はそれ以上の会話をする気にはなれなかった。
「それじゃ。」
立ち去ろうとしたその時、彼がぽつりと言った言葉が、私を足止めした。
「相川、お前が本気で怒ってるの、初めて見たかも。」
振り返ると、彼の顔は真剣そのものだった。
「俺、あの時のこと…ちゃんと謝りたかったんだ。」
突然の謝罪に、胸の奥がざわつく。だけど、私は素直になれなかった。
「今さら謝られても、何も変わらない。」
そう言い放って、その場を後にした。でも、心のどこかで引っかかるものがあった。あの日の告白の失敗は、私だけじゃなく、彼にも何か残していたのかもしれない。
次の日、学校では相変わらず彼が隣の席で話しかけてくる。授業中にノートを見せてくれたり、私が落とした消しゴムを拾ってくれたりと、妙に親切だった。
「なんなの、あんた。」
思わず突っかかると、彼はあっけらかんと答えた。
「仲直りしたいだけ。」
その言葉に、胸がきゅっと締め付けられる。だけど、私はまだ彼を許す準備ができていなかった。
「…時間がかかるかもしれないよ。」
そう告げると、彼は少し驚いた表情を見せてから、にっこりと笑った。
「それなら、ゆっくり待つ。」
その瞬間、私の心に小さな変化が生まれた気がした。
こうして始まった私と彼の新しい物語。平行線のように交わらないはずの二人の距離が、少しずつ近づいていく…そんな予感がした。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
「彼と私の平行線」は、青春時代特有のすれ違いや葛藤、そして少しずつ成長していく登場人物たちの姿を描くことを目指して書きました。相川奈々と結城涼の関係は、まだ始まったばかりで、これからたくさんの困難や笑いが待ち受けています。
読んでくださる皆さまにとって、この物語が少しでも心に残るものになれば幸いです。そして、奈々と涼の物語の続きも、ぜひ楽しみにしていただければと思います。
今後の展開についての感想やご意見があれば、ぜひお聞かせください!それでは、また次回のエピソードでお会いしましょう。ありがとうございました!