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第72話 まず最初に食べたい食事は②

 天一様方に身なりを整えるのを手伝っていただき……大広間に行けば、ほかの十二神将様方が膳の用意をされていました。わたくしは直接見ていませんでしたが、一度蕩けてしまった方々も無事に戻られてようございました。



「咲夜! はやくはやく!!」



 天一様に手を引かれましたが、その……このお屋敷の女主人になるとはいえ、上座に腰かけるのにはまだ抵抗があります。ちぃ姫だったとはいえ、まだまだ『砂羽あねぇ』の記憶の名残があるのですから。


 ですが、上座に騰蛇様がいらっしゃると座らざるを得ませんね? 仕方がないので、隣に腰かけました。



「……皆様。まずは、長年の責務を果たしていただきありがとうございました」



 ここを長く守ってくださったのは、白蓮のあねぇなのでわたくしが月詠の姫であれ礼節を重んじるのは当然。十二神将の皆様も頷く以外、まずは黙っていてくださいました。



「わたくしは、咲夜。砂羽のお姉様の外側をお借りしていた月読尊の流れを受け継ぐ小さい姫です。けど、名は……天孫降臨以後から継承しております。この肉体が受け継ぐ番が来て……長い間、皆様をお待たせして申し訳ございませんでした」



 頭を垂れても、皆様はなにもおっしゃいません。いいえ、言えないでしょう。月詠の姫が此度の騒動の本性だと知られれば、白蓮のあねぇ方も解放されなかった。沙霧のお兄様も、都波の呪箱としての責をずっと抱えていらしたのだから……これで、いいのです。


 私が顔を上げると、肩に温かな手がぽんぽんと置かれましたが。



「そして俺が、月詠の姫の婿だ。悪いが、この任は絶対お前らでも譲らん」



 と、勇ましく騰蛇様が宣言されますと、ほかの方々はどっと声を上げて笑い出しました。



「そりゃそうさ!」

「お前さん以外に、ちぃ姫の腹を満たす料理も作れん」

「呪箱だったとはいえ、すでに姫さんはおめぇさんを選んでたんだ。それは文句を言うまい」

「そだねー。砂羽っちに似せてても結局は『咲夜』だったし」



 色々言ってくださっていますが、わたくしが騰蛇様の嫁になってもなんら問題がないようです。そのことにほっと出来ましたが、その……実は。



(お腹が減って仕様がないです……)



 と、さっきから霊力以外に体力もたっぷり使ったことで、お腹が空いて仕方がないのです!!


 しかも、騰蛇様が一番わかっていらしたのか、わたくしの前にお料理の皿を持ってきてくださいました。



「ほら、最初に食いたいもん。これだろ?」



 目の前には、白い塊のご飯がいくつも。それは、呪箱だったときに最初にいただいた『おにぎり』。具材までは見えませんが、海苔を別に渡してくださったので、ひとつを包んでかぶりつきました。



「……おいひぃです」



 塩味がほどよく、ほろっとお米が崩れた中には鮭の塊がごろっと。これが、食べたかったのです。



「その顔は、砂羽だったときと同じだな? いや、姉も顔そっくりか?」

「…………お会いしないとわからないですね」



 飲み込んでから答えましたが、あねぇたちのことを気にしつつも次のお仕事への腹ごしらえのために、今はお腹いっぱいになるまで……皆様方と膳を平らげるのでした。

次回は火曜日〜

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