第47話 具沢山、かつ後で
次回は土曜日〜
今から作るのは、『豚汁』と言うお味噌汁の亜種だそうです。
「「ここで選択肢が!」」
お兄様が朱雀様とごぼうという枝のようなお野菜を手に、私の方に来られました……食べられるお野菜だそうですが、どんな味わいなのでしょう??
「? 何か違うのですか?」
「うん。調理法の違いって言うのかな?」
「普通のがいいか、癖があるけど美味しい方がいいか」
「砂羽はなんでも美味しく食べてくれるけど。好みもそろそろいいかなって」
「……と言いましても。作っていただくご飯は皆美味しいです」
「「ありがとう」」
選ぼうにも、どちらもまだ食べたことがないのに難しい選択肢です。であれば、まずは『普通』の方がいいでしょうか? もしかしたら、お手伝いの比較もできるかもしれません。
「では、まず。普通を教えていただけませんか?」
「基礎、ね? そこの騰蛇を信頼してるせいかなー?」
「……おい、沙霧」
「ふふ、じょーだん。じゃ、まずこの器に水張ってー」
そして、お兄様と朱雀様は。
包丁でさささっとごぼうを美しい削ぎ切りにしてくださいました!? 斜めに切ると言うことで、『笹掻き』という手法だと教えていただきました。
刃物を扱ったことがない私は、まずお野菜を洗うことに慣れるところからです。
「笹掻き頑張り過ぎた!! 甘辛のきんぴら作ろう! 騰蛇頼んだ!!」
「はいよ。んじゃ、出汁巻き作るか?」
「米は茶碗を覚えるのに……箸は大丈夫なら、あれもあとでしない?」
「もともとさせるつもりだったんだろ? 行儀悪いが、今はいいしな」
「でしょでしょー! 朱雀もいいよね?」
「主人が望むなら、使役の俺とかは言わないよ」
あとで?
あれ??
いったい何のことでしょう? また美味しい何かを教えていただけるのでしょうか?? お米はおにぎりが大好きですが、違う食べ方を教えていただけるのに……異議はありません!!
基本的に洗い物を担当以外、調理へのお手伝いをしませんでしたが……皆様には『助かった』と言ってたいただけました。ほとんど何もしていませんが、それで良いならいいのです。
人数が多いので、私はお兄様とお姉様。あとは、白蛇様とご一緒に膳を共にするようです。
「白蛇様、お待たせ致しました!」
「ん。胃を労わるいい膳だな? しかし、この豚汁と飯の量……」
「最後に、砂羽にはあれを教えたくて」
「なるほど。粥の代わりにもなるしな。先に覚えておくにもいい」
「……あれを、ですか」
「……あの。どんなことをするんですか?」
温かく、美味しそうなご飯をどうするのか……お話を聞いてもわかりませんでした。すると、お姉様が肩を軽く叩いてくださいます。
「……粥は食べたことがあるか?」
「……無くはないです、が」
「豚汁の具をある程度食べたら、白米をそこに入れて食べることだよ」
「……美味しい、んですか?」
「今日は豚汁だから、旨味が勝って美味しいだろう」
「……なるほど」
少し下品な食べ方ですが、美味しいとくれば興味は出て来ました。
最後の最後ということで、食前の挨拶を済ませてから……まずはひと口啜りましたが。普通と言っても、お肉の味と味噌の味が合わさって……とても美味しい汁物でした。




