第40話 お仕事?
ご飯を食べ終えてからですが、白蛇様にひとつ頼まれ事をされました。
「少し上が面白いことになっている。砂羽、更に清浄の練習も兼ねてお前に仕事を与えよう」
「……お仕事、ですか!」
洗い物以外で、初めてのお仕事です。洗い物はどうしてもすぐに終わってしまう。それ以外は、ゆっくりするかご飯を食べて、湯殿で清めてから寝るなど。
巫女姫だった私には、全くなかった生活でしかありませんでしたが。
慣れると、自分が不甲斐ないと思うことで不安になってしまっていました。こんなにも労わってもらうことが、これまで一度もなかったもので。
自分自身が、ただただ『巫女姫』という道具としてしか扱われなかったことを……日に日に理解していきます。ですから、世話係も何もしなくていいと言われてしまった中。
食器の清浄以外で、初めてのお仕事なのです。
「なに。沙霧がこちらへ帰って来れんのでな? 現世と繋ぐ『道』を綺麗にしてもらいたい」
「……いらっしゃらないのは、道が大変なのですか?」
「現世側での自業自得だがな? それに巻き込まれたようだ」
なので、『鵺の道』と呼ばれるところへ行くように、と。案内は騰蛇様と朱雀様がご一緒してくださいました。
「式神の俺たちでも行けないのに、か」
「現世のことはどーでもいいが。あいつが戻れんのはいかんな……」
「だね」
私はまだ、『都波の家』を恨んでいるのかどうかもわかりません。ですが、今まで『巫女姫』と『道具』でしかなかった人間だったという存在。
養育不足、認識不足と、白蛇様には教えていただけました。親がすべきでない、『虐待行為』でしかなかった生活だったと。それを自覚するような教養をさせなかったという時点で、親ではないのも同然。
だからこそ、まず。
如何に自分自身も、それ以外も知らなさ過ぎだったと……私は人間として情け無い存在でした。
でも今は。まだ間に合う。
それを白蛇様にも、十二神将の皆様にも言って頂けたのです。
都波の家をどうするかは、あとにするにしても。ただの『砂羽』としてお役に立てられるように頑張りたいです!!
「あーあーあー? 何あれ」
「……沙霧が戻って来れんわけだ」
意気込んでいると、おふたりが声を上げられていました。私は小さいので、横から顔をのぞかせてみたのですが……大きな池から天高く伸びているような『氷の塊』が突き出ていました。
あれのせいで、沙霧様が通られる道を塞いでいるのでしょうか??
「これを、溶かすのでしょうか?」
「砂羽ひとりで出来るわけないでしょー? 俺たちも来ててよかったけど」
「……浄化と破壊。であれば、俺の焔も使えってことか?」
どうすればいいかと悩んでいますと、騰蛇様が手に真っ黒とも言える赤黒い炎を出されました。
「? それで溶かすのですか?」
「単純に溶かしたら、濁流だけで済まないぞ? だから、砂羽。お前の力でこの焔を白くしてみろ」
「……頑張ってみます」
色を変えるのではない。
本質の『清浄』で上書きをすること。それだけは、湯殿以外の浄化で太陰様から教わりました。念を込め、吐息を伸ばして呪言のようにして霊力を流していきました。




