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第71話 まず最初に食べたい食事は①

 本当は白蛇様……いいえ、白蓮のあねぇが長年使っていらしたところを、勝手に使うのは申し訳ないのだけれど。わたくしがこれから、この狭間の女主人となるのであれば、きちんと身なりは整えなければいけない。


 穢れを限界まで落とし、髪を念入りに洗い。一度湯着を脱いでお湯を念入りにかけてから身に着け……湯殿でゆったりと浸かる。この至福の時間まで、わたくしが『呪箱』として対応してきたと思えば……食事もですけど、これからとても贅沢者になってしまうでしょう。


 わたくしは、月詠の姫として……騰蛇様に嫁ぎ、ほかの十二神将の皆様の主となるのですから。



「……はあ、気持ちいぃ」



 とろとろと穢れが逃げるようにして出ていきますけれど。わたくしの『年齢』は今本当はいくつなのでしょう? ちぃ姫とは言え、ただ末の姫と言う意味だけ。


 この異界の狭間に投げ込まれた『砂羽あねぇ』としての年齢は十五か十六くらいだったけれど。実際にその通りなのでしょうか? 手足の伸びを見ても、どこか小さく見えます。



「……ご飯が足りないせいでしょうか?」



 最上の供物を、呪箱として最後に務める前に騰蛇様から頂戴しましたが……あの、『けぇき』は今でいう明治のあとの時代から……少しずつ日本に伝えられたやわらかくて甘いカステラ以上のもの。


 呪箱ではなく、狭間のちぃ姫の意識としては……その頃に、まだ番にも任命させていなかった騰蛇様にねだって作っていただいたものだ。あそこから、呪箱へと沙霧のお兄様と入れ替わる際……ここから離れた記憶も今では鮮明に思い出せます。


『星の変革』とでも言いましょうか。


『ヒトの循環』とやらが、大正の時代の終わりにもやり過ぎたのです。戦で褒章を得て、土地を奪いは広げ……しかして、あとには多くの死の穢れが残るのみ。


 その循環を務めるのは、現人神の子孫である我らだけ。信じる者は随分と少なくなりましたが、ぎりぎり残った『八王家』のおかげで異界にいたわたくしとも繋がりが出来たのです。


 だからこそ、『百二十年』ほどの月日をかけ、現世(うつしよ)常世(とこしよ)も次の世代にと造り替えらなければならなかった。その次代というのがわたくしたち、皇室を影で支える『裏八王家』と呼ばれる神の子孫たちがヒトになった者たちです。その伝承は、おそらく戦乱のせいでほとんど残っていないでしょう。


 皇室も、今も表では巻き込まれているようですから。



「……ですが。裏八王の『番同士』はこれで繋がりました。あとは、我らが我ら也に役目を務めるまで」



 その休息時間として、こうやってゆるりと過ごす時間くらいは頂戴したいです。騰蛇様は厨に行かれましたが、今なにを作られているのでしょう? 何をわたくしに食べて欲しいのでしょうか? いきなり、けぇきはちょっと……ですけれど。



「さ……咲夜! 開けていい??」



 扉の向こうから、幼いおなごの声が聞こえてきました。一瞬、名を間違えそうになったのは仕方がありませんが……わたくしは『どうぞ』と声をかければ、すぐに引き戸が開きました。



「よかった! すっかり綺麗になって!!」

「穢れを抱え込んでいた我らも心配したぞ」



 一度、姿が蕩けてしまっていた十二神将様方の一部。


 天一様と勾陳様がそこにいらして、私は涙が出そうになりました。本当に、わたくしが目覚めたことで……十二神将様方の『表の姿』もそのままに留められたのですね!!



「髪乾かすの手伝うから、騰蛇の作ったご馳走食べに行こう?」

「今日から、改めて我らの主はお前だからな? 朱雀もさっき起きて手伝いに行っている」

「……はい。ありがとうございます」



 もとに、戻れたことに感動しないわけがありませんでした。

次回は土曜日〜

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