第81話 もう審神者じゃない
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役割を得ていたが、失った僕ら審神者。
しかしながら、現世で生きていくにはもう……肉体の形成が終わった今では、霧也様たちの側仕えとしてお仕えすることを望んだ。それは僕だけではなく、妻となった朱音も。
掃除に洗濯、料理は白蓮様と共に作るのは……白蛇様だったときにもしてきたが、外見が整うと僕はまだまだ子どもだと理解するしかない。
狼王だった霧也様の妻となり、沁み込ませていた霊力を外したことで『仙女』のごとき美しさを露わにした白蓮様の馳走は……美しさに沿うとおりに美味だらけだ。僕は白蛇様から学んだことをそのまま生かしているだけだったのに、やはり師には敵わなくて当然だった。
今、霧也様は直也と綾雅たちと今後のことを話し合っているらしいけど……審神者の任を解除された僕にはその話には加われない。
小さな羽虫のような、側仕えが審神者のそれだったから。今は狭間にいる咲夜が『審神者』として井戸に放り込まれた……あの時点で、はじまりと終わりがもう動いていたとしたら。
青年の肉体となり、厨の仕事人として動けるこの楽しさを与えてくれたのは彼女だ。今頃は、騰蛇たちの主として、騰蛇の妻としても楽しく過ごしているのかもしれない。鵺の道はもう通じているが、審神者が終わるときに相当の霊力を使ったから……道をまだ、通ることは難しいだろう。それは、朱音も同じことを言っていた。彼女は今、庭などを掃除しているはずだ。
「沙霧。煮っころがしはどうかしら?」
「あ、はい。……沁み込み具合はまあまあ」
「では、火から下ろしておきましょうか?」
「そうですね」
白蓮様になられた白蛇様。美貌も性格も違い過ぎて……まだ少し慣れないのだけれど。霧也様の好みであるのなら……たしかに、生涯の妻として側に置きたいなら『変える』ことも色々厭わなかっただろう。僕の朱音はもともと勇ましかったし、そこは任を解かれた今も変わりない。少し大人になった朱音は綺麗で可愛いが最初に持った印象だった。
「……現世との境にあることは間違いないけど、ここでの生活を選ばずともよかったのよ?」
「そんなことはありません。僕と朱音の部屋もいただいていますし」
「それは、まあ……ね?」
聖域とか神域などと呼ばれているこの境目もなかなかに広い。おふたりの邪魔をするつもりはないが、僕らのような下っ端でもいないと……掃除も家事もなかなかに大変なのはわかっているはず。おふたりが自分で自分のことを出来ていても、今度こそ御子が出来る段取りになったら……男女の側仕えがいなければ大変で済まない。
だから、審神者の任が終わって自由になった今でも……朱音とともに選んだのだ。この生き方を。
「大丈夫です。今度は放り出されないような『選び方』をしただけですから」
八王の一員ではあるけど、天孫の彼らとは血筋が違う。現世の今の世代に比べれば、まだまだ長生きするだろうし……先達としては、彼らへの言い渡しの代わりくらいできるだろう。それ以外は、食事の手伝いをさせていただく仕事も楽しいのは本当だから。
次回は火曜日〜




