第51話 その感情は神将らにも
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伝わってきた。
我らは、異界にとっては塵芥でしかなかった神の一端。
形を整え、性のようなものを与えられ。
使役する術師を巡り、ひとときの流れを得て成長してきた。
十二の枝分かれ。
十二は、もともとひとつでしかなかった。
別れに別れ、力の形となったのは……まだ術師らが自由にたむろしていた雅の裏を支えていた頃か。
「……天一。我らの形も、崩れる時が来そうだな」
「…………そうだね」
十二が少し減るとしたら、四獣の位置の手前である自分たちだろう。蕩けて流れて、まだ砂羽と顔合わせしていない他の十二神将らの中に戻るのか。
哀しいがこれで良い。
また生まれる可能性はいくらでもあるのだから。
初めて、笑顔を見せてくれた記憶を持って行くだけでいい。
天一が何よりも欲した、主の帰還を目の当たり出来たのだから。沙霧以上に朱音。ふたり以上に、最後の裏八王の姫に。
散り散りになった、砂羽の姉の『魂魄』をかき集めるのも天一らの務め。それが異界に揃っていたのならば、元に戻すために動こうか?
「戻るなら、まず朱雀の方かもしれん」
「……うん。だよね、朱雀?」
いることはとっくにわかっていた。
泣き続けているのも、とっくに知っていた。どうやら、他の神将が消えたのも受け止めてきたのか。もしくは、玄武らのを見てきたのか。
「……別れてた、俺のかよ」
「我らはひとつの星」
「天一たちは、寄り添う星なの。また離れるときまで……預かって」
「……ああ」
意識が蕩けていく。異界で保っていた、形すら蕩けてしまう。
水でなく、炎となり……蕩けたそれは、粒と化して朱雀の口へと運ばれていくんだ。
『……またね、朱雀』
砂羽の相対を支えてやれるのは、君しかいないんだよ。最強と最恐を整えてあげられる粒は、四獣の位置以外いないと思うんだ。
裏は闇。
邪を取り込んで浄化するのは、最恐しか出来ない。
飲み込まれた時、朱雀の前にもう居たから気づけたんだ。
『『さらば、騰蛇』』
『砂羽』という贄姫と巫女姫を救えるのは、凶将の君しかいないんだよ。
また別れて、いっしょにご飯食べれるように……主を支えてね?
沙霧だけじゃなく、砂羽っちや白蛇様を。
狼王様や朱音たちを。
昔の桃源郷だった異界を……整えてね?
我らが兄者の本性よ。
「……受け取った。その、願い。あいつとはきちんと向き合うからな! いっぱい飯、また食えるように保っててくれ!!」
泣き顔は似合わないのに、情の深い男は好かれるもんね?
四獣らが奪わないように、我らは楔となろう。だからこそ、一旦退くの……ごめんね、砂羽っち。
朱雀の嚥下が終わったら、意識はすぐに封じられた。
次回は火曜日〜




