第44話 八王家とやら??
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穢れをあらかた流せば、朱音より幼いが愛らしい童となったのには少し安堵はしたのだが。
水鏡を使い、彼らの動きを俺と共に見ていた『剣』の直也は……何故か渋い顔をしていたな? 苦悶の表情と言うべきか。
「どうかしたか?」
言いたいことへの予想は、何となしに予想が出来る。こうして直接会う回数は少なくとも、こちらは悠久の刻を漂うように生きてきた存在だ。己より幼い者らの心情も……読み取りが出来るが、確証がないので聞くしかない。
「…………妹に、似ている」
その回答から思い出したが、たしか直也は『正式』な八王の家の人間ではなかったはず。とくれば、俺の剣に認められる前は鬼子として捨てられたか見放されたか。
どちらにせよ、砂羽の出自も怪しい部分が出たとなれば……白蛇にも知らせておこう。鵺の道がひと段落したため、紙での式もすぐに送れた。
「……これから確かめればいい。道が落ち着いたから、すぐに向かうか?」
「……んな訳いくか。せめて、今回の任務を剣として終わらせてからだ」
「政府と軍……か。面倒な位置だな」
「あんたほどじゃねぇだろ、熊公」
「……それで呼ぶな」
「そのガタイと優しさ、狼より熊だろ?」
「……白蛇にも言われたな」
とは言え、悪鬼邪鬼らを屠るのには容赦しない。故の、渾名が『狼王』と呼ばれているだけだ。
かつての目付役が『封印』と称して、時代の流れが落ち着くまでの楔を俺と白蛇に掛けた。
どうしてもの最愛。
結んではいけない関係性。
穢れを受け過ぎた、贄は我らが最初なのだ。だからこそ、砂羽も異界側へと落とされた。最も、今回は俺らにとっても好都合だがな?
あれだけの穢れを『八王』のひとつが意図的に固め、我らの領域に流し込んだ。なら、その『呪詛』を作り出した罪拭い……都波だけではあるまい。
もし、砂羽が直也の実妹と判明し……裏の八王家が、本気で潰された真実が露わにすれば、都波と入れ替わってもおかしくない。
むしろ、都波の出身である沙霧の出自もいささか怪しかったからな?
「……とりあえず。鵺の道使って、他の『苦無』たちに警告伝えてくるわ」
「……わかった。こちらは、ひとまず気にしなくていい」
「応」
幼い頃は稽古をつけてやったが、たった十年と少しで勇ましくなったものだ。せめて、働きを労わるくらいの下調べくらいはしてやろう。
砂羽のあの姿、俺もかつて仕えた主人の娘御との面影を感じたくらいだったしな?
次回は土曜日〜




