表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
38/66

第38話 久しく訪れる『剣』






 ★ ☆ ★






 沙霧の飯で幾らか腹は膨れたが、俺もそれ相応に『穢れ』を落とす必要が出て来た。


 服の洗濯だけは朱音に任せ、俺は沙霧との語らいも兼ねて二人で浸かることにしたのだが。



「……僕の、でしょうか?」

「いや、俺のもあるだろう。溜まったら、白蛇がしているように呪詛返しに使おうか」

「……ここ、現世ですけど?」

「…………すまん。異界のつもりでいたな」



 穢れが玉砂利と成し、溜まっていくのは土汚れのそれにも見えかけたが。たしかに、異界側で現世の被害がこの程度。


 俺の領域にて同じことを仕出かしてしまえば……同等以上の豪雪地帯になってしまうだろう。白蛇のところは穏やかになるだろうが、こちらはそうもいかん。


 桶に流し込んだが、あっという間に山盛りになってしまう。



「! この湯殿でこれだけ出るということは」



 沙霧が湯船からいきなり出たかと思えば、禹歩を取る。


 呪は唱えなかったが、禹歩だけで黒い玉砂利の呪詛が一枚の霊符へと形を変えたのだ。やはり、白蛇の審神者として修行を受けただけの術士に育っている。



「その霊符、都波に投げるつもりか?」

「砂羽のためにも、いいです?」

「……良い。許可する」

「では」



 今度は呪言を唱えて霊符をきちんと昇華させていく。おそらく、最悪の事態を起こすことは容易に想像出来ても……いい加減、俺たちも限界だったからな?


 最悪の人柱を得て、半神扱いにさせられた我らにとっては。


 霊符が消えたあと、少し冷えたのか沙霧はまた湯船へと戻って来た。



「はは。凍えそうか?」

「鵺の道もがっつり凍っていますからね。乾かすのに、このお湯使っていいです?」

「だな。流石に俺も冷えるのはごめんだ」



 さっ、と水を上げ。霧のように湯殿の中を温め直してから風を送ったのだが。



「げほげほ!? あっつ!!?」



 俺でも沙霧でもない、男の声が入り込んできた。聞き覚えがないわけではない、むしろ知人だ。しかし、かなり久しい。


 どれくらい様変わりしたのか、湯の霧をかき分けて顔を見てやろうとした。壁際に、咳き込みを繰り返す黒の軍服を着た若い男が。外見だけなら俺の方が少し上くらいだろうが、そこまで月日が経ったのだな?



「久しいな、我が剣。……直也よ」

「げほ…………っと、お久しゅうございます。狼王」

「再会が、まさか出来るとはな?」

「全然変わってねぇな、熊公」

「……その呼び名は寄せ」



 最後の対面したのは、剣としての就任以来だから五年くらい前か?


 沙霧も久しく会っていなかったため、本当に彼なのか判らなかったにしても。呪符五枚を急ぎで揃えるのはよろしくないので、きちんとしまわせた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ