表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
48/68

第48話 可愛らしいが






 ★ ☆ ★







 砂羽が『ねこまんま』を覚える様子は可愛らしいのだが、ひとつ疑問が出てきた。


 八王の都波の家から『贄姫』に仕立てられたにしては……穢れをほとんど取り除いたにしても、『容姿に面影がない』のだ。


 妹分として、引き取るのに異論はない。問題はないのだが。



(……行方不明の、裏八王の姫に?)



 我ら、審神者を輩出した家々の『八王』の支柱となる裏本家。


 少し前に、狼王様の『剣』として参上した直也の総本家である彼処。


 怨嗟を受け過ぎ、散り散りになったと言われてはいたらしいが……それも現世の時間では十数年以上前。しかしながら、砂羽の年頃を聞けば納得がいく。


 とくれば、裏本家の血筋も兼ねている我が八王の『水心』にも関わることになろう。



「……おかわり、欲しいです」

「「いくらでも」」

「遠慮はするな」



 碌な食事をさせられていなかったと言うのも、贄姫への仕打ちの特徴だ。我が身とて、一度は贄にさせられたのだ。水心を継いでいる今の若き宗主は阿呆ではないようだが……。



「であれば、砂羽。少し味わいを」



 ほんの少しだけ、一味をかけてやり混ぜるように告げた。ひと口匙を……と動かした彼女は気に入ったのかもぐもぐと匙を動かしていく。可愛らしい!



「ピリッとするんですが、もっと美味しく感じます」

「かけ過ぎはいかんが、最初はそれくらいでいいだろう?」

「朱音が……」

「加減をとは」

「……私とて、いきなりかけません」



 自分の好みでは軽く山盛りかけるが、いきなりの子どもにそんなことはしない。砂羽は少し苦手のようだったので、ほんの少しでちょうど良かったみたいだ。


 ねこまんまをたらふく食べたあとは、きちんと片付けをしたいと申し出るあたり……穢れで鈍った意識がもう解毒されてはっきりしてきたのだろうな。それは何よりだと、いっしょに膳を運ぶことにした。



「お姉様、これからたくさんお手伝いできるのでしょうか?」

「ああ、そうとも。私は普段現世側だが、兄の言葉も聞きつついろんなことを覚えなさい」

「はい!」



 実の妹らはとうに鬼籍に入れられているだろうが、このように愛らしい存在だったか……もう思い出せない。


 ひとまず、狼王様のところに戻り……裏八王家のことを聞きに行こう。おそらく、直也との対談で気づいたかもしれない。



(……我らの、最期を切る術を継承など。もう必要ないはず)



 それを狼王様も、きっとわかっていらして……私を異界側へと行くように告げたのだろう。砂羽の顔と気配を確認し、白蛇様の側で仕えても問題ないかを調べるために。


 気持ちがいいくらい、善を尊く受け入れているのだ。この子なら、きっと大丈夫だろう。本来の兄が直也であるのなら、きちんと会わせてやりたいが……まだ、だ。

次回から火木土

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ