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【完結】癒しの巫女と十二神将はいつも腹ペコ三昧  作者: 櫛田こころ


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第75話 腹ペコ腹ペコ?

「……焦らんでいいぞ?」

「ふぇふぉ。おい……しく、て」

「誰もとらねぇって」



 今わたくしたちは宴を開いている真っ最中。顕現を取り戻した十二神将様方は、それぞれ思い思いに酒や食事を口にしている。


 もちろん、わたくしもそのひとり。酒は遠慮しているが、さっきからおにぎりばかりをたくさん食べ進めていた。さすがに、騰蛇様にも苦笑いされるくらいの量を。



「……ふぅ。次はあちらを」

「握り飯以外、いいのか?」

「……つい」



 呪箱として、最初に口にした馳走。


 朱雀様がおつくりになられた生姜焼きももちろん美味しかったけれど。何気ない『おにぎり』がわたくしにはご馳走なのだろうか。『私』が蕩けて、『わたくし(咲夜)』に移り変わっても覚えている味はまさしく、ひとつ。


 愛おしい騰蛇様が手掛ける馳走が、なによりのご馳走。それが何気ないおにぎりでさえも。



「ほら。肉も魚もたんと用意した。俺手製だぜ?」

「……はい」



 蕩ける触感。香ばしいあじわい。どれもこれもが幸せだ。


 あにぃやあねぇは無事に番の方々とお会い出来たのでしょうか? わたくしは、この狭間からしばらくは動けない身。月詠の娘としての力が安定するまでは、現世も常世にも、聖域にも行けやしない。


 だからこそ、皆様の仮姿を写した十二神将様方がいらっしゃるのだ。騰蛇様もはるかはるか遠い昔は違う姿をしていたでしょうけど、わたくしを最後に喪った以降はこの地位にずっといらっしゃる。


 ずっとずっと、この狭間の中で巡り巡りて、わたくしを待ってくださっていた。だからこそ、輪廻の次は共に逝けるような仕組みを作る必要があるかもしれない。


 輪廻は神の子孫でもくぐらねば、穢れもなにもかもを捨てきれない。肉体はあくまで『箱』のようなもの。我らの魂を一時的に留めておくだけの『箱』に過ぎない。美しさや平凡さのように仕立てるのように見せたのは、ごくごく些末なことだ。魂が整っても、外も内も別であることを知るのは我ら神の子らとて同じ。


 それを、騰蛇様に長く我慢させていたのだから……このあと、湯殿に入っていただかなければ。おそらく、『都波砂羽』だったときの穢れを多く受けてしまっているはず。浄化は常に常に行わないと……せっかくの『鵺の道』に清めた穢れを流せないもの。



「……なんか、よからぬことを考えてないか?」

「いいえ? このあとのことを少し」

「姉らのことか?」

「覚えておいでですか?」

「……いや、まったく」



 もしかしたら、あねぇらがこの方になにか施しをされたのでしょうか? それでしたら、急ぐ必要がないのかもしれません。


 今をただ、のんびりと。腹ペコのわたくしを満たす馳走を楽しむ時間……頂戴したのかもしれませんから。

次回は火曜日〜

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