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第35話 やはり、最初は

 着替えをお借りしてから、案内していただいたお部屋には。


 騰蛇様と朱雀様。それとお見かけしていなかった、殿方の十二神将様方がいらっしゃいました。玄武様はいらっしゃらなかったですが。



「……砂羽!?」

「砂羽、なのか?」



 御二方も、やはり私の様変わりにびっくりされているようです。私が頷けば、すぐに目の前が真っ暗になりましたが。



「……あんなにも、穢れを受けてたのか。もう、大事ないか?!」



 騰蛇様でした。抱擁、ほどではあるありませんが。肩を抱えてくださったので目の前が暗く感じただけです。ですが、闇夜の怖さとは違う……灯火のような仄暗い優しさを感じました。


 ですから、もう一度首を縦に振りました。



「ご心配、おかけしました。まだ完全ではないようですが、大丈夫です」

「……そうか。腹が減っただろ? いくらでも食いな。はち切れそうになるくらい」

「はい」



 言い方は悪いかもしれないですが、騰蛇様のご飯がないと満足出来ません。それは言わないでおきましたが、卓に並べられた大皿の中には……やはり、『おにぎり』がありました。席に座ってから、気づかれた朱雀様がいくつか取り分けてくださり。



「珍しく泣きそうになるくらい、心配してたからさ? あ、俺もちょっと泣きかけたけど……痛くない?」

「はい。ありがとうございます」



 あたたかなご飯。


 騰蛇様が最初に作ってくださった、美味しい食事。


 道具への糧でない、『人への慈しみ』の食事。


 改めて、味わって口にしてみる前に……感謝の念を込めてから手元に近づけて。



「……美味そうに、食うな? 砂羽」

「…………おいひいです」



 行儀の悪さは、ほんの少しの愛嬌として受け入れてくださるここでの生活。


 おにぎりの中身には、卵でも魚でもなく。二番目に食べたお肉が。


 噛めば、ほぐれていく優しさと懐かしさを感じる甘辛さがなんとも言えず。


 少し、涙が出ますが……ゆっくり噛んでから飲み込む楽しさ。


 沙霧様が戻られるためにも、まずが私が英気を養わねば『癒しの霊力』が振るえない。


 白蛇様も、既に召し上がっていらっしゃいましたが。途中から、段取りを教えていただきました。



「湯殿でも言ったが、狭間との境目から沙霧が戻れぬほど……あちらでは、天災が起きているはずだ。緊急連絡の札が来てないところ、豪雨か豪雪で『鵺の道』も凍りついているか濁流状態かで使えんとみた」

「……けど、沙霧様はご無事……なのですね?」

「最悪の状況なら、この異界の維持すら出来んからな? 故に、我が盟約の夫である狼王の居住地で待機しているはずだ。次は、『繋ぎ目』の補修をしよう。……とりあえずは、全員で馳走を平らげてから始めるがな?」



 大変な事態の筈ですのに、とても楽しそうな笑みが……意地悪いそれに見えたのは気のせいでしょうか? でも、ご飯を残すつもりはなかったので、お味噌汁もはじめて飲んでみましたが……すごく、ほっとするお味でした!

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