第78話 継承の儀
あれから幾月か経ち、我らは『天孫の儀』を形式ではない方法で行うことにしました。
参列者に、それぞれの関係者は多くいない。
『八王』の長には狼王だった霧也様が。
『裏八王』の長には、綾雅様が就任する。
帝は等しく、現人神の血筋のあの方のままだ。わたくしが巫女姫を介し、一度まみえたくらいだが相変わらず気配が薄い殿方のまま。そう遠くないうちに、輪廻の輪をくぐることになるでしょうが、それを決めるのは帝の心次第。
周りが何を言おうが、それを決断するのは本人だけなのだ。
狭間にいるわたくしたちは、儀を終えたあとの『馳走』のために準備に明け暮れていた。わたくしは騰蛇様の妻として、屋敷の女主人として十二神将様方と屋敷内の掃除を丁寧にしていくのをがんばるしかない。
馳走は騰蛇様以外にも朱雀様や玄武様が手伝われているので、心配はないからだ。
「咲夜。この衣はあっちかい?」
「はい。勾陳様」
「向こうは整いましたわよ、咲夜」
「ありがとうございます」
ひとりふたりを歓迎するわけではないので、準備に時間がかかるのもしかたがない。手が空いたら料理を運ぶなどに勤しんでいれば、『鵺の道』からそれらしき気配が到着するのを見てわたくしは出迎えに行った。
「「ちぃ!!」」
あねぇの御二方がまず出てこられ、わたくしより少し大きな体で左右から抱き着いてこられました。わたくしは十六歳くらいの身体でも標準よりちいさいのですっぽりと埋まってしまうのも致し方ありませんわ。
「……あねぇ」
「美桜よ?」
「私が砂羽ね?」
「……咲夜、です」
「「その名なのね……」」
かつての名がどれだったかも、お互いにおぼろげなのは仕方がない。
最初と最後が悪いわけではありません。
『今』を生きている事実が確実であれば、そのときの『名前』大事にしなくてはいけないからです。『名』は継承に必要な特別なものであっても、結局は飾りのひとつにしかなりませんから。
「……おーおー。こんなきれいにしたのか?」
「我々も、見習わなくてはいけないね?」
殿方らのお声に、少し鼻の奥がつんとしましたが。ここはきちんと妹としても挨拶をせねばなりません。
「御二方。末姫の咲夜にございます」
直接お会いするのは此度が初めて。しかし、どうしてでしょうか。勇ましいお姿を拝見すると、懐かしさしか出てきません。それくらい、輪廻から離れていても『兄弟姉妹』の儀はきちんと子の身体にも受け継ぐことが出来たからでしょう。
「……おお。ほんと、ちっさ」
「こんな可愛らしい妹……の、婿が我らよりも強いのか」
「最凶の俺だからな? 兄者とも」
「騰蛇様」
あねぇたちは笑っていらっしゃいましたが、あにぃたちは騰蛇様のお姿を目にすると少しばかり苦笑いされていました。勇ましいお姿はこちらもですが、獄炎以上の焔を扱える騰蛇様の覇気に驚かれたかもしれませんね?
ですが、これで我ら天孫一同の天中地の役割を担う者らが番とともにそろったのです!!
次回は火曜日〜




