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第7話 知らない事実



「猪肉か」



 騰蛇(とうだ)様が布をさっと、取り払われた下には赤が主体だけど白い線などが多く入ったものだった。騰蛇様は『いのししにく』とおっしゃっていたけれど、どのようなお肉なのだろうか。


 きらきらと輝いているようで、とても美しいお肉だ。このまま食べられるのかと近づこうとしたら、くん、と誰かに服を引っ張られた。



「こらこら、砂羽(さわ)っち〜? このまま食べられるものじゃないよ? 人間は特にー」

「……違う、のですか?」

「食べられなくもないが、人間だと腹壊すぞ」



 天一(てんいつ)様に服の裾を引っ張られ、止められてしまった。騰蛇様からも、このままでは食べられるものではないと注意を受けた。では、どのようにしてこの美しいお肉を食べるのか気になってきた。


 お肉、というのはブニョブニョしてよくわからない薄紅か茶色の混じった、薄い切れ端程度しか口にしてなかった。味もあまりなく、ボソボソブニョブニョで食べにくい覚えしかない。


 だから、この美しいお肉はどのように食べられるのか知りたかった。



「……砂羽っち、変なご飯しか食べてなかったのー?」



 天一様にそう聞かれたので、私はお肉のこともだが今までの食事の内容をお伝えすることにした。乾いたお米に焼き魚。お肉のことも伝えると、水色の目を丸くされてからだんだんと床の上で足を踏まれた。



「ひっどぉい!? それどこの人間ぅ!! 自分の子どもにそんな扱いって、虐待もんじゃん!!」

「……ぎゃくたい?」

「そうだよぉ! 自分は好きな事して、子どもには酷い仕打ちするってやつ!! 砂羽っちには不思議な力があるみたいだけど、なんで封じられてるの? そのせいで虐待させられたの??」

「……いいえ。あの……力はたしかにありましたが。ついさっき消えて」

「消えてないな。何かの作用で封じられてるだけだ」

「……え?」



 騰蛇様は力強く、頷かれた。そう言えば空での移動の時に、翼のある神様との会話でも同じ事をおっしゃっていた。だがその言葉が真実であれば、私は捨てられる事のなかった存在となる。しかし、あの家にはもう戻りたくない。戻ったら、天一様がおっしゃっていたような『ぎゃくたい』と言うひどい仕打ちが待っている。


 何も感情を感じさせない、誰かの傷などを癒すだけの道具。


 あのような生活には戻りたくなかった。それが今一番強い願いとなった。



「こらこらー? 二人とも砂羽を怖がらせてどーすんの」



 少しずつ『嫌』と言う気持ちが膨れ上がっていった時に、別の声が扉から聞こえてきた。顔を上げて前を見れば、翼はなかったが少し前に騰蛇様を呼び止めた神様が何かを抱えて立っていた。



「あー、朱雀(すざく)ー? 砂羽っちと先に会ったの〜?」



 天一様がぴょんと彼の前に立たれると、名を呼んで尋ねられた。御名前は『朱雀様』とおっしゃるらしく、私の視線に気づくと朱雀様は優しく微笑んでくださった。



「そ。準備するのに先にこっち帰ってきてね。んで、騰蛇。砂羽に何か食べさせてやった?」

「まずは握り飯二つだ。次に天一が持ってきたこいつで何作ろうか考えてたとこだ」

「おっと。焼くとかなら僕に任せて。すぐに出来るのならその方がいいでしょ? 煮込み系は騰蛇に任せるけど」

「よしきた。んじゃ、生姜焼き食わせてやってくれ。俺はその間に角煮作るから」

「りょーかい」



 暗い話から、一変して明るい話題に変わったのだけれど。どちらも聞いたこともない料理だが、私が単純に知らないでいた料理かもしれない。おにぎりだけでも知らないでいたから。



「生姜焼きに角煮! お腹空くよ〜!! 天一も手伝」

「やめろ」

「我慢しよーねー? 気持ちは受け取るけど」

「……あぅ」



 天一様の提案に、御二方はすぐに注意されたのだが。私はわからないが、天一様は料理をお作り出来ないのかもしれない。御二方のお邪魔になる範囲かもなのが、少しわかった気がしたけれど。


 とりあえず、天一様は私と大人しく椅子に座って待つこととなった。

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